暗黒の高校生時代、少し曲がって育った私には友人がいなかった。そのことは別にどうでもいいが、そのときにクラスメイトの1人が脳腫瘍をわずらい、気の毒にも亡くなってしまった。
いいところのお嬢さんだったが、脳を冒されていたのか、最後のほうは奇行が目立ち、「うっとおしいやつ」と私は感じていた。事情を知って同情していた人もいたかもしれないが、当時の私はクラスメイトとほとんど没交渉だったので、彼女がなぜそんなに風変わりな行動を取るのかまったくわからなかったのである。
ほとんどすべてのクラスメイトは葬式に出たが、私ともう1人の変わり者は出席しなかった。私たちは単に「面倒」だったのである。「別に友達じゃないし」と放っておいたのだ。
するとその晩、彼女が夢枕に立ち、こう言った。
「・・・・・・なんで来てくれなかったの?」
その声は、今でも鮮明に覚えている。ふわふわした、けれど悲しそうな声。
悪いことをしたと思った。面倒くさがらずに行けばよかったと反省した。
そしてそのときから「死んだらそれまで」という認識が一転した。
肉体は消えても魂は消えないことを、私は「うざい」と思っていた相手から教えられたのである。
翌日、葬式をさぼったもう1人に夢の話をした。すると相手も、「実は自分のところにも来た。それと全く同じ夢を見た」と言う。
それ以来、私は人の死を甘く見るのをやめた。
夢枕に立つのは人間だけではない。死んで何年もたつ犬や猫も、自分を懐かしがってたまに夢に出てきてくれることがある。彼らの夢を見たあとは、せつなくやるせない気持ちになる。
2009.06.19