アテンションプリーズ、全国の午未天中殺のみなさんこんにちは。
宇宙船午未号にお乗りのみなさん大変長らくお待たせいたしました、これから第4回船内ミーティングを開催いたします。各自お手を休めてミーティングルームにお集まりください。
・・・みなさんスムーズにお集まりいただきありがとうございます。このあたりの大人な聞き分け、協調性、思慮分別において、午未のみなさんは他グループの追随を許しませんねさすがです。
はい、わたくしみなさまの旅のおともを務めておりますチーフCAの午・未(うま・ひつじ)と申します。どうぞよろしくお願いします。(背後にV字型にずらりと並んだCA一同、礼。)
2014年立春に本船にお乗りいただきましてからはや2年がたとうとしておりますが、12年に一度の大宇宙の旅、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
その前の2年間に搭乗された辰巳グループの方々におきましてはイヤだ信じられない一刻も早く地球に戻してほしいと泣き叫ぶ方、こんな暗黒の旅耐えられるわけないじゃんお前がかわりにやってみろと逆上なさる方、もういいです私ひとりで帰りますからと小型船に乗ったはいいけれど大気圏でバウンとはね返されて勢いよくUターンなさる方など日々アクシデントが続出し、それはそれはにぎやかで活気に満ちたアクティブなフライトとなりました。
しかし午未のみなさんにおかれましては実にクール、今このときにおいても泣き顔も怒り顔も逆上顔もなく、ただ愁いと哀しみを帯びた漆黒の目がぱっかんと大きく見開かれているだけ、その瞳の奥にはこの世の真実が鮮明に映し出されていることでございましょう。
午未のみなさんは「よけいなことは口にしない」「周囲に迎合せず孤高を好む」「ムダにあがくより流れに身を任せる」など悟りの美学をお持ちなので船内はいつも月曜日の博物館のようにしいんと静か、寅卯号のように勢い余って身体が壁にぶつかる音、辰巳号のようにそろばんをはじく音、申酉号のように麻雀牌をかき混ぜる音などどこからも聞こえてまいりません。
・・・相変わらずしいんとしておりますね、あのうみなさん起きてますでしょうか生きてますかあ、ああ一斉にこくんとうなずいた、安心いたしました。
はい、ではこれから九星別に点呼を取ってまいります。
呼ばれた方は挙手お願いします、気力体力が萎えて挙手がしんどい方はそのまま霧雨の牧場にたたずむ馬や羊のように放心していらしてけっこうです。
★午未の一白水星さん、はい。
2015年をひとことで言い表すと何でしたか? あっ一白の難波さん手が上がったはい「期待はずれ」、九条さん「不完全燃焼」、伝法さん「こっぱみじん」。
そうですねたしかに空回り感ひとり相撲感出る杭は打たれる感がありました、「あれ? こんなはずでは」、何回口にしたことでしょう。
せっかく地上に芽が出たのに遠慮なく踏みつけられちゃった感じ、茎が伸びたはいいけど大雪で埋もれちゃった感じ、それでも頑張ってどんどん伸びたけど結局ブルドーザーで整地されちゃった感じでしたね、お疲れさまでした。
しかしそれで人生が終わるわけではないのです。
2016年は周囲があなたの存在を認め、「あなた」という美しい花がきちんと咲くのに惜しみなく力を貸してくれるでしょう。
今ごろ地上では「あれ午一(うまいち)くんどこ行った、田端くんキミ知ってる?」「あっ日暮里課長、午一さん最近カゲ薄いんですよね実体のないホログラムみたい、呼びかけてもぼんやりしてるし、宇宙は寒いなんてたまに独りごと言ってるし、さっきは給湯室でゆらゆら揺れながらふきんをハイターにつけてました」「そういやもうすぐ午一くんの誕生日だったな、よし景気づけにサプライズパーティでもやるか、田端くん経費で生ケーキ注文しといて」「イチゴたっぷり盛った特大のやつですね承知しました!」みたいなやりとりがあちこちでかわされていることでしょう。
この宇宙船が地球に着陸してあなたが最初に目にするのは「ウェルカムバック トゥ ジ アース」のメッセージカードが乗ったケーキを持ってニコニコ出迎えてくれる同僚の田端さん、日暮里課長、その他同僚、友達、サークル仲間、家族、恋人の姿です。孤高で個人主義のあなたも「人間っていいなあ」と胸の底から温かいものがこみ上げてくることでしょう。
2016年は周囲の情や愛をひしひしと感じられるいい年になるでしょう、みんなあなたを応援してくれますよ。もう恐れることはありません、青空に向かってぐんぐん高く伸び、あなたならではの花を遠慮なく咲かせてください。
★午未の二黒土星さん、はい。
ああ人間関係辛かった、みなさんのお顔にはそう書いてあります。
この世で最も難しいのは人間関係です、だってみんなそれぞれ「生もの」ですもの。関わっちゃいけない人に関わった人、地雷を踏んだ人、最初は直径5センチくらいだった誤解の波紋が10キロくらいに広がった人、とうとう修復不能になっちゃった人、いろいろいらっしゃることでしょう。
宇宙旅行中にこじれてもつれてダマになる人間関係は無理にときほぐす必要はありません。苦労して努力して理解してもらおうと思っても徒労に終わるケースが多いからです。
たとえば未来の見えない恋愛、疑心暗鬼の友情、あなたを理解してくれない仲間、無理難題を押しつけてくる身内、愛より利害関係を優先する人たちとのおつきあいは、今のうちに銀河の彼方に廃棄しちゃっていいでしょう。
大丈夫、地球上には70億以上もの人がいます。つまらない知り合いと縁を切ったとしても、まだまだ数え切れないほどたくさんの人たちが存在します。宇宙人も加えれば出会いの数は無限大と言っていいでしょう。
人間関係を整理するうち、あなたの周囲を取り巻く垣根の風通しが良くなり、新しい人がわらわらとあなたのそばに寄ってくることでしょう。
「午二(うまに)さんはじめまして、あなたの腕を見込んでぜひお願いしたいことが」「午二さんですよね、よければお食事ご一緒しませんか」「五目うま煮に入ってるうずら卵はいつ食べますか」。
2016年のテーマは「去る者は負わず、来る者は拒まず」。よくも悪くもたくさんの人があなたに寄ってくる暗示です。ただし、相手がハンサムでも美人でも自己開示はあせらないこと。
たとえ垣根がスカスカで寂しくても、急いで親しくなろうとせず、ゆっくり時間をかけて相手との間合いを計りながら接してください。
人間関係の長続き度は、かけた時間に比例します。楽しく豊かな人間関係をコツコツ地道に築いてまいりましょう。
★午未の三碧木星さん、あっ周囲から圧力かけられてぺったんこになってる、のし餅みたい。
はい町田さん「自分は何も悪くないのに悪者にされてしまった」、登戸さん「出る杭のごとくたたかれた」、喜多見さん「周囲からハブられた」、下北沢さん「雪の朝の小田急線は着ぶくれラッシュでしんどいです」。
そうですかお辛かったですね、午未グループは基本的に我慢強いとされておりますが、三碧はストレス耐性がやや低めです。
「我慢するくらいなら逃げたほうがまし」と考えやすいタイプですが、この2年間は自分の四方をぶ厚い鉄の壁でバンバンバババンとふさがれ、逃げ場なしといった閉塞感を覚えていたのではないでしょうか。
でももうすぐそのついたてははずされますよ、急に視界が開けて一気に日当たりと風通しがよくなる感じ、洗濯物よく乾いて助かるわーな感じを満喫できるでしょう。
で、そのまましばらくじっとしていると広い砂漠の向こうからクリントイーストウッドとかショーンコネリーみたいな物わかりのよさそうなイケメンのおじ様がジープを運転してやって来るわけです。(注:あなたが男性の場合、シャーリーマクレーン、ジーナローランズなどいぶし銀のおば様に置き換えてご想像ください。)
「待った? ずっと見てたよ午三(うまみ)さん、よく頑張ってたね」
ニコッと笑うと目尻がシワだらけ、酸いも甘いも噛み分けた大人の素敵な年輪です。
助手席に座ってその人と一緒にドライブするうち、あなたのペタンコに押しつぶされた心と身体は元通りにふっくらふくらんでくるでしょう。
2016年の幸運の使者は「話のわかる目上」です。先輩、上司、ボス、年長者があなたをエスコートして、素敵な場所に連れて行ってくれることと思います。
目上に好かれるコツは「礼儀」「仁義」「忠義」「信義」「恩義」を忘れないこと。古くさかろうが時代遅れだろうがこの5つは世渡りの鉄板、どうぞ「義」の道をしっかり踏みしめ、ワンランク上の世界へ進んでください。
★午未の四緑木星さん、ああみなさん背中がまん丸です。
よほど責任が重かったのですね、頑張ったのに誰もきちんと評価してくれませんでしたと。後輩に仕事教えたけどやる気なくて全然ダメでした、むしろ煙たがられましたと。骨折り損のくたびれもうけでしたと。
肩の荷が重すぎたのでしょうか、うつぶせに倒れたままの方もいらっしゃいますね、えっ取り返しのつかないミスをしてもう立ち直れない? メンツ丸つぶれ?
よろしいじゃないですか一度や二度失敗したからって死ぬわけじゃあるまいし、失敗は成功の母、失敗がなければ成功もない、経験できるうちに何でも経験しておきましょうよ。
よろしいですかみなさん、宇宙旅行中に起きたミスやトラブル、ええーっ勘弁してくださいよ的な出来事はすべて「みそぎ」とお考えください。ええお清めための冷たい水浴びのようなもの、それを経験しなければみなさんの厄は落ちなかったのです。
なぜうまくいかなかったのか。何が原因だったのか。
毎回毎回同じこと繰り返してバカだなああたし。
そこを突き詰めていきますと、やがておのれのクセ、弱点、修正すべき箇所が見えてまいります。
そうしたら、あとは直していけばいいだけです。どうしても直らないなら「私はそういう人なのだ」と認めて受け入れればいいだけです。そうやって人はコツコツ大人になってまいります。
2016年は今までのストレスが癒やされて楽しい年になりますよ。神さまは試練ばかり与えません、みそぎ道場を卒業したあとはお楽しみの放課後タイムです。
ねえ午四(うまよ)、そんな一生懸命に仕事ばっかしてるとあっという間におばさんだよ花の命は短いよ、もっと人生を楽しみなよ、よかったらこのあと飲み会があるんだけど来ない? うん私のプライベートの友達グループだけどみんな気さくでいいやつばかりだよー。
たまにはいいかとついて行ったらその店おしゃれでカッコよくて料理もワインも最高でしたと。そしてグループの中に性格のいい男子がいましたと。顔もわりかし好みでしたと。メアド交換してなんかドキドキする人生が始まりましたと。
そんな感じの一年になるでしょう。乞うご期待。
★午未の五黄土星さん、ああ仏頂面で腕組みしたままフンッと鼻息でお返事されました。このグループはうれしいときも楽しいときも表情があまり変わりません。
2015年はどんな年でしたか? はい笹塚さんしぶしぶ口を開いた「失恋した」、仙川さん「貯金を使い果たした」、清滝さん「親兄弟ともめた」。
一般的に二黒、五黄、八白の「土性の星」は生存欲求、獲得欲求がひときわ強いパワフルな星、本能に素直で人間くさい星、経験則から真理を悟る積み重ねの星、午未ですからあからさまには出しませんが内面では「○○がほしい」「○○がしたい」「○○になりたい」などの欲望が鳴門海峡の渦潮のようにごうごうと渦巻く傾向があります。
2015年は期待に現実が追いつかずダメージが大きかったかもしれません、あせったばかりに「大事なものを失ってしまった」と心にぽっかり大きな穴が開いた人もいるでしょう。
しかし宇宙旅行中の「手放し」は、長い目で見ますと決して悲しむことではないのです。ご本人は喪失感で胸がいっぱいでしょうが、別の角度から見れば「手にしている必要がなくなったので離れていった」「存在理由がなくなったので消えていった」という自然現象であったかもしれません。
自然現象にしてはやや強制的でしたか、しかし「そうなるべきこと」が有無を言わさずストレートに起こるのがこの大宇宙、よけいな遠回りをせず起こるべきことはさっさと起こるのがこの大宇宙とお考えください。
ひとつ手放せば新しいものがその隙間にまた入ってまいります、それはもしかすると「もっといいもの」かもしれません、あまりお気落としのないように。
2016年は「変化」「刷新」「革新」の年になるでしょう。この宇宙旅行で古いものをそぎ落として身軽になられた方はフットワークよく動けますので革命は成功に向かい、未練がましく古いものにしがみついてる方は満足できない現状維持が続きます。
いずれにしても随所随所で「午五(うまご)くんこの期に及んでそのやり方をまだ続けるつもりかね」「過去の栄光にいつまでもしがみついていては進歩がありませんよ午五さん」などとたしなめられ、決断を迫られる場面がやってくるかと存じます。
「節目の年がやって来る」と覚悟のうえ、気を引き締めて臨まれますように。
・・・長くなりました、ではここでしばし休憩を挟みましょう。
みなさまあちらをご覧ください、先ほど天体に大きな星が誕生いたしました。
管制塔からの連絡によりますとあの星の名はデヴィッドボウイ、またの名をジギースターダストと呼ぶのだそうです。
わたくしごとで恐縮ですが実は昔、地球におきましてあの方とふと目を合わせる瞬間があり、人種、性別、年齢、肩書きを超えてまっすぐこちらに向かうまなざしを受けたとき、「前衛的で型破りなスターであってもこの方はピュアでやさしく、人間としてものすごくまともな人である」と実感いたしました。
屈折する星くずの上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群れ。グラムの北辰(ほくしん)。グリッター菩薩。美しい巨星に合掌いたします。
・・・ではミーティングを再開します。各自お席にお戻りください。
★午未の六白金星さん、ああ刀折れ矢尽きていらっしゃいますね、みなさん落ち武者みたいなざんばら髪がちょっとセクシーでカッコいいです。各自あちこちに行き倒れて息も絶えだえでいらっしゃる。
では野戦病院状態の午六(うまろく)ブースからインタビューしてみましょう、春日さんいかがですか今のご気分は? 「致命的な判断ミスで何もかもパア、正直自分甘かったです」、白山さん「裏目裏目に出たので最終的にはもしかしたら表目になるかと思ったのですが結局裏目に出てしまいました」、巣鴨さん「最近肌がたるみ、シワも増えてファンデがよれるので悩んでいます。やはり天中殺はこわいですね」。うーん巣鴨さんの場合は天中殺というより加齢が原因かもしれません、日々のお手入れとマッサージが有効かと思います。
2015年は「判断ミス」「進展していた案件が凍結」「節目越え失敗」などの手痛いダメージを負った方も少なくなかったのではないでしょうか、「動かざること山のごとし」を痛感し、山間に沈むオレンジ色の夕陽をただぼんやり眺めるほかすべがなかった人もいらっしゃるでしょう。
しかし2016年、みなさんを取り巻く星の配置が変わります。どうなるか。ものごとがいきなり活発に動き始めるのですね。
「ふふふ午六(うまろく)さんあたし来ちゃった、ねえ重いからスーツケースひとつ持ってくれない、そうこれがあたしの家財道具すべて、これから面倒見てねよろしくぅ、あっネコもいるよほらこのリュックの中ううん1匹じゃなくて3匹」
いきなり来られてもとあせっても彼女は自分をすり抜けてスッと家に入ってくる、荷をほどいて勝手に洗面所に自分の歯ブラシとコップを置く、派手な色のドレスを次々にクローゼットのハンガーに掛ける、お気に入りの音楽を大音量で部屋に流す、ねえおなかすいちゃったあとあなたに微笑むのです。
ウェルカムだろうがノーサンキューだろうが「それ」は突発的にやってきます、なので今から心の準備をしておいてください。
「それ」って何かって? そうですね、「過去の妖精」とだけ申し上げておきましょう。いずれにしてもみなさんは地球に戻ってからその案件に面と向かうことになり、何らかの決意、決断、方向転換を余儀なくされることと存じます。
2016年は人生を変えるチェンジ&チャレンジの年、六白のみなさんにとって非常にやりがいのある面白い年になるでしょう。これから忙しくなりますよ、乞うご期待。
★午未の七赤金星さん、はい。ああ憂うつそうなお顔をされてますね、恋の悩み? 親友や同僚と仲違い? それとも家庭内不和でしょうか。信じていた人から嘘をつかれた、裏切られた方もいらっしゃいますね。
宇宙旅行中のもめごとはちゃんと燃える理由があって燃えているので燃えるがままに放っておくのが正解、下手に鎮火しようとすると不完全燃焼して燃えかすが残り、逆に厄介なことになります。
2015年に起きたトラブルはいわば過去の「お炊き上げ」ないし「どんど焼き」、肥大化した煩悩を焼き払うために必要不可欠なプロセスであったとお考えください。
火あたりして頭がボーッとなり、ご気分が悪くなった方はいらっしゃいませんか? そんな方のために本宇宙船の地下に冷水プールが設置されております、水がドドドと激しく流れ落ちる打たせの滝コーナーもございますので、荒行がお好みの方はそちらで水垢離もお楽しみください。
そうやって頭を冷やすうち、「頑張って無理にその関係にしがみつく必要はない」「離れていく者を追ってもまた同じことが起こる」「じたばたせず、とりあえずなりゆきに任せるのが正解」「隣近所とはお天気の話が無難」ということがわかってまいります。それを業界用語で「悟り」と申します。
宇宙船に乗って大宇宙を旅行するおかげで、乗客のみなさまには大いなる知恵がついてまいります。これはお金で買えない一生の宝ものになるでしょう、そう考えますと「天中殺」というのは実は神の慈悲であり恩寵なのではないか、そんな気がしてまいります。
2016年は火祭り後の副作用として脱力感、無気力感、寂寥感を覚えるかもしれませんが、半年もすれば自然に収まり、一件落着して静かな生活が戻ることでしょう。
「いろいろあったけどまあいいか」、そうご自分に言い聞かせながら本を読んだり映画を見たり、お昼休みにびっくりドンキーで15種類以上の野菜が摂れる「ドンキー畑」をいただきながら、心身のメンテナンスと幸せの模索にいそしんでいただきたいと存じます。
★午未の八白土星さん、あれお姿が見えませんねどこに行かれたのでしょう。ああっみなさん船外服を着て宇宙船の外を夢遊病者のように意味もなく徘徊していらっしゃる! よほどお辛いのですね、じっと座っていることもできないなんて。
こちらのグループの2015年を将棋に例えてみましょう。
先手八白で意気込んだものの序盤で魔がさし好き勝手なことをしてつまずき、ミスが挽回できないまま中盤へ突入、形勢不利で後手後手に回るうち歩兵が寝返り、あっけなく金銀飛車角をもぎ取られ、いざのとき用に取っておいた桂馬は奮闘の甲斐なく討ち死に、香車はバカのひとつ覚えで前へ前へ進むだけで役立たず、そのまま終盤で抵抗の余地なく「王手」の声がかかり、「待った」を要請するも情け容赦なく待ったなしではい詰みましたと。自分なりに頑張りましたがもうこれ以上打つ手ありませんと。
思わず将棋盤の上に泣き崩れ、力なく「知床岬」を口ずさんだ2015年でした。お疲れさまでした。
「無敵」「完全無欠」「一騎当千」の名を天下に轟かせる午未の八白さんだって負けることくらいありますよ、ええ人間ですもの、弘法も筆の誤り猿だって木から落ちるのです。
しかしそんなハードな宇宙の旅ももうすぐ終わります、地球に戻ったら過去2年間の布陣を振り返って反省し、巻き返しを図りましょう。ええこのまま終わるみなさんではありません、人生はまだまだ続く、本当に面白いのはこれからなのです。
みなさんの2016年のテーマは「一陽来復」。冬のあとには春が来る、陰が極まれば陽に転ず、地球が誕生してから一日たりとて明けない夜はありませんでした。
立春以降、背中に乗っていた巨大な漬け物石がクレーン車で取り除かれるような感覚、萎えた心と身体に筋肉が復活し全身にパワーがみなぎってくるような感覚、本命の午八(うまはち)くんにはフラれたけどもっとステキな馬八(うまや)くんからアプローチが来たぞみたいな感覚を覚えることと思います。
本調子が戻るには少し時間がかかるかと思いますが、地道に筋トレしながら戦略、戦術、戦法をじっくり練り、捲土重来(けんどちょうらい)にお備えください。
★午未の九紫火星さん、はい。こちらのグループは表情が少し明るいですね、もうすぐ地球に帰れますものね、直感的に心がはずんでいらっしゃるのでしょう。
みなさんのご心境は「芽を出したいのに地上に氷が張っていてなかなか芽が出ない、ああ早く氷が溶けないかなあ、そして温かい日ざしを全身に浴びたいなあ」ではないでしょうか。
こういうのを易で「水雷屯(すいらいちゅん)」と申します、これは四大難卦のひとつで「時いまだ至らず」という逆境の卦。何をしてものれんに腕押しの独り相撲、まるで透明な冷蔵庫に押し込められたような感覚を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしどんなに分厚く張った氷も春が来れば必ず溶けます、そのときまでじっと我慢するのだぞあせりは禁物、カップ麺だって時間を待たずにあせって食べるとおいしくないじゃんなのでございます。
日に日に天から射し込む光が強く明るくなっているのを感じていますか? そう、春の訪れはもうすぐそこ、今こうしている間もあなたの頭上に張り巡らされた氷はどんどん溶けているのです。
宇宙旅行中に得たことは何でしょう? はい木場さん「無重力の世界で走ってもちっとも前に進みませんでした、あせってもダメなもなぁダメとわかり忍耐力がつきました」、はい葛西さん「直感やひらめきも大事ですがそれを実現させるためには地道な努力が必要だと気づきました」、はい行徳さん「大宇宙は孤独ですが私はわりとナルシストなので別にこれでいいです」。
はいさまざまな意見が出ましたね、どれも正解です。ここで得た教訓を地球でも活かし、よりよい人生に役立てられますように。
2016年からは新しい人生サイクルが始まりますよ、ええあなたが20代であろうが50代であろうが年齢に関係なく、真っ白いキャンバスに好きな絵を描くことができます。
どんな絵を描きますか? 才能を活かしてたくさんの人から注目される絵、愛する人と一緒に幸せな家庭を築く絵、バリバリ仕事して世界を股にかけ活躍する絵、値札を見ずに「これ全部いただくわ」とカードを出す絵、牧場で馬や羊と仲良くひなたぼっこする夢。
今年描く絵が、あなたの未来をつくる青写真になります。「人生は自分のイメージに沿って展開する」という宇宙のルールをしっかり覚え、より幸せな人生を築かれますように。
・・・はい、長くなりましたがこんな感じです。
午未のみなさん、長旅お疲れさまでございます。あともう少しでこの大宇宙の旅も終わります。すべてのものごとには終わりがあり、やがて新しいものごとが始まります。
あ、窓の外に美しい花火のような大流星群が見えますね、まるでみなさんの前途を祝福しているかのようです。
・・・こうして無限の宇宙を眺めておりますと、何か大きな意思が働いていることを感じざるを得ません。なぜ宇宙はこんなにも美しいのでしょう?
宇宙の意思、あるいは「創造主」と呼べる存在がもしいるとするならば、それは「あなた」に何を期待しているでしょうか?
さて、本船の地球帰還は2月3日を予定しております。余力のある方はそろそろパッキングを始め、余力のない方はそのまま脱力していてください。宇宙はすべてをおおらかに包み込み、いつもと変わらずその美しい営みを続けることでありましょう。
それでは残り少なくなりましたが、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。
午未天中殺のみなさんに幸あれ。
Good Luck、Thank You。