某商店街でサンバ祭り。商店街と言っても地味な店がぽつぽつ点在するだけの通りだが、行ってみると道路の両脇にはすでに山のような人だかり。望遠レンズをかまえる中高年男性が多い。
勇壮なドラムの音に合わせ、美しく着飾った踊り子たちが道路の真ん中で飛び跳ね始める。観客の顔が、老いも若きも男も女もみなうれしそうにほころぶ。
隊列が道路をゆっくり行進していく。さびれた町を「ハレ」の気がふわりと覆う。
踊り子の後ろ姿を見ながら、これは形を変えた町内御輿なのだと気づいた。
祭りとは、祀ること。踊り子は、神を呼び寄せる巫女だ。
御輿に担がれて揺られるかのごとく、非日常の音や風景に呼び寄せられた氏神は、踊り子の手や足でぽんぽん跳ね上げられながら町内を練り歩く。
踊り子の隊列が踊りすぎていったあと、掃除で掃き清めた後のように空気がすがすがしくなっていた。
2009.07.06