愛と夢の国

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 涼しくなったので東京ディズニーランドへ。園内は最後の夏休みをそこで過ごそうという家族連れで大にぎわいだ。
 人垣の間から「ジュビレーション」を鑑賞。だだっ広い敷地の向こうから、異質なものたちが練り歩いてくる。
 殺風景な舞浜の空き地にわらわらと出現する、原色のキャラクターと人工的な造形物。パレードの手前の広場には、真っ白い彼岸花が一面に咲いている。
 
 日が落ちかけるころ、ウエスタンリバー鉄道に乗る。走れども走れども薄暗い裏山だ。
 茂みの間をかき分けてしばらく進むと、インディアンの母娘が列車に向かって手を振っていた。もう何年も何年も、あの母娘はうっすらとほほえみを浮かべながら手を振っているのだろう。深夜、誰もいなくなっても。
 
 ディズニーランドの夜は暗い。エレクトリカルパレードは最大の見せものだ。闇に光る巨大なイルミネーションは見る者を圧倒するが、その人工的な光はうたかたの夢のごとく、目の前をあっという間に通り過ぎる。
「きみも、友達だよ!」
「いっしょに、行こうよ!」

 ディズニーランドは愛と夢を売っている。つかの間の、数千円で買える愛と夢。
 ずっと昔、ここでかりそめの幸せを味わったあと、この世からフェイドアウトした家族のことが新聞に載っていた。「せめてここでは楽しく過ごそう」という最後の悲願は、はたしてかなえられたのだろうか? 
 空には白い月がぷかりと浮かんでいる。入園者が群れをなして一斉に出て行ったあと、しんと静まりかえった巨大なホテルを仰ぎながら、はかなく消えてしまった彼らのことを少しだけ想う。

2009.09.02