真夏の憂鬱

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 ものすごく日差しが強かったので、太陽が西の空に移動するのを待って散歩。
 夏真っ盛りだが吹く風にどことなく哀愁がある、気の早い秋がすでに吹いてきているのだなあと眠い目をこすりながら駅ビルに入ると、小学生くらいの女の子が「夕飯食べたくない! 絶対に食べたくない!」と母親に大声で怒鳴っている。
 暑いからね、その気持ちわかるわかる、実は私も食欲があまりないんだよお嬢ちゃんと心の中でテレパシーを送りつつ総菜売り場でおかずを買い、ついでに大好物のシュークリームとチョコレートも買って店を出る。本当に食欲ないのか。

 しおしおのパーになりかけながらとぼとぼ歩いていると、道ばたにキジトラのネコが寝そべってじっとこちらを見ている。若い、たぶん1歳未満だ。お前、遊んでほしいんだねネコだいすきーフリスキー♪と歌いながら手を出して小一時間ほど草むらでたわむれる。
 やがてネコはこちらをナメはじめ、手首に噛みついたり後ろ脚で腕を蹴ったりあげくの果ては狂気に満ちた目つきになり鋭い爪を立てて乱暴狼藉の数々で手をいたぶりまくる。案の定、皮膚が裂けて流血。今日はもうおしまいだよ子ネコちゃんと平静を保ちつつその場を離れ、帰宅。
 家に着いてから猛烈に腕や脚がかゆくなり、見るとぷっくり赤く腫れている。草むらにしゃがんでいるとき、蚊に刺されたのである。
 かゆい、かゆすぎると手足数カ所にかゆみ止めを塗るがいっこうに治まらない。
 いいもん、生クリームがうずまき状にこんもり盛り上がったシュークリームがあるもん、ふわっと盛り上がったシューの中に注入された黄色いカスタードクリームと白い生クリームをスプーンで微妙に調合してハーモニーを楽しむんだもんねと箱を開けると逆さにひっくり返って中のクリームが紙箱の内側に飛び散っていた。
 ええい土用だから仕方ない、自然界の気のバランスが乱れている時期だから何があってもおかしくないのだなどとわかったようなわからないような言いわけをむりやり自分にして、清水の舞台から飛び降りて購入した高価なひんやりマットにごろんと横たわって行き場のない怒りとかゆみを鎮めようと試みた。
 しかし何分たっても体はいっこうにひんやりせず、それどころか蓄熱してどんどんぬるくなってきた。なぜなのか。夏土用だからなのか。

2010.08.02