お嬢さま☆そろそろ夏ね、恋がしたいわ。
アントワーヌ★何をおっしゃいます? 「ロッキーホラーショウ」のフランクンフルター博士や「IT(イット)」に出てくるピエロ・ペニーワイズさまと先日デートなさったばかりじゃありませんか、もっともあのなかに入っているのはどちらもティム・カリーさまでございますけど。
カリーさまはウド・キアさま、テレンス・スタンプさまと並び世界を代表する怪優のひとり、やはり特殊なキャラをお持ちの怪優の方々はひと味違ったセクシーさをお持ちですね。・・・少しマニアックでしたでしょうか。
お嬢さま☆たまには化け物じゃなくて普通のイケメンとつきあってみたいわ。
アントワーヌ★お嬢さまご自身が化け物ですのに? まあいいでしょう、では6月15日(水)発売のan・an2008号をお読みくださいまし。(an・an予告はこちら)
総合テーマは「2016年後半、あなたの恋と運命」、そうそうたるメンバーに混じってこのブログの主宰者オペラ沢かおりもそっと参加、タイトルは「九星別〝運命の男の落とし方〟」でございます。
お嬢さま☆どれどれふむふむこの1冊さえあればすてきな恋が手に入りそう! ようし買って読んで攻略しようっと!
アントワーヌ★攻略する前にまず恋する相手をお決めくださいまし。ああ馬に乗って最寄りの本屋へ一目散に。おーい発売日は6月15日ですよーって聞こえないか。
よろしければみなさまもぜひ。コンビニ、キオスク、最寄りの書店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
投稿者「pinkie」のアーカイブ
申酉天中殺のみなさんへ その1

・・・ザワザワ・・・んこくの申酉天中殺のみなさんこんに・・・ガヤガヤ。
わたくし本宇宙船申酉号のチーフCA・・・ウッキーー!・・・でございます。
第1回目のミーティングが遅くなりましたことを・・・ガッシャーン!・・・詫び申し上げ・・・コーケコッコーー!!
ええいもういい加減大人しくしないと須弥山(しゅみせん)あたりにお住まいの三蔵法師さまにお願いして緊箍児(きんこじ=金の輪っか)をみなさんの頭にハメてお仕置きしていただきますよ!
しーん。
はい船内が水を打ったように静まりかえりました。
では気を取り直して最初から。
全国の申酉天中殺のみなさんこんにちは。
みなさんを捕獲もといご案内するのに通常の倍近くの時間がかかり、初回ミーティングが遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
わたくしチーフCAのサルロット・トリックスター、略してサル・トリと申します。
後ろにずらりと整列しておりますのはCA界の猛者チーム、容姿端麗&頭脳明晰&腕力においても宇宙でトップクラスの強者ぞろいでございます。
(CA一同、一斉にボディビルの決めポーズ。)
「エネルギッシュな暴れん坊」「当たって砕けろの肉体派」「ふふふ営業は数字で結果出すのが仕事でしょう」の異名を取る申酉天中殺の方々をしっかりサポートするようにと選抜されましたわたくしたちが、これから2年間、みなさまのお相手を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします(CA一同礼)。
さて本船体は少々意匠を凝らした仕様となっております。こちらのロビーの天井に吊り下がっております幾多のミラーボールは夜時間になると妖しい光を放ちながら回り出します。備え付けのジュークボックスでお好きな音楽を流せば、寂しがり屋の申酉天中殺のみなさんのすてきな癒やしとなることでしょう。ジャズ、R&B、ロック、ラテン、エレクトロニカ、クラシック、民族音楽、社歌など各種取りそろえておりますのでどうぞご活用ください。
ロビー奥の舞台では月に1回、CA有志によりますゴスペルソングショー、ボディビル競技会、京劇「孫悟空」、中小企業診断士合格指導講座などバラエティ豊かな出し物を予定しておりますのでお楽しみに。
また、身体がナマるのがいや、じっとしているのが大の苦手、眠っているとき以外は何かしら動いていないと気が済まないというアクティブなみなさんのために、ターザンロープ、クリフハンガー、サーモンラダー、つかみどころのない超巨大のつるつる蟻地獄(いずれも落下したらブラックホール行き)などが随所に設けられたアスレチックスペースもございます。ご希望の方はどうぞご活用ください。
・・・ロビーのお席がちらほら空いておりますのは、今年から天中殺であることに気づかず未だ地球を彷徨っておられる方が少なくないためです。申酉天中殺の方は現実世界ひとすじに生きておられますので仕方ありません。
同じアクティブ派でも辰巳天中殺や寅卯天中殺でしたら経験を重ねるうち「あっもしかすると目に見えない世界も存在するのでは」とうすうす勘づく柔軟性をお持ちですが、みなさんの場合は「幽霊がホントにいるなら居住費とか住民税とか払わないとズルいじゃん」と現実に即した考え方をいたします。単細ぼもとい思考がシンプルなのですね。
・・・しかし残りの方もじきに本船に吸い上げられることになるでしょう。
ここにお集まりの方々はすでにお気づきでしょうが、みなさんは2016年2月4日から地球を離れ、本宇宙船でこの暗黒の大宇宙を旅しておられます。この旅は2018年節分まで続きます。
みなさんのお身体は地球上にホログラムのように投影されておりますが、実体つまり魂はここ無限の大宇宙にありますので、「頑張っても思い通りにならない」「人から誤解されたり、自分も勘違いが多くなる」「周囲から浮いたような気分がつきまとう」「マイペースをなかなか保てない」「何かと心細くなる」「ため息が多くなる」などの現象が起こりやすくなります。
また今まで限界を超えて頑張ってこられた方の場合、お身体にトラブルが出るケースもございます。それは「ここら辺でちょっと休んでみない?」という天のメッセージとお考えください。
特に申酉天中殺のみなさんの場合、体力の限界を顧みず「だいじょうぶ」「これくらいたいしたことない」「気力で乗り越えてやる」など、無理を押して仕事や家事に熱中しがちですのでお気をつけください。
健康はもちろん仕事でも恋愛でも人間関係でも無理は御法度、無理を通そうとするほどキツい反動が返ってくる可能性がございます。「天中殺期間は自然の流れに任せるのが一番」と生まれながらに体得している子丑天中殺や午未天中殺、天中殺期間であってもなくてもずっと宇宙世界で座禅を組みっぱなしの戌亥天中殺ならばそれほど大きなトラブルは起こりませんが、「人生とは現実との格闘技である」をモットーとする武闘派のみなさんの場合、少々リスクが高くなりがちですのでお気をつけください。
天中殺期間の災いを軽くする3大ルールをここで申し上げておきましょう。
ひとつ、利益を追い求めない。ふたつ、我欲を捨てる。みっつ、なりゆきに任せる。
・・・はいこの3つの言葉が大型スクリーンに投射されました、忘れっぽい方はメモをお取りください。
あ、窓ぎわの方から手が上がりましたはい何でしょう。え? 何が何でもロマ山課長のハートを射止めたい? そうですね、その「何が何でも」という姿勢をまずやめたほうがって言ってるそばからぴらぴらの勝負服着て船外に飛び出しちゃった仕方ないなあ。
はいそちらの方、会社興して巨万の富を稼ぎたい? うーんどうでしょう要は目的なんですよ目的、「人の役に立つため」ならいざしらず、「自分が儲けるため」ですと墓穴を掘る可能性がかなり高・・・って人の話聞く前にビジネスカバンつかんで行っちゃった、おーい張り切って地球に戻ってもじきにふんわりこちらに戻されますよーってまあいいか放っておきましょう。
みなさんエネルギッシュで何よりです、親分肌で情が深くて口八丁手八丁、楽しいことが大好きで細かいことにこだわらない申酉天中殺は天性の無法者もとい天性の愛されキャラ、どこか憎めないんですよねうらやましいです。
ご自分の置かれた状況に未だピンと来ない、何が何だかわからないままここにいる、ここにいると何かトクなことあるの? とキョロキョロしている方手を挙げて。
はいほぼ全員ですね、ええそれでよろしいのです、宇宙の旅はまだ始まったばかり、そのまま何事もないことをお祈り申し上げます。
はい、そろそろお時間です。今回はこの辺でミーティングを終わります。(CA一同礼。)
先ほど申し上げました3つのルールをどなたさまもしっかり胸に刻まれ、この宇宙旅行を明るく楽しく元気よく過ごされますように。そしてこの12年に一度の宇宙の旅が、みなさんにとって思い出深く有意義なものになりますように。
それでは、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。
次回ミーティングでまたお目に・・・みなさんアスレチックは順番を守って仲良くお願いしまーす、サル山さんバナナの皮は食べ散らかさないでゴミ箱にどうぞ、そちらのみなさんはギャレーの食べものに勝手に値札つけてネットで売らないでください宅配便はここまで取りに来られませんよ、トリ村さんは地球に携帯かけて不動産ころがしですかにぎやかだなあこの船、全員がもの思いにふけっていた午未号とは大違いです。
それでは次回ミーティングでまたお目にかかりましょう。
Good Luck、Thank You。
午未天中殺のみなさんへ その5

全国の午未天中殺のみなさんこんにちは。
・・・もうすでにパッキングを終えられ、それぞれのお席にきちんとお座りいただいておりますね、さすが午未のみなさんは手際がよろしいです。
はい、わたくし本宇宙船午未号のチーフCA、午・未(うま・ひつじ)です。
2014年立春から始まりましたこの大宇宙の旅も、2016年の節分をもちましていよいよ終了となります。大変お疲れさまでございました。
いかがでしたか2年間に及ぶ大宇宙の旅は?
はいウマ谷さん「手強いトラブルに遭ったことで経験値が上がり、どんと来いな気分になりました」、ウマ十字さん「辛い別れがありましたがこれでよかったかもしれません、貯金できるようになりましたもの」、ヒツジヶ丘さん「耳の下が腫れておたふく風邪かと思ったらストレスから来る帯状疱疹でした。体調を崩してはじめて健康のありがたみがわかりますね」、メリーさん「いつもと変わりませんでした」。
はい、みなさんそれぞれ貴重なご体験をされたようですね。メリーさんのように「別に」「特に」「全然」と感じる方もいらっしゃいますのは、宇宙船午未号は大きな揺れが少ないからなのです。
寅卯号や辰巳号のようなジェットコースター級の急上昇&急下降&スクリュー回転もなく、ただひたすらおだやかに淡々と朴訥に飛行いたしますのが本船の大きな特徴と申せましょう。
運命学では「性格が運をつくる」と申します。「おだやか」「冷静」「動じない」などの気質を持つみなさんだからこそ、このような比較的起伏の少ない宇宙旅行となったのですね。
とはいえ、この宇宙空間とみなさんのふるさと・地球とでは環境が大きく異なりますので、ご自分でも気づかないうちに心と身体に大きなストレスがかかっていることと存じます。「全然だいじょうぶ」「たいしたことない」「あっけなくてつまんない」「なんならもう2、3周してやろうか」と思っても、ここはあまり無理をなさってはいけません。
地球の重力に慣れるまで最大約半年かかると想定して、帰還後はゆっくりじっくり心身をいたわりながらペースを取り戻されますように。無理やあせりは禁物です。
さて旅の記念といたしまして、これからCAがみなさんのお近くにワゴンを押してまいります。前のシートポケットにメニューパンフレットがございますので、よろしければご参照ください。
今月のおすすめは時間が後ろ向きに進んでまいりますジュエリーウォッチ「あの日に戻りたい」、有馬記念優勝馬の馬蹄をそのまま磨き上げたブレスレット「必勝」、羊毛フェルトの温もりがうれしいウォレット「紙食い虫」、「平常心」と筆書きされたネクタイちなみに「克己心」バージョンもございます、ウマとシカもといウマとヒツジのかわいいイラストがプリントされたTシャツ、「人徳・美意識・洞察力」の三つの単語が書かれた大判ショール、そして宇宙限定品の午未まんじゅう(こし、つぶ)など各種豊富に取りそろえてございます。
ご希望の方は遠慮なくCAにお声かけされ、空のショッピングをお楽しみくださいませ。
・・・さてみなさん、本船は地球帰還に向けて予定通り順調に運行しており、間もなく大気圏に突入いたします。シートベルトがきちんと装着されているかどうか、いま一度お確かめください。
またお手荷物などは前のお座席の下もしくは頭上の収納棚にお入れください。座席のリクライニングやフットレスト、前のテーブルは所定の位置にお戻しくださいますように。
窓の外をご覧ください、地球ではみなさんの帰還を祝福するかのようにライスシャワーが飛び交っておりますね、実はあれはライスではなく、節分の豆まきなのです。北東の鬼門方向から時計回りに「鬼は外、福は内」と叫びながら豆をまくことによって鬼が出て行く、つまり厄が祓われて清浄な空間となり、暦上で2月4日の立春から始まる新年をすがすがしく迎えようというわけです。
本日の気温は平年並かやや低め、全国的に厳しい寒さとなりそうです。・・・あ、ちらほら雪が舞っているところもありますね、地面が白一色に染まってとても美しいです。
花嫁が白無垢を着るように、白は原点の色であり、新しいスタートを切る色です。
これから地球で始まりますみなさんの新しい人生も、色で例えるなら白です。と申しましても単純な白ではなく、憂いを帯びたブルーやシルバーやグレーの上に塗り重ねられた白、重層的な深さと奥行きのある白、一筋縄ではいかない白、クールな気品が漂う凛々しい白です。
この2年間でみなさんとおつきあいさせていただくうち、みなさんの横顔や後ろ姿にある特別な「美しさ」が備わっていることにわたくしたちCAは気づきました。それは「孤独」に裏打ちされた美しさです。
「人間はひとりで生まれ、ひとりで死んでいく」という真実を生まれながらに悟っている強さ、賢さ、潔さをあなたがたはお持ちなのです。
午未のみなさんは、おのれの中に一本はがねの筋が通っています。ですから本当は繊細なのに、滅多に弱音を吐きません。苦しいときや悲しいときも安易に人を頼らず自分を律してバランスを保ち、やるべきことを淡々とやり遂げていく。困っている人が身近にいたら、自分のことをさておいて手を差し伸べる。責任ある仕事を任されたら、決して相手の信頼を裏切らない。
それが午未のみなさんの美学です。みなさんがいるからこそ、世の規律と品格と平和は保たれていると言っても過言ではないでしょう。
わたくしたちCA一同、みなさんとご一緒できましたことをうれしく光栄に思います。
どうぞ地球に帰還されてからも本船の卒業生であることを忘れず、自信と誇りと希望を持ち、光射す明るい道を背筋を伸ばして歩かれますように。
最後になりましたが、船長からメッセージがございます。ええとカードはどこでしたでしょう、ああありました。
「The Oscar goes to・・・ 」
このギャグ辰巳号でもやりましたね、アカデミー賞が近いものでつい。もとい。
「午未天中殺のみなさん、長い間お疲れさまでした。あなたが今まで我慢したこと、苦労したことは決して無駄になりません。それらは幸せという名の甘い果実に姿を変え、やがて天からたんと降り注ぐことになるでしょう。どうぞお楽しみに」
さて、ただ今をもちまして船内販売、船内オーディオサービス、映画上映サービス、軍艦ゲームのお相手を終了させていただきます。
これから船体が完全に停止しますまで、今しばらくお席に座ってお待ちください。シートベルト着用サインが消えましたら、どうぞゆっくり席をお立ちください。
午未天中殺のみなさんに幸いあれ。すてきな人生を。
それでは12年後にまたお会いしましょう。
Good Luck、Thank You。
午未天中殺のみなさんへ その4

アテンションプリーズ、全国の午未天中殺のみなさんこんにちは。
宇宙船午未号にお乗りのみなさん大変長らくお待たせいたしました、これから第4回船内ミーティングを開催いたします。各自お手を休めてミーティングルームにお集まりください。
・・・みなさんスムーズにお集まりいただきありがとうございます。このあたりの大人な聞き分け、協調性、思慮分別において、午未のみなさんは他グループの追随を許しませんねさすがです。
はい、わたくしみなさまの旅のおともを務めておりますチーフCAの午・未(うま・ひつじ)と申します。どうぞよろしくお願いします。(背後にV字型にずらりと並んだCA一同、礼。)
2014年立春に本船にお乗りいただきましてからはや2年がたとうとしておりますが、12年に一度の大宇宙の旅、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
その前の2年間に搭乗された辰巳グループの方々におきましてはイヤだ信じられない一刻も早く地球に戻してほしいと泣き叫ぶ方、こんな暗黒の旅耐えられるわけないじゃんお前がかわりにやってみろと逆上なさる方、もういいです私ひとりで帰りますからと小型船に乗ったはいいけれど大気圏でバウンとはね返されて勢いよくUターンなさる方など日々アクシデントが続出し、それはそれはにぎやかで活気に満ちたアクティブなフライトとなりました。
しかし午未のみなさんにおかれましては実にクール、今このときにおいても泣き顔も怒り顔も逆上顔もなく、ただ愁いと哀しみを帯びた漆黒の目がぱっかんと大きく見開かれているだけ、その瞳の奥にはこの世の真実が鮮明に映し出されていることでございましょう。
午未のみなさんは「よけいなことは口にしない」「周囲に迎合せず孤高を好む」「ムダにあがくより流れに身を任せる」など悟りの美学をお持ちなので船内はいつも月曜日の博物館のようにしいんと静か、寅卯号のように勢い余って身体が壁にぶつかる音、辰巳号のようにそろばんをはじく音、申酉号のように麻雀牌をかき混ぜる音などどこからも聞こえてまいりません。
・・・相変わらずしいんとしておりますね、あのうみなさん起きてますでしょうか生きてますかあ、ああ一斉にこくんとうなずいた、安心いたしました。
はい、ではこれから九星別に点呼を取ってまいります。
呼ばれた方は挙手お願いします、気力体力が萎えて挙手がしんどい方はそのまま霧雨の牧場にたたずむ馬や羊のように放心していらしてけっこうです。
★午未の一白水星さん、はい。
2015年をひとことで言い表すと何でしたか? あっ一白の難波さん手が上がったはい「期待はずれ」、九条さん「不完全燃焼」、伝法さん「こっぱみじん」。
そうですねたしかに空回り感ひとり相撲感出る杭は打たれる感がありました、「あれ? こんなはずでは」、何回口にしたことでしょう。
せっかく地上に芽が出たのに遠慮なく踏みつけられちゃった感じ、茎が伸びたはいいけど大雪で埋もれちゃった感じ、それでも頑張ってどんどん伸びたけど結局ブルドーザーで整地されちゃった感じでしたね、お疲れさまでした。
しかしそれで人生が終わるわけではないのです。
2016年は周囲があなたの存在を認め、「あなた」という美しい花がきちんと咲くのに惜しみなく力を貸してくれるでしょう。
今ごろ地上では「あれ午一(うまいち)くんどこ行った、田端くんキミ知ってる?」「あっ日暮里課長、午一さん最近カゲ薄いんですよね実体のないホログラムみたい、呼びかけてもぼんやりしてるし、宇宙は寒いなんてたまに独りごと言ってるし、さっきは給湯室でゆらゆら揺れながらふきんをハイターにつけてました」「そういやもうすぐ午一くんの誕生日だったな、よし景気づけにサプライズパーティでもやるか、田端くん経費で生ケーキ注文しといて」「イチゴたっぷり盛った特大のやつですね承知しました!」みたいなやりとりがあちこちでかわされていることでしょう。
この宇宙船が地球に着陸してあなたが最初に目にするのは「ウェルカムバック トゥ ジ アース」のメッセージカードが乗ったケーキを持ってニコニコ出迎えてくれる同僚の田端さん、日暮里課長、その他同僚、友達、サークル仲間、家族、恋人の姿です。孤高で個人主義のあなたも「人間っていいなあ」と胸の底から温かいものがこみ上げてくることでしょう。
2016年は周囲の情や愛をひしひしと感じられるいい年になるでしょう、みんなあなたを応援してくれますよ。もう恐れることはありません、青空に向かってぐんぐん高く伸び、あなたならではの花を遠慮なく咲かせてください。
★午未の二黒土星さん、はい。
ああ人間関係辛かった、みなさんのお顔にはそう書いてあります。
この世で最も難しいのは人間関係です、だってみんなそれぞれ「生もの」ですもの。関わっちゃいけない人に関わった人、地雷を踏んだ人、最初は直径5センチくらいだった誤解の波紋が10キロくらいに広がった人、とうとう修復不能になっちゃった人、いろいろいらっしゃることでしょう。
宇宙旅行中にこじれてもつれてダマになる人間関係は無理にときほぐす必要はありません。苦労して努力して理解してもらおうと思っても徒労に終わるケースが多いからです。
たとえば未来の見えない恋愛、疑心暗鬼の友情、あなたを理解してくれない仲間、無理難題を押しつけてくる身内、愛より利害関係を優先する人たちとのおつきあいは、今のうちに銀河の彼方に廃棄しちゃっていいでしょう。
大丈夫、地球上には70億以上もの人がいます。つまらない知り合いと縁を切ったとしても、まだまだ数え切れないほどたくさんの人たちが存在します。宇宙人も加えれば出会いの数は無限大と言っていいでしょう。
人間関係を整理するうち、あなたの周囲を取り巻く垣根の風通しが良くなり、新しい人がわらわらとあなたのそばに寄ってくることでしょう。
「午二(うまに)さんはじめまして、あなたの腕を見込んでぜひお願いしたいことが」「午二さんですよね、よければお食事ご一緒しませんか」「五目うま煮に入ってるうずら卵はいつ食べますか」。
2016年のテーマは「去る者は負わず、来る者は拒まず」。よくも悪くもたくさんの人があなたに寄ってくる暗示です。ただし、相手がハンサムでも美人でも自己開示はあせらないこと。
たとえ垣根がスカスカで寂しくても、急いで親しくなろうとせず、ゆっくり時間をかけて相手との間合いを計りながら接してください。
人間関係の長続き度は、かけた時間に比例します。楽しく豊かな人間関係をコツコツ地道に築いてまいりましょう。
★午未の三碧木星さん、あっ周囲から圧力かけられてぺったんこになってる、のし餅みたい。
はい町田さん「自分は何も悪くないのに悪者にされてしまった」、登戸さん「出る杭のごとくたたかれた」、喜多見さん「周囲からハブられた」、下北沢さん「雪の朝の小田急線は着ぶくれラッシュでしんどいです」。
そうですかお辛かったですね、午未グループは基本的に我慢強いとされておりますが、三碧はストレス耐性がやや低めです。
「我慢するくらいなら逃げたほうがまし」と考えやすいタイプですが、この2年間は自分の四方をぶ厚い鉄の壁でバンバンバババンとふさがれ、逃げ場なしといった閉塞感を覚えていたのではないでしょうか。
でももうすぐそのついたてははずされますよ、急に視界が開けて一気に日当たりと風通しがよくなる感じ、洗濯物よく乾いて助かるわーな感じを満喫できるでしょう。
で、そのまましばらくじっとしていると広い砂漠の向こうからクリントイーストウッドとかショーンコネリーみたいな物わかりのよさそうなイケメンのおじ様がジープを運転してやって来るわけです。(注:あなたが男性の場合、シャーリーマクレーン、ジーナローランズなどいぶし銀のおば様に置き換えてご想像ください。)
「待った? ずっと見てたよ午三(うまみ)さん、よく頑張ってたね」
ニコッと笑うと目尻がシワだらけ、酸いも甘いも噛み分けた大人の素敵な年輪です。
助手席に座ってその人と一緒にドライブするうち、あなたのペタンコに押しつぶされた心と身体は元通りにふっくらふくらんでくるでしょう。
2016年の幸運の使者は「話のわかる目上」です。先輩、上司、ボス、年長者があなたをエスコートして、素敵な場所に連れて行ってくれることと思います。
目上に好かれるコツは「礼儀」「仁義」「忠義」「信義」「恩義」を忘れないこと。古くさかろうが時代遅れだろうがこの5つは世渡りの鉄板、どうぞ「義」の道をしっかり踏みしめ、ワンランク上の世界へ進んでください。
★午未の四緑木星さん、ああみなさん背中がまん丸です。
よほど責任が重かったのですね、頑張ったのに誰もきちんと評価してくれませんでしたと。後輩に仕事教えたけどやる気なくて全然ダメでした、むしろ煙たがられましたと。骨折り損のくたびれもうけでしたと。
肩の荷が重すぎたのでしょうか、うつぶせに倒れたままの方もいらっしゃいますね、えっ取り返しのつかないミスをしてもう立ち直れない? メンツ丸つぶれ?
よろしいじゃないですか一度や二度失敗したからって死ぬわけじゃあるまいし、失敗は成功の母、失敗がなければ成功もない、経験できるうちに何でも経験しておきましょうよ。
よろしいですかみなさん、宇宙旅行中に起きたミスやトラブル、ええーっ勘弁してくださいよ的な出来事はすべて「みそぎ」とお考えください。ええお清めための冷たい水浴びのようなもの、それを経験しなければみなさんの厄は落ちなかったのです。
なぜうまくいかなかったのか。何が原因だったのか。
毎回毎回同じこと繰り返してバカだなああたし。
そこを突き詰めていきますと、やがておのれのクセ、弱点、修正すべき箇所が見えてまいります。
そうしたら、あとは直していけばいいだけです。どうしても直らないなら「私はそういう人なのだ」と認めて受け入れればいいだけです。そうやって人はコツコツ大人になってまいります。
2016年は今までのストレスが癒やされて楽しい年になりますよ。神さまは試練ばかり与えません、みそぎ道場を卒業したあとはお楽しみの放課後タイムです。
ねえ午四(うまよ)、そんな一生懸命に仕事ばっかしてるとあっという間におばさんだよ花の命は短いよ、もっと人生を楽しみなよ、よかったらこのあと飲み会があるんだけど来ない? うん私のプライベートの友達グループだけどみんな気さくでいいやつばかりだよー。
たまにはいいかとついて行ったらその店おしゃれでカッコよくて料理もワインも最高でしたと。そしてグループの中に性格のいい男子がいましたと。顔もわりかし好みでしたと。メアド交換してなんかドキドキする人生が始まりましたと。
そんな感じの一年になるでしょう。乞うご期待。
★午未の五黄土星さん、ああ仏頂面で腕組みしたままフンッと鼻息でお返事されました。このグループはうれしいときも楽しいときも表情があまり変わりません。
2015年はどんな年でしたか? はい笹塚さんしぶしぶ口を開いた「失恋した」、仙川さん「貯金を使い果たした」、清滝さん「親兄弟ともめた」。
一般的に二黒、五黄、八白の「土性の星」は生存欲求、獲得欲求がひときわ強いパワフルな星、本能に素直で人間くさい星、経験則から真理を悟る積み重ねの星、午未ですからあからさまには出しませんが内面では「○○がほしい」「○○がしたい」「○○になりたい」などの欲望が鳴門海峡の渦潮のようにごうごうと渦巻く傾向があります。
2015年は期待に現実が追いつかずダメージが大きかったかもしれません、あせったばかりに「大事なものを失ってしまった」と心にぽっかり大きな穴が開いた人もいるでしょう。
しかし宇宙旅行中の「手放し」は、長い目で見ますと決して悲しむことではないのです。ご本人は喪失感で胸がいっぱいでしょうが、別の角度から見れば「手にしている必要がなくなったので離れていった」「存在理由がなくなったので消えていった」という自然現象であったかもしれません。
自然現象にしてはやや強制的でしたか、しかし「そうなるべきこと」が有無を言わさずストレートに起こるのがこの大宇宙、よけいな遠回りをせず起こるべきことはさっさと起こるのがこの大宇宙とお考えください。
ひとつ手放せば新しいものがその隙間にまた入ってまいります、それはもしかすると「もっといいもの」かもしれません、あまりお気落としのないように。
2016年は「変化」「刷新」「革新」の年になるでしょう。この宇宙旅行で古いものをそぎ落として身軽になられた方はフットワークよく動けますので革命は成功に向かい、未練がましく古いものにしがみついてる方は満足できない現状維持が続きます。
いずれにしても随所随所で「午五(うまご)くんこの期に及んでそのやり方をまだ続けるつもりかね」「過去の栄光にいつまでもしがみついていては進歩がありませんよ午五さん」などとたしなめられ、決断を迫られる場面がやってくるかと存じます。
「節目の年がやって来る」と覚悟のうえ、気を引き締めて臨まれますように。
・・・長くなりました、ではここでしばし休憩を挟みましょう。
みなさまあちらをご覧ください、先ほど天体に大きな星が誕生いたしました。
管制塔からの連絡によりますとあの星の名はデヴィッドボウイ、またの名をジギースターダストと呼ぶのだそうです。
わたくしごとで恐縮ですが実は昔、地球におきましてあの方とふと目を合わせる瞬間があり、人種、性別、年齢、肩書きを超えてまっすぐこちらに向かうまなざしを受けたとき、「前衛的で型破りなスターであってもこの方はピュアでやさしく、人間としてものすごくまともな人である」と実感いたしました。
屈折する星くずの上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群れ。グラムの北辰(ほくしん)。グリッター菩薩。美しい巨星に合掌いたします。
・・・ではミーティングを再開します。各自お席にお戻りください。
★午未の六白金星さん、ああ刀折れ矢尽きていらっしゃいますね、みなさん落ち武者みたいなざんばら髪がちょっとセクシーでカッコいいです。各自あちこちに行き倒れて息も絶えだえでいらっしゃる。
では野戦病院状態の午六(うまろく)ブースからインタビューしてみましょう、春日さんいかがですか今のご気分は? 「致命的な判断ミスで何もかもパア、正直自分甘かったです」、白山さん「裏目裏目に出たので最終的にはもしかしたら表目になるかと思ったのですが結局裏目に出てしまいました」、巣鴨さん「最近肌がたるみ、シワも増えてファンデがよれるので悩んでいます。やはり天中殺はこわいですね」。うーん巣鴨さんの場合は天中殺というより加齢が原因かもしれません、日々のお手入れとマッサージが有効かと思います。
2015年は「判断ミス」「進展していた案件が凍結」「節目越え失敗」などの手痛いダメージを負った方も少なくなかったのではないでしょうか、「動かざること山のごとし」を痛感し、山間に沈むオレンジ色の夕陽をただぼんやり眺めるほかすべがなかった人もいらっしゃるでしょう。
しかし2016年、みなさんを取り巻く星の配置が変わります。どうなるか。ものごとがいきなり活発に動き始めるのですね。
「ふふふ午六(うまろく)さんあたし来ちゃった、ねえ重いからスーツケースひとつ持ってくれない、そうこれがあたしの家財道具すべて、これから面倒見てねよろしくぅ、あっネコもいるよほらこのリュックの中ううん1匹じゃなくて3匹」
いきなり来られてもとあせっても彼女は自分をすり抜けてスッと家に入ってくる、荷をほどいて勝手に洗面所に自分の歯ブラシとコップを置く、派手な色のドレスを次々にクローゼットのハンガーに掛ける、お気に入りの音楽を大音量で部屋に流す、ねえおなかすいちゃったあとあなたに微笑むのです。
ウェルカムだろうがノーサンキューだろうが「それ」は突発的にやってきます、なので今から心の準備をしておいてください。
「それ」って何かって? そうですね、「過去の妖精」とだけ申し上げておきましょう。いずれにしてもみなさんは地球に戻ってからその案件に面と向かうことになり、何らかの決意、決断、方向転換を余儀なくされることと存じます。
2016年は人生を変えるチェンジ&チャレンジの年、六白のみなさんにとって非常にやりがいのある面白い年になるでしょう。これから忙しくなりますよ、乞うご期待。
★午未の七赤金星さん、はい。ああ憂うつそうなお顔をされてますね、恋の悩み? 親友や同僚と仲違い? それとも家庭内不和でしょうか。信じていた人から嘘をつかれた、裏切られた方もいらっしゃいますね。
宇宙旅行中のもめごとはちゃんと燃える理由があって燃えているので燃えるがままに放っておくのが正解、下手に鎮火しようとすると不完全燃焼して燃えかすが残り、逆に厄介なことになります。
2015年に起きたトラブルはいわば過去の「お炊き上げ」ないし「どんど焼き」、肥大化した煩悩を焼き払うために必要不可欠なプロセスであったとお考えください。
火あたりして頭がボーッとなり、ご気分が悪くなった方はいらっしゃいませんか? そんな方のために本宇宙船の地下に冷水プールが設置されております、水がドドドと激しく流れ落ちる打たせの滝コーナーもございますので、荒行がお好みの方はそちらで水垢離もお楽しみください。
そうやって頭を冷やすうち、「頑張って無理にその関係にしがみつく必要はない」「離れていく者を追ってもまた同じことが起こる」「じたばたせず、とりあえずなりゆきに任せるのが正解」「隣近所とはお天気の話が無難」ということがわかってまいります。それを業界用語で「悟り」と申します。
宇宙船に乗って大宇宙を旅行するおかげで、乗客のみなさまには大いなる知恵がついてまいります。これはお金で買えない一生の宝ものになるでしょう、そう考えますと「天中殺」というのは実は神の慈悲であり恩寵なのではないか、そんな気がしてまいります。
2016年は火祭り後の副作用として脱力感、無気力感、寂寥感を覚えるかもしれませんが、半年もすれば自然に収まり、一件落着して静かな生活が戻ることでしょう。
「いろいろあったけどまあいいか」、そうご自分に言い聞かせながら本を読んだり映画を見たり、お昼休みにびっくりドンキーで15種類以上の野菜が摂れる「ドンキー畑」をいただきながら、心身のメンテナンスと幸せの模索にいそしんでいただきたいと存じます。
★午未の八白土星さん、あれお姿が見えませんねどこに行かれたのでしょう。ああっみなさん船外服を着て宇宙船の外を夢遊病者のように意味もなく徘徊していらっしゃる! よほどお辛いのですね、じっと座っていることもできないなんて。
こちらのグループの2015年を将棋に例えてみましょう。
先手八白で意気込んだものの序盤で魔がさし好き勝手なことをしてつまずき、ミスが挽回できないまま中盤へ突入、形勢不利で後手後手に回るうち歩兵が寝返り、あっけなく金銀飛車角をもぎ取られ、いざのとき用に取っておいた桂馬は奮闘の甲斐なく討ち死に、香車はバカのひとつ覚えで前へ前へ進むだけで役立たず、そのまま終盤で抵抗の余地なく「王手」の声がかかり、「待った」を要請するも情け容赦なく待ったなしではい詰みましたと。自分なりに頑張りましたがもうこれ以上打つ手ありませんと。
思わず将棋盤の上に泣き崩れ、力なく「知床岬」を口ずさんだ2015年でした。お疲れさまでした。
「無敵」「完全無欠」「一騎当千」の名を天下に轟かせる午未の八白さんだって負けることくらいありますよ、ええ人間ですもの、弘法も筆の誤り猿だって木から落ちるのです。
しかしそんなハードな宇宙の旅ももうすぐ終わります、地球に戻ったら過去2年間の布陣を振り返って反省し、巻き返しを図りましょう。ええこのまま終わるみなさんではありません、人生はまだまだ続く、本当に面白いのはこれからなのです。
みなさんの2016年のテーマは「一陽来復」。冬のあとには春が来る、陰が極まれば陽に転ず、地球が誕生してから一日たりとて明けない夜はありませんでした。
立春以降、背中に乗っていた巨大な漬け物石がクレーン車で取り除かれるような感覚、萎えた心と身体に筋肉が復活し全身にパワーがみなぎってくるような感覚、本命の午八(うまはち)くんにはフラれたけどもっとステキな馬八(うまや)くんからアプローチが来たぞみたいな感覚を覚えることと思います。
本調子が戻るには少し時間がかかるかと思いますが、地道に筋トレしながら戦略、戦術、戦法をじっくり練り、捲土重来(けんどちょうらい)にお備えください。
★午未の九紫火星さん、はい。こちらのグループは表情が少し明るいですね、もうすぐ地球に帰れますものね、直感的に心がはずんでいらっしゃるのでしょう。
みなさんのご心境は「芽を出したいのに地上に氷が張っていてなかなか芽が出ない、ああ早く氷が溶けないかなあ、そして温かい日ざしを全身に浴びたいなあ」ではないでしょうか。
こういうのを易で「水雷屯(すいらいちゅん)」と申します、これは四大難卦のひとつで「時いまだ至らず」という逆境の卦。何をしてものれんに腕押しの独り相撲、まるで透明な冷蔵庫に押し込められたような感覚を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしどんなに分厚く張った氷も春が来れば必ず溶けます、そのときまでじっと我慢するのだぞあせりは禁物、カップ麺だって時間を待たずにあせって食べるとおいしくないじゃんなのでございます。
日に日に天から射し込む光が強く明るくなっているのを感じていますか? そう、春の訪れはもうすぐそこ、今こうしている間もあなたの頭上に張り巡らされた氷はどんどん溶けているのです。
宇宙旅行中に得たことは何でしょう? はい木場さん「無重力の世界で走ってもちっとも前に進みませんでした、あせってもダメなもなぁダメとわかり忍耐力がつきました」、はい葛西さん「直感やひらめきも大事ですがそれを実現させるためには地道な努力が必要だと気づきました」、はい行徳さん「大宇宙は孤独ですが私はわりとナルシストなので別にこれでいいです」。
はいさまざまな意見が出ましたね、どれも正解です。ここで得た教訓を地球でも活かし、よりよい人生に役立てられますように。
2016年からは新しい人生サイクルが始まりますよ、ええあなたが20代であろうが50代であろうが年齢に関係なく、真っ白いキャンバスに好きな絵を描くことができます。
どんな絵を描きますか? 才能を活かしてたくさんの人から注目される絵、愛する人と一緒に幸せな家庭を築く絵、バリバリ仕事して世界を股にかけ活躍する絵、値札を見ずに「これ全部いただくわ」とカードを出す絵、牧場で馬や羊と仲良くひなたぼっこする夢。
今年描く絵が、あなたの未来をつくる青写真になります。「人生は自分のイメージに沿って展開する」という宇宙のルールをしっかり覚え、より幸せな人生を築かれますように。
・・・はい、長くなりましたがこんな感じです。
午未のみなさん、長旅お疲れさまでございます。あともう少しでこの大宇宙の旅も終わります。すべてのものごとには終わりがあり、やがて新しいものごとが始まります。
あ、窓の外に美しい花火のような大流星群が見えますね、まるでみなさんの前途を祝福しているかのようです。
・・・こうして無限の宇宙を眺めておりますと、何か大きな意思が働いていることを感じざるを得ません。なぜ宇宙はこんなにも美しいのでしょう?
宇宙の意思、あるいは「創造主」と呼べる存在がもしいるとするならば、それは「あなた」に何を期待しているでしょうか?
さて、本船の地球帰還は2月3日を予定しております。余力のある方はそろそろパッキングを始め、余力のない方はそのまま脱力していてください。宇宙はすべてをおおらかに包み込み、いつもと変わらずその美しい営みを続けることでありましょう。
それでは残り少なくなりましたが、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。
午未天中殺のみなさんに幸あれ。
Good Luck、Thank You。
アントワーヌとお嬢さま・新春番外編(2016)
お嬢さま☆ぎゃあーっアントワーヌ! アントワーヌってば!
アントワーヌ★どうなさったのでございますお嬢さま、スマホを前に白目をむいて。
お嬢さま☆メリメリメリメリ・・・
アントワーヌ★メリークリスマスでございますかもうとっくに終わりました、イブのパーティでは七面鳥の丸焼き1羽分、鴨肉のコンフィオレンジソースがけ1羽分、シャトーブリアンステーキ3頭分、食後にブッシュドノエルをまるごと1本恵方巻きのようにかぶりついて、同席されたレクター博士があきれてあんぐり口を開けておられました。
お嬢さま☆そうじゃなくてメリメリメリメリ・・・
アントワーヌ★舞踏会用のドレスが破れてしまったのでございますか、ここのところ少し食べ過ぎでは?
お嬢さま☆ちがーう!「MERY」にオペラ沢かおりの九星気学「恋もおしゃれも楽しみましょ 2016年のあなたの運勢」が載ってるのよ。
アントワーヌ★トレンドに敏感な女の子のためのウェブ上キュレーションメディア、MERYでございますか? ファッション・ヘアスタイル・美容・メイク・ コスメ・恋愛など、女の子の毎日をすてきにブラッシュアップする情報がてんこ盛りのあのMERY?
おしゃれでかわいい女の子たちがスマホで毎日チェックしているあのMERY?
お嬢さま☆そうなのよ、びっくりしちゃったわ見てこれ!
アントワーヌ★あら本当、MERYの「ライフスタイル」のページでございますね。「かわいい」「きれい」「運がいい」は宇宙の正義、興味のある方はどうぞご覧ください。年の初めにお読みになるだけでグググッとツキが上がることでございましょう。
お嬢さま&アントワーヌ☆★新年明けましておめでとうございます、今年もどうぞよろしくお願いいたします。みなさまにとって最高の一年になりますようお祈り申し上げます。今後ともPINKIE’S EYEをよろしくお願いいたします。
では、2016年もはりきってまいりましょう!
アントワーヌとお嬢さま・番外編
お嬢さま☆ぎゃあーっアントワーヌ! アントワーヌってば!
アントワーヌ★どうなさったのでございますお嬢さま、ネットの前で泡を吹いて。
お嬢さま☆オペオペオペオペ・・・
アントワーヌ★オノマトペでございますか、使いすぎにはご注意なさいまし。
お嬢さま☆ガラガラドカーンスパコポーンていやそうじゃなくて、オペラ沢かおりが12月16日(水)発売のan・anに初登場よ!
アントワーヌ★このブログの主宰者であるあのへんてこな運命学研究家の? どれどれ・・・あらまあ本当、そうそうたる顔ぶれにいつの間にかひょっこり混じって。
ふうん、この本を読めば2016年前半の恋と運命、幸せになるための傾向と対策がばっちりわかるのですね。プレシャスな人生を送りたい女性の転ばぬ先の杖としてぜひゲットしたい一冊でございます。
お嬢さま☆ようし読むわ読まいでか、ネットでポチるかコンビニもしくは最寄りの書店へ走ろうか。
アントワーヌ★あああ矢のように飛び出して馬に乗ってパカランパカランと城をあとにされた、まったくお嬢さまは猪突猛進でございますねまあいいか。
例年大人気のan・an占い特集号ですので売り切れ必至、みなさまどうぞお早めにお求めくださいまし。著者に代わりましてよろしくお願い申し上げます。
午未天中殺のみなさんへ その3

アテンションプリーズ、宇宙船午未号にご乗船のみなさん大変長らくお待たせいたしました。
わたくし、みなさまの旅のおともを務めさせていただきますチーフCAの午・未(うま・ひつじ)でございます。
これから第3回船内ミーティングを始めますので、各自お手を休めてロビーにお集まりください。
・・・・・・はい、みなさん着席されましたね。
(CA一同礼。壇上の午・未にスポットライトが当たる)
お久しぶりです3分の2年ぶりですか、この暗黒の大宇宙を航行しておりますとついつい時間の感覚が失せてしまいますね。乗船したのがまるできのうのことのよう、時のたつのは本当に早いものです。
それにしましてもみなさんきれいなお顔をしていらっしゃる。宇宙旅行も半ばを過ぎますと通常は「あがく」「悶える」「燃え尽きる」のどれかのパターンになるのですが、午未は一糸乱れず平常時のまま。おみごとです。さすが「孤高の人」「美意識の人」「悟りの人」と称されるだけのことはあります。
しかし実のところ、6つの天中殺グループ(子丑、寅卯、辰巳、午未、申酉、戌亥)の中で最も繊細でナイーブとされるのがみなさん午未です。去年から今年にかけて腹立たしいことやイライラすること、もういい加減にしてくれないかな的なイベントが延々続き、ポーカーフェイスの裏で胃や腸がキリキリ痛んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
不平不満を滅多に口に出さないのは午未の美徳のひとつではありますが、そういうときは無理に悩みを1人で抱え込まず、信頼できる人に話を聞いてもらうのもひとつの方法かと思われます。たまっている胸の内を吐き出すだけでも気持ちが少しは軽くなりますので、ぜひお試しください。
では、今回のミーティングでは午未と各天中殺グループの相性についてお話しいたしましょう。
★午未天中殺と子丑天中殺・・・細かいところまでよく気のつく子丑は、繊細な午未とよくウマが合います。彼らはあなたが抱えている問題の核心を一瞬にして見抜き、現実的なアドバイスを与えてくれるでしょう。苦労人の子丑は「知恵と知識の人」なのです。
運命学では「子丑は午未の不運をスパッと止める相手」と考えます。困ったときは子丑に話を聞いてもらったりアドバイスをもらうと、なぜかスムーズに問題が解決することが多いのですね。1人ではダメなものが、子丑の力を借りるとうまくいく。
しかし、子丑に寄りかかり過ぎてはいけません。やさしく面倒見が良さそうに見えても子丑は基本的に個人主義、自分のリズムを乱されるのをきらいます。
もたれかかってグチばかりこぼしてると「重いッ!」とネズミのようにダッシュして逃げられる恐れがあります。
子丑の思いやりに感謝しながら、適度な距離感を大切にするといいでしょう。
★午未天中殺と寅卯天中殺・・・「私、今とても困っているの。よかったら話を聞いてくれる?」
「あっ午未ちゃん久しぶり、うんうん聞く聞くもちろん聞く、どうしたの何があったの誰かにいじめられとるんか」
「いえそうじゃなくて・・・・・・」
「そうかお腹空いてるんかよしわかった焼き肉屋行こう、ロースにカルビにハラミにミノ、ミスジにサガリにホルモン全種、クッパビビンバつけ冷麺、仕上げはアイスと杏仁豆腐ッ!」
あッとかえッとかとまどいながらも午未はそのまま寅卯のペースに乗せられることになりますが、寅卯の豪快な食べっぷりを見ているうちに「ま、いいか」と思えるようになり、何となく救われたような気分になるでしょう。
「親分肌の寅卯は午未の面倒を物心両面に渡りよく見てくれる」と運命学では申します、ただしその面倒の見方はわりとダイナミックなところがあるかもしれません。午未の細やかな心のひだを、大きな目の網でガバッとまるごと包み込んでくれるふところの深い相手です。
★午未天中殺と辰巳天中殺・・・午未が何を打ち明けても驚かず、冷静に問題を分析して最短距離の解決方法をアドバイスしてくれるのが辰巳です。「親知らずが痛み出して困ってるの」と相談したときに「大変ね、きのうは眠れなかったでしょう、鎮痛剤あるけど飲む?」と心配してくれるのが子丑なら、「ふうん」とつぶやいて先に立ってすたすた歩き始め、「はいここ私の叔父さんがやってる歯医者。腕は一流、予約しなくても今すぐ抜いてくれるって」と歯科医院のドアを開けてにっこり言い放ってくれるのが辰巳です。行動に無駄がありません。
ナイーブな午未にとっては少し荒っぽく思えるかもしれませんけども辰巳は別に悪気でやっているわけではなく、問題解決への最短ルートを提示してくれているだけです。
辰巳は「思ってもみない方法で午未を助けてくれる」「短時間でグイッと軌道修正してくれる」「午未の視野をカパッと広げてくれる」などと運命学では申します。
彼らの雑草のようなしたたかさ、どのような環境に置かれても上へ上へ伸びていくたくましさ、ちょっとどきなさいよあんたと力強く生き抜いてくド根性は、見習うべき価値があるのではと存じます。
★午未天中殺と午未天中殺・・・似たもの同士、あうんの呼吸で意志が通じ合います。しかしこの2人が一緒にいるとどうしても現実社会のことより芸術や哲学や宇宙科学など高尚な学問のほうへと話題が流れてしまうきらいがあります。
「営業一課の午本(うまもと)くんこの出張経費精算書の合計金額18万9975円てなってるけど正しくは18万9867円じゃないのかな」「あっ経理の未野(ひつじの)さんどれどれうわっおっしゃる通り、108円多かったですねすみません」「108円・・・・・・つまり午本くんはこの経費精算におのれの煩悩を盛ったというわけね」「実は正五角形の内角も108度ってご存知ですか未野さん」「そういえばペンタゴンも警察のバッジも五角形だわ、平安時代の陰陽師・安倍晴明が魔除けの呪符として用いたのも五芒星。どうやら108には深い秘密がありそうね」。
このように午未同士の会話には凡人がちょっと入り込めない深い味わい、幻想的な趣き、引田天功もびっくりの空中浮遊感があります。
「あんたたちさっきからずっとそういうことばかり話してるけどそれ具体的にこの職場において何のメリットがあるの」とリアリストの寅卯や辰巳や申酉からツッコミが入るかもしれませんけども、午未の思考は既存の型にはまるようなスケールの小さいものではありませんのであまり気にしなくてよろしいかと思います。
★午未天中殺と申酉天中殺・・・午未は「考える人」つまり行動より思索がまさり、申酉は「行動する人」つまり思索より行動がまさります。
この2人が一緒になるとお互いにないものを補い合って大きな前進力が生まれます、そうですね具体的に申しますと操縦型戦闘ロボット・マジンガーZのようなものでしょうかええもちろん頭部の操縦席に乗り込んで操縦するのは午未、超合金ボディで馬鹿力もといスーパーパワーを発揮するのは申酉です。
「ストレスで食欲がないんだ」とロマンスグレーの午未課長がぼんやり夕陽を見ていると、「干し貝柱と鶏ガラでダシをとった中華がゆを給湯室でコトコト煮込み、食欲増進作用のあるパクチーを裏庭で摘んでたっぷりトッピングしてみました」といつの間にか背後でホカホカ湯気の立つお盆を持ってニコッと笑ってくれるのが申酉の部下です。
午未の行動スキルが1とすると、申酉は15くらいの行動スキルを持っているのですね。フットワークがよくてパワフルで気のいい申酉を味方につけるととても心強いです。
ただし申酉の好意を「当たり前」と思ってしまうとすぐにそっぽを向かれてしまうので要注意。申酉と良好な関係を長続きさせるには言葉だけでは足りません、感謝の気持ちを「具体的な形」で表現するといいでしょう。
★午未天中殺と戌亥天中殺・・・昼休みに公園のベンチでハムきゅうサンドを食べながら「こないだ買った紫色のワンピにゴールドの取っ手のついたブルーのバッグを合わせたらきれいかなあ」とぼんやり考えるのが午未なら、「須弥山(しゅみせん)の頂上に住む帝釈天の望みは何だろう、やっぱり人間世界の平和かなあ」と想像しながらブランコに座って助六寿司を頬張るのが戌亥です。
どちらの思考も現実世界から遠く離れておりますが、より距離があるのは戌亥のほうかもしれません。午未が「市井の悟り人」なら戌亥は「銀河系の悟り人」、「普通」からの逸脱ぶりにおいて戌亥にかなう者はいないでしょう。
公明正大で正義感の強い戌亥は常に「人類の幸福と発展」について考えを巡らせていますから、いつでもどこでも親身に相談に乗ってくれます。
「戌亥係長、ボクお金がなくて家賃が払えなくて困ってるんです。少し貸していただけないでしょうか」
「大変ですね午未くん私もないので心配しなくていいですよ、よし、支払いを延期してくれるようこれから一緒に大家さんに頼みに行きましょう」
そう言って静かに微笑んでくださる戌亥係長に、蚊取り線香の燃え口のようなほんのり明るい光を午未は感じることでありましょう。
さあ、いかがでしたでしょうか。同じ人間といえど世の中には実にさまざまな方がいらっしゃることがご理解いただけましたでしょうか。
今回はざっとお話ししましたけれども、6つの天中殺グループに9つの星を絡めたら6×9=54タイプ、それぞれに男性、女性がいるので54タイプ×2=全部で108のタイプが存在するというわけです。
さあみなさんここでまた「108」という数字が出てきましたね、これ試験に出るかもしれませんので各自マーカー引いておいてください。
ああもうこんな時間になってしまいました、みなさんそろそろお腹が空きませんか? あちらのダイニングルームでビュッフェの用意が調っております。
みなさんは現世で辛い苦しいああもう勘弁してと砂を噛むような思いを日々味わっていらっしゃいますので、せめてここではおいしいものをたっぷり召し上がっていただこうとCA一同腕をふるい、真心込めてご用意いたしました。
各種温製、各種冷製、鉄板焼き、天ぷら、窯焼きピッツァ、グラタン、パエリア、カレー、にぎり寿司、おそばにうどんにラーメンもございます。甘党の方には各種ミニケーキ、ジュレ、ソフトクリーム、あんみつ、ぜんざい、ところてん、お好きなフルーツやマシュマロを絡ませるチョコレートファウンテンもご用意いたしました。
・・・・・・ああみなさん黙々とおいしそうに召し上がっていらっしゃる、やはりローストビーフコーナーは長蛇の列ができますね。
はるか遠くに青い地球が輝いております。みなさんの肉体はあちらに投影されておりますが本体はこの宇宙船の中にありますので、もどかしい、じれったい、いたたまれない思いをすることも少なくないでしょう。
しかしそういう思いを味わうのは決して無駄なことではないのです。感情の幅と奥行きと高さが広がって他人の心情が細かく理解できるようになる、つまり人間としての経験値が上がってひとまわり大きく成長できますし、今は理解できなくても地球に帰ってからああそうだったのか、あれはあれでよかったのかもしれない、手放さなければ次に行けなかったのだなと合点がいくこともあるかもしれません。
この宇宙旅行も残すところあと約7カ月になりました、たぶんあっという間に過ぎていくでしょう。どうぞこの貴重な機会を無駄にすることなく、心行くまで人生の旅を楽しまれますように。陰のあとには必ず陽が巡ってまいります、そのことをゆめお忘れなく。
それでは引き続き快適な空の旅をお楽しみください。Good Luck、Thank You。
(CA一同礼)
午未天中殺のみなさんへ その2

大変長らくお待たせいたしました、これから第2回・宇宙船午未号内ミーティングを始めます。各自作業の手を休め、もしくはうたた寝から目を覚まし、しばらくこちらにご注目願います。
(ロビーのお立ち台に並んだキャビンアテンダント=以後CA、一同礼。)
わたくし、チーフCAの午(うま)・未(ひつじ)でございます。
・・・・・・船内、シーンとしておりますね。お通夜みたいです。2012年、2013年に乗船された辰巳天中殺の方々とは大違い。「もうイヤぁーッ!」と泣き叫ぶ方も、勝手にハッチを開けて地球に帰ろうと宇宙に飛び出して回収される方もいらっしゃいません。
乗船されてからみなさん魂が抜けたかのようにぼんやりもとい、もの静かに思索にふけっていらっしゃいますね。もしかするとご自分が天中殺に入ったことすら気づいてない方もいらっしゃるかもしれません、「あれ? ちょっと調子悪いけど気のせいかなあ」「何だか近頃やる気がないなあ」なんて(笑)。
念のためここでもう一度ご説明申し上げておきますと、生まれ日が「午未天中殺」というグループに属するあなたがたは2014年2月4日よりこの船に乗船され、現在「天中殺」という大宇宙をゆっくり漂っておられます。地球帰還は2016年2月3日を予定しております。
身体は地球上にあっても魂は地球からはるか遠くに離れたここにありますので、現実世界でやりたいことがやりたいようにできません。木に成った柿をおもちゃのマジックハンドでもぎとろうとするようなイライラ感、UFOキャッチャーで大きなぬいぐるみを取ろうとするときのああもうこれ全然無理じゃん的なもどかしさを感じていらっしゃるのではないでしょうか。
無重力のこの大宇宙ではあらゆる努力が「のれんに腕押し」になりやすいのでお気をつけください、宇宙船内で読書をなさるなら「本気出せば努力は実る」系の自己啓発本より、「軽く悟ってみませんか」系の仏経本をおすすめいたします。
・・・・・・みなさん黙々と草を食む羊、あるいは風に吹かれて無心にたたずむ馬のようですね、聞いてるんだか聞いてないんだかさっぱりわかりません。
子丑、寅卯、辰巳、午未、申酉、戌亥の全6グループの中で、午未さんが最も馬耳東風、馬の耳に念仏、いつどんなときもマイペースと申せましょう。聞いてるようで聞いてない、かと思えばたまにぼそっと核心を突いた鋭いことを言う。実に不思議な方々です。
運命学では午未のことを「孤高の山から下界をながめる仙人」と申します。その大きく澄んだ瞳には、ありとあらゆるこの世の真実がくっきり映し出されていることでありましょう。ちなみに美男美女が多いのもこのグループの特徴です。ちょっとカゲがあって格好いいんですよね。
では、九星別に点呼を取ってまいります。呼ばれた方は挙手お願いいたします。
★午未の一白水星さん、はい。
午未グループの中でも「知恵者」と誉れ高いみなさんですが、さすがにここにきて少し疲れたお顔をなさってますね。
2014年、みなさんは「何かと面倒な仕事を任される」というお題を与えられましたが、いかがでしたでしょうか、努力の甲斐はありましたでしょうか。
はい神田さん、「頑張りがなかなか形にならなかった」。はい大森さん、「誰も努力を認めてくれない」。はい水道橋さん、「縁の下の力持ちを余儀なくされている」。
そうですね、きっと多くの午未の一白がそう感じていらっしゃることと思います。お疲れさまです。
・・・・・・こんな歌がございます。
「これはこの世のことならず 死出(しで)の山路の裾野なる 賽の河原の物語」
小さな子どもたちが朝から懸命に積んだ石の塔を、夜になると鬼が現れては無慈悲にこん棒でなぎ払ってしまうというせつない歌ですね。
「一重(いちじゅう)積んでは父のため 二重積んでは母のため 三十積んではふるさとの 兄弟わが身と回向(えこう)して」
口ずさむたび、みなさんのお姿と重なってしまいます。
(2、3人のCA、そっと涙をぬぐう。)
しかしご存じでしょうか、この歌の最後には哀れみ深いお地蔵さまがどこからともなく現れ、子どもたちを抱き上げて仏さまのもとへと連れて行ってくださるのです。
2014年に苦労されたみなさんも、2015年には流れが少し変わってまいります。耳の穴から気力、体力をプシューッと吹き込まれ、しぼんだ身体がどんどんふくらんでくる感じってまるで自転車のタイヤみたい、ええそういう感じになると思います。
無償の努力をこのまま編み伸ばしてろうそくの芯とし、天から降り注がれる大慈大悲のお救いを希望のともしびとしますれば、やがてあなたを中心とする半径1メートル内の世界はふわりと温かく光り輝くことでございましょう。
★午未の二黒土星さん、はい。
午未の中でもひときわマイペースなのが二黒のみなさんです。午未と言えば「スタイリッシュ」「クール」「いぶし銀」と相場が決まっておりますが、みなさんの場合は見た目より実利、花より団子、きれいごとより実相を重んじるという特性があります。
打たれ強く、転んでもただでは起きません。台風の日に崖から転がり落ちても「土砂降りの雨の中で」(by 和田アキ子)を歌いながら泥だらけでのっそり這い上がってくるタイプです。
2014年は「自分をコントロールする」というお題を与えられましたが、いかがでしたでしょうか。
「ぜひ私にやらせてください自信があります、本多部長に恥はかかせません!」とタンカ切ってプレゼン行ったはいいけれど結果討ち死にだったり、「マザコンのあんたなんか大きらい!」といいとこの御曹司がせっかく玉の輿に乗せてやるちゅうとるのにあっさりふっちゃうとかですね、自分を自分で制御するのがなかなか難しかったのではないでしょうか。
もうやめとけ、そこら辺で頭冷やしとれとみんなが言ってるのに「だいじょうぶ、まだまだやれますっ」と根拠のない自信と持ち前の負けん気がマイナスの相乗作用を引き起こして泥沼に足がはまり、どうしても抜け出せない。ちょうど今そのような感じではないかとご拝察いたします。お疲れさまです。
2015年はぬかるみから脱け出せますよ、泥沼から水が引いて乾燥し、歩けるようになるでしょう。歩いた先でたくさんの人との出会いも用意されています。
その出会いが吉と出るか凶と出るかはあなたしだい。「利用してやろう」とか「押しのけてやる」などと思うと再び泥沼にどぼんの刑が待っておりますので、ご注意ください。
★午未の三碧木星さん、あれ?
お返事がありませんねあっロビーの片隅でどーんと落ち込んでいらっしゃる。
みなさんの2014年のお題は「人間関係の荒波を乗り越える」でした。
人という字はどう書くの、こうしてこうしてこう書くの、ね、人と人がちょうどいいバランスで寄り添って人なんです、人間関係は腹六分、仲がよくても腹七分と。
それ以上深入りすると息が詰まってやりにくくなりますよ、後悔しても個人情報公開したあとはもう引っ込められません。
人間関係は水もの、友達じゃ親友じゃと言うても川の流れが変化すれば自然に離れ、流れた先々でまた別の人と出会います。その繰り返しです。
そう考えますとあんまん肉まんタワーマンにおけるママカーストや公園にたむろするボスママ四天王、何かにつけイヤミたらしい小石川係長などちっともこわくありません、川の流れが変わればその人達はフッと消えてなくなるのですから。
・・・・・・「人間はしょせん孤独な生きもの」と生まれながらに心得ていらっしゃる午未さんにそんなことを言っても釈迦に説法でしたでしょうか、失礼いたしました。
あれっ三田さんどうしたのです目にいっぱい涙をためて。え? 信じていたカレに裏切られた? ああ、三角関係で負けてしまったのですね。
くやしい、腹が立つ、絶対に許さないがうねうねうねと三つ編みになって怒髪天をついてものすごい迫力ですね三田さん、お疲れさまです。
しかし「天中殺期間の別れは追うな」と運命学では申します。
天中殺期間には隠れていた真実が露呈しやすくなります、相手が女つくって逃げたということは「それだけの男だった」「これ以上つきあう必要はない」「相手の女に熨斗つけてくれてやれ」ということであり、無理につきあってもまたどこかで同じことが起こります。
ここは潔くあきらめて次のご縁を待ちましょう、でもあせりは禁物、元カレの影響が心身から脱けるにはある程度の時間がかかりますからね。それまでは自分磨きに専念して、天中殺が明けてからワンランク上の男をつかむことにいたしましょう。
★午未の四緑木星さん、あれれ。
お姿が見えません。どこに隠れたのでしょうか・・・・・・、あっのしもちみたいにぺたんこになって椅子の下にはさまってる!
どうしたんですだいじょうぶですか、えっ? 娑婆で押しくらまんじゅうされてペラペラになっちゃった?
うーん大変でしたね、しばらくそこのソファで横になっててください、ホメオスタシスが働いて時間がたてば元通りふくらんでくるでしょう。
ええとみなさんの長所は「人の心が読めること」「繊細でナイーブなこと」「やさしくて思いやりがあること」ですが、残念ながら天中殺期間はそれが裏目に出がちです。エンパス体質※がマイナスに働き、他人のネガティブな感情がノーガードで体内に流入してしまうのです。 ※注:empathy=共感、感情移入。「エンパス体質」とは、望むと望まざるとに関わらず他人に共感、共鳴してしまう体質のこと。
人混みに出ると疲れる人、はい手を挙げて。午未の四緑は全員挙手ですね、みなさん他人の念を受け取りやすい。他人と長時間一緒にいると肩が凝ったり頭が痛くなったり疲れたりしますでしょう。
ね、ただでさえそうなのですから、感覚がより鋭敏になる天中殺期間真っ最中の今はどんだけきついか。世の中いい人だけとは限らない、腹黒い人、変わった人もいっぱいいます、そういうのに取り囲まれてぐいぐい邪気を押しつけられてりゃ、そりゃぺたんこにもなりますよ、お疲れさまです。
2014年のお題は「自分をガードする術(すべ)を学ぶ」。
お気の毒ですが私には関係ありません、ここから先は進入禁止ですよと。丹田からふわっと気を出して全身の体表外側15センチにバリヤー張りますよと。イヤな渡世だなあと。エコエコアザラクそしてザメラクと。
ね、そうやって引き続き2015年もご自分を守る訓練に励んでまいりましょう。
★午未の五黄土星さん、はい。
「ブルージャスミン」という映画をご存じでしょうか?
ウディ・アレンが脚本・監督を務め、ジャスミンを演じたケイト・ブランシェットがアカデミー主演女優賞を取った2013年度の作品です。セレブな女性が離婚を機に落ちぶれて、徐々に精神を病んでいく物語です。
この映画はジャンル的に「コメディ」だそうですが、追い詰められ、現実と虚構の境界線が曖昧になっていく主演女優の姿には鬼気迫るものがあり、いっそ「ホラー」と言い換えてもいいように思えます。
「ブルー(憂うつ)なジャスミン」の最大の問題点は虚栄心と自尊心です。「セレブの座から転落した」という現実を素直に飲み込めず、無一文になってもファーストクラスに乗っちゃったりする。すでにアラフォーなのに「これから大学に通って何か勉強して手に職をつけるわ」と本気で思っちゃったりする。それが無理とわかると今度は金持ちの男と再婚するためにさまざまな嘘をつく。そうやってどんどん現実から乖離していくわけです。
ジャスミンの気持ち何となくわかると思う方、手を挙げてください。はい午未の五黄グループはほぼ全員手が挙がりました。そう、みなさんの2014年のお題は「身の丈に合った生活をする」でしたね。
実践できましたでしょうか? 変なプライドからいらぬ見栄を張ったり、嘘をついたり、わがままや自己顕示から「自分が、自分が」としゃしゃり出たり、心配してくれる身内を邪険に扱ったことはなかったでしょうか。
その結果「長く伸びた鼻をへし折られる」「みんなからスルーされる」「まさかの大敗」「権力を失う」「しなくていいことをするはめになり、深く疲れる」などの報復に見舞われた方も少なくなかったのではと思います、お疲れさまでした。
本来の星まわりならば2014年は自尊心やプライドがいいほうに作用してとんとん拍子に出世できたでしょうが、ここ宇宙ではそれらがみな逆作用を起こしてしまうのです。
でもだいじょうぶ、2015年は心理的な緊張状態が少しゆるみ、現実を見つめるゆとりが生まれるでしょう。副交感神経が優位になれば、頭痛や肩こり、便秘なども改善されてくるかと思います。

はい、ここでしばらく休憩をはさみます。ご用のある方は今のうちにお済ませください。
小腹の空いた方にはハムきゅうサンド、イカめし、干しいも、冷凍みかんなどのほか、各種温かいお飲み物もご用意がございます。ワゴンを押しておりますお近くのCAまでどうぞお気軽にお申し付けくださいませ。
また船内は禁煙でございます、どうしても吸いたい方は船外でと申し上げたいところですが、ヘルメット内に煙が充満して大変危険ですのでおやめになったほうがよろしいかと思います。
それにしましても、この宇宙船にお乗りいただいてから早や1年がたとうとしております。あっという間ですね。みなさん、乗り心地はいかがですか?
はい一白の大門さん、もともと静かなのが性に合っているのでここはむしろ快適な環境、ですか。はい三碧の新馬場(しんばんば)さん、船外活動ユニット(EMU)を装着して宇宙空間を飛び回るのがスリリングで楽しい? よかったですね、でもたまに宇宙ゴミが高速で飛んできますのでご注意ください。
宇宙ゴミが頭部や胴体を貫通してものすごいお姿になる方がまれにいらっしゃいます、時間がたてば自然に再生されますけども、お鏡を見たときにギョッとしますのでどうぞお気をつけくださいませね。
あちらに地球が見えますね、明るく青く光り輝いております。もの言わぬ暗黒の大宇宙の片隅にあんな美しい星があるなんて、奇跡としか思えません。どうぞみなさん娑婆で身についた厄をこの大宇宙ですっきりふるい落とし、軽々とした心と身体になってふるさとへ戻られますように。
・・・・・・はい、お時間です。ミーティングを再開します。
★午未の六白金星さん、はい。
ああ、情けない顔をしておられる。財布がすっからかんですね? はいその通りと。2014年、みなさんに与えられたお題は「お金の使い方を再学習する」でした。
午未の六白は「大きく稼いで大きく使う」というダイナミックな金運をお持ちですが、天中殺期間に限っては「カンが狂う」「血迷う」「タイミングを間違える」などの凶作用により、損害を受けやすくなります。
ギャンブルで財産を失った方、買い物依存症でカード破産しそうな方、金利のバカ高い借金で首の回らなくなった方もいらっしゃるかもしれません、お疲れさまでした。
あのねギャンブルってそもそも儲からないようにできてるんです、儲かるのは胴元だけですよ。
カード払いは財布から現金を出さないので喪失感が薄いですけど、えっこんなに、いったい何に使ったのオレとあとで明細見て愕然としますよ。
借金はお金を買うこと、お金を買うための金利ってものすごく高いのご存じですか。
じゃあどうすればいいのか。
①必要なぶんのお金は最初に袋に小分けして取っておき、残ったお金でやりくりする、②カードは持たず現金主義、③よけいなお金を持ち歩かない、④安易にローンを組まない、⑤住宅ローンはまめに繰り上げ返済する、⑥空腹時にスーパーへ行かない、⑦スーパーの安売りサイクルを知って底値買いをする、⑧遊びに行くとき、外食するときはクーポンを利用する、⑨ネットで安易にものを買わない、⑩流行りものの新製品に飛びつかない。
古くさいと思われるかもしれませんが金銭感覚にアナログもデジタルもありません、以上の10ポイントをできるだけお守りくださいますように。
人間の幸せは衣食住に支えられていますのであまり切り詰めるのもいかがなものかとは思いますが、「ちょっと待て 三日たったら買いに行け」「それ買って ホントにいいのか深呼吸」「買ったなら 返品不可です生ものは」などと心して、急降下している金運に歯止めをおかけください。
2015年は、停滞していたものごとが動き出します。今までの不本意な状況が押し流され、新たな希望が生まれてくることでしょう。
★午未の七赤金星さん、げげっ。
松葉杖に車いすに包帯ぐるぐる巻き、三角巾で腕吊ったりギプスをはめた首がグラグラしてる方もいらっしゃいますね、野戦病院かここは。
はい、2014年のお題は「健康管理に気をつける」でした。
リビングのソファでごろんと横になり、みかんでもむきながらのんびり連続ドラマを見るのが大好きな午未の七赤さんにとって、2014年は多忙をきわめるストレスフルな年でした。
片付けねばならない仕事や家事、育児、介護などがどっと山のように押し寄せてきて、それはそれは大変だったのではと存じます。どうしてこんなことが一気に起こるの、想定外の出来事ばっかり、ああどうしてあたしだけこんな目に。
気力体力があるうちはいいですけど、疲れが溜まってくると集中力がなくなるんですよね。仕事の企画書書いてるつもりがいつの間にかヘブライ語で悪魔召喚の呪文書いてたとか、せっせと幼稚園のスモック縫ってるつもりが出来上がってみたらポッケつきのカフェカーテンになってたとか、ときとして自分でもよく理解できない奇怪な現象に遭遇したのではないでしょうか。
こわいのは疲れから事故を起こしちゃうことです。もうろうとして歩いてたら電柱にぶつかっちゃったとか、夢うつつで階段を駆け下りたら踏み外しちゃったとか、館林ICで降りようと思ってたのに気づいたら佐野SAで仕方ないからそこでラーメン食べちゃったとか、もう全然しゃれになりません。お疲れさまです。
今年ケガや体調不良に見舞われた方は、まず身体を癒やすことに専念いたしましょう。健康診断をまだ受けていない方は医務室で申請してください、まだ間に合います。
ストレスの多い環境でじっとガマンしてると免疫力が低下して病気に罹りやすくなることをご存じですか? 宇宙船の窓から地球をながめながら「自分はあそこの環境でこれからもずっと元気に生きていけるだろうか」と各自自分に問うてみてください。答えが「否」なら来年は環境を変えましょう。
2015年は人生の模様替え大吉です。いろいろ改善策を練ってみてください。
はい七赤の千駄木さん何でしょう、「でも天中殺期間は下手に動かないほうがいいんですよね?」。
いいえ、そんなことは全然ありませんよご心配いりません。ご自分を守るための引っ越しや転職、離婚、通院、手術などにおいては何の差し障りもございません。
出産も厄落としになります。ご自身の生死を賭して命を分け与えるのですから。未年生まれの赤ちゃんは気がやさしくて力持ち、親思いの孝行者。協調性があり、みんなからかわいがられるので将来はお金にも困りません。お父さんお母さん自慢の息子さんや娘さんになることでしょう。
ただひとつ、天中殺期間に重大なイベントを決行いたしますと、平常時よりミスや手違いが多くなりがちです。慎重にことを進めるのはもちろん、ここ一番の大事な局面では、信頼できる第三者に同席してもらえば安心ですね。
また天中殺期間に会社を辞めた場合、「再就職口が見つかりにくい」「すぐに再就職できたとしても同じトラブルが起こりやすい」と覚えておかれますように。転職、再就職はできれば天中殺明けにスタートされることをおすすめいたします。
★午未の八白土星さん、はい。
さえない顔、不満そうな顔、不機嫌そうな顔が多ございますね。感情をめったに表に出さない午未の八白も、さすがに天中殺はこたえますか。
みなさんの2014年のお題は「過去と折り合いをつける」でした。
掘り起こしたくない過去、二度とお目にかかりたくない過去、できれば誰にも知られずに永久封印したい過去。ええもちろん誰でも保管してます、保管してますけど平常時は保管庫のドアにロックがかかってなかなか出てきません。
しかし天中殺に入りますといとも簡単にロックがはずれ、最も忌み嫌う過去が時空を越えて「清算お願いします」とあなたのもとにやって来ます。
「あっ今日から中途入社の四ツ谷さん、四ツ谷さんですよねああやっぱり。私、昔おつきあいさせていただいてた下神明です覚えてますか? ふふふ鼻をちょっといじったからわからないかな。あの嵐の夜、一方的に罵詈雑言浴びせられてふられちゃったけどあれ別に私が悪かったわけじゃないですよね? ですよね。その後すぐ蒲田さんと結婚したって聞いてますけど今幸せですか? 幸せなんですねうふふふ。ええ、私ここの支店長。よろしくね」
「あっお帰り、遅かったね。うん、屋上から窓ガラス開けて侵入しちゃった。貢いで貢いで捨てられた田無です。ボク一文無しになってパパとママからさんざ叱られて勘当されちゃったの、キミのせいだよ。さっきからずうっと頭の中でヘドバとダビデの『ナオミの夢』が流れてるの、ねえ成瀬さんお金返してほしいんだけど総額1億5千万円。今さら無理? そうかあ、じゃあ今日からこのマンションに棲まわせてもらうよ、湾岸のタワマン最上階だから夜景がきれいで気分いいなあここ。 ね、おなか空いたから肉でも焼いてくれない? さっき冷蔵庫のぞいたらいいお肉入ってたよ」
そのような感じで過去が追ってくる、ふり払ってもふり払ってもターミネーターのようにしつこく追いかけてくるわけです。お疲れさまです。
こりゃ逃げてもダメだとそろそろお気づきの方もいらっしゃるかと思います、ね、自分でまいた種は自分で刈り取らなければいけません。午未の八白は「因果応報」という言葉を噛みしめながら、清く明るく誠実に過去の清算に励まれますように。
2015年も引き続き眉間にシワ的な状態がしばらく続くかもしれませんが、だいじょうぶ、明けない夜はありません。相田みつを詩集「にんげんだもの」が本宇宙船の書庫にございます、ご一読されたい方はのちほどCAまでお申しつけくださいませ。
★午未の九紫火星さん、はい。
見た目に何の変化もなくいつもと同じようにおすまししていらっしゃいますが、午未グループの中で最もダメージがきついのはもしかするとみなさんかもしれません。
はい、みなさんに与えられた2014年のお題は「孤独とドライブ」でした。
午未の九紫は本来一人でいるのがイヤじゃありませんし、むしろご自分独自のナイーブな世界に他人がずかずか入り込んでくるのをきらい、それがために人を退け、「人ぎらい」と称されることもあります。他の方々とは異なり、生きることにおいて独自のルールや美意識をお持ちなのです。
しかし一方で、とても寂しがり屋です。このグループは愛する人、大好きな人、信頼できる人がそばにいないとたちどころにしおれた花のようにぐんにゃりしてしまうという特性があります。
人が寄ってくるとこれ以上近寄るなと邪険にするわりには甘えん坊で人懐こい面もある。いわゆる「猫みたい」とか「ツンデレ」(あるときはツンツンし、あるときはデレデレ甘えてくる。その差が極端に激しい人のこと)などというやつです。「その落差がたまらない」と萌え悶え憧れる方々が、ときにファンクラブとか崇敬会とか秘密結社などをつくるわけです。
しかし天中殺期間に入りますと、地球上でのみなさんの存在感は非常に薄くなります。なにせ肉体は地球で魂はこの大宇宙にありますから、肉体になんとなく新鮮な生イカのような透明感が出てくるといえばわかりやすいでしょうか。
「二俣川さん、あれいないや。ご飯誘おうと思ったのに。じゃあ鴨井さん一緒に行こうよ、駅前においしそうなイタリアンできたんだ」
二俣川さんは鶴ヶ峰くんの真後ろにいたのですが、影が薄いので気づかれなかったのですね。
2014年、午未の九紫のみなさんは透明人間になってしまったかのような不安感、ハブられたのではないかという恐怖感、みんなが私をスルスルスルーするという絶望感に支配されていたのではないでしょうか。お疲れさまです。
でも、その現象は一過性ですのでどうぞご安心くださいませね。
2015年は降り続けた雨も上がり、ところどころ晴れ間が見えて空が明るくなってくるでしょう。助手席に乗っていた「孤独」という魔物はいつしかいなくなり、かわりに「希望」という名の子猫ちゃんがちょこんと座っている、そんな感じになるかと思います。
はい、以上でミーティングを終わります。予定時間よりだいぶ長引いてしまいました。
何かご質問はありますか? しーん。・・・・・・みなさん相変わらずお静かですね、軽く寝息を立てている方もいらっしゃいます。
船は順調に運航しておりますが、この先宇宙酔いなどでご気分が悪くなりましたり、不安や心配で胸がおしつぶされそうになりましたときは、どうぞご遠慮なくわたくしたちにご相談くださいませ。
気を紛らわせるのに役立つリリアン編みのご指導、囲碁のお相手、そば打ち教室、写経会、聖書の読み聞かせなど、楽しいリラクゼーションプログラムを各種ご用意させていただいております。
あっ申し忘れておりました、最後になりましたが船長からみなさんへ大切なメッセージを預かっております。ええと、これだ。読み上げます。
「午未のみなさん、天中殺期間だからと下を向かず、あきらめず、投げやりにならず、いつも通りあなたらしい人生を楽しんでください。そしていついかなるときも、あなたの奥にある知恵と底力を信じてください」
とのことです。
それではみなさん、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。またお目にかかりましょう。
Good Luck、Thank you。
(CA一同、礼)
運転手

葬儀に参列。
僧侶の読経から始まって弔辞、弔電の読み上げ、参列者の焼香と続き、約二時間で式が終了。
出棺前、参列者が棺の周囲に集まってめいめい花を手向ける。
「ありがとう」
「さようなら」
「また会おうね」
棺の中が真っ白いユリやランの花、菊、オンシジウム、極楽鳥花などでどんどん埋まっていく。花に囲まれて眠る故人の顔にもはや煩悩はない、ただやすらかに横たわっている。
出棺。一同、マイクロバスに乗り込む。
ほわんとクラクションを鳴らして寺を出発、故人の家のそばをゆっくり通り過ぎ、海沿いの道をしばらく走る。
ちょうど8月のお盆どきで空は青く澄んでいるものの、前日にひどい雨が降って土砂が海に流れ込み、本来はブルーのはずの水が部分的にコーヒー色に染まっている。遠目に見ると、ものすごく大きな陰陽の太極図を描いているようにも見える。
すごいねえ、海があんなふうになっているのわたし初めて見た、それにしても今日は暑いね、こんなに暑くなったことなんか今までないよねえ、あっよしおちゃんおなかすいたの、あっちに何かお菓子あると思うよなどと会話が飛び交うなか、バスは海辺を離れてゆっくり丘の上の火葬場に向かう。
火葬場では小柄な職員がバスの到着を待っていた。初老の彼はタクシーの運転手がかぶるような白い制帽をかぶり、礼服の上に白衣をまとい、両手に白手袋をはめている。
あの人はね、ずーっと昔からここにいるベテランなんだよ。
そう聞かされてその職員を見ると、微笑みと憂いを同居させたような、柔らかさと剛毅さを兼ね備えたような、観音さまと不動明王を足して二で割ったような、何とも言えない不思議な顔つきをしている。
棺が台車に乗せられ、そのままするすると炉内にスライドして収まり、扉が静かに閉じられる。
扉の前で職員が脱帽して合掌。
その瞬間、あ、この人は故人をあの世へ運ぶ運転手なのだと気がついた。
「お世話になります」と素直に乗り込む客ばかりとは限らない、「もう少しあれをやってから」とだだをこねる客、「あっちへ行くのはまだ早い」といやがる客、「絶対無理!」とかたくなに抵抗する客などいろいろいると思うが、いいんだよ仕方ないんだ、みんないつかはこうなるのさ、それが決まりなんだよとおだやかにときにきびしく諭しながら目的地へ連れて行くのがおそらく彼の仕事なのだろう。
点火して焼き上がるまで2時間あまり。配られた弁当をつつき、茶を飲み、じっと座ってスマホをもてあそぶのにも飽きたので、待合室を出て広大な公園墓地へ散歩に行く。
・・・・・・かゆい。
ヤブ蚊に食われた肌をぼりぼり掻きむしりながら、南中している太陽の下を汗だくで歩く。あまりにも暑すぎるので何も考えられない、単調に並ぶ灰色の墓石群をぼんやり眺めながらただ歩くのみ。
彼方にそびえる緑の山の頂上を見やると白い巨大風車が建ち並び、くるくる静かに回っている。
風が吹けば回るし、風がやめば止まる。仕組みはシンプル、ただそれだけ。
のどが渇いたので控え室に戻り、生ぬるい茶を飲んでぐんにゃりしていると、みなが立ち上がり始めたので自分も立ち上がる。焼き上がったのだ。
台車の上にはほかほかの白い骨。
箸を渡され、骨を拾う。力を入れると粉々に砕けるのでそっとつまみ、骨壺に入れる。そういえばその昔「骨まで愛して」という歌があった、あれはすごい歌だったんだなあと思う。
白い制帽の運転手はのど仏を拾い、手際よく骨壺に収めている。
収まるべきところにすべてが収まり、骨上げ終了。
お疲れさまでした、では戻りましょうかとみなでバスに乗り込む。
日が少し西のほうに傾いても、相変わらず暑い。セミがみんみん大合唱するなか、ブルルンとエンジンがかかる。そうだ、あの運転手はどうしただろうと振り向くと火葬場にはもう誰の姿もなく、何ごともなかったかのように白々としている。
バスが静かに坂道を下り始める。うたたねから揺り起こされるような中途半端な気分になる。海はやっぱりコーヒー色に濁ったままだ。
老猫神(ろうねこしん)

春のお彼岸は温泉にでも浸かりに行くかと伊豆旅行。
午前中に車で出発して途中道の駅でカニのスパゲティ食べてロールケーキ食べてカフェオレ飲んで海に面した崖上の宿にすんなり到着、見渡す限り海・海・海の客室に案内されてぽかーんとしていると20代前半のかわいい仲居さんが「あのうお夕食は六時でよろしいですか」と聞いてくる。満腹だったので「七時で」とお願いする。
腹ごなしに散歩でもと旅館を出て急な坂道を下り、海に向かう。
蛇行する細い坂道をうねうね歩いて行くと、そこかしこに猫が一匹、また一匹。あちこちに猫がいる。熱川温泉猫まつりである。いちご摘みならぬ猫摘みじゃあっとそばに近寄るとみな蜘蛛の子を散らすように逃げていく。誰か友達になってくれえと駆け寄るも全員にぷいとそっぽを向かれて途方に暮れる転校生のような気持ちになりながら、そのまま歩き続ける。
熱川温泉はその昔、傷ついたサルがお湯に浸かって傷を癒やすのを見た太田道灌(=江戸城を築いた室町時代の武将)が開湯したと伝えられる由緒ある温泉である。泉質はなめるとほんのりしょっぱい無臭の塩化物泉で、創傷、皮膚病、筋肉痛、リウマチ、冷え性などに効果があるとされる。
海のそばにはかまえのいい立派な旅館がずらり建ち並び、源泉を汲み上げる櫓からは湯煙がもうもうと噴き上がっている。
しかし、なかには廃墟と化した物件もある。
うわあまだ真新しくて立派なのになぜそこ廃墟、つぶれた理由は何なのかと一生懸命建物を眺めるがさっぱりわからない。仲居が全員クセ者だったのか、料理長の味付けが奇妙だったのか、あるいはオーナーが突然俗世を捨てて仙郷に入ったのか。
順調にまわっていれば今ごろガラスを張り巡らせたロビーの向こうにはたくさんの観光客がひしめき、その間を仲居が忙しく駆け回り、展望露天風呂では子どもや大人のにぎやかな声がさざめいていたのではないかと想像する。
誰もいない大旅館は食べるものがなくてドカッと倒れ、そのまま息絶えたティラノザウルスのようだ。
浜辺に到着。2001年宇宙の旅に出てくるディスカバリー号にも似た大島を彼方に見やり、砂浜にしゃがんで打ち寄せる波に両手を浸して人差し指をぺろっとなめると塩辛い。
海水はなぜこんなにもしょっぱいの、あっそうかこの世に生じたケガレを祓い清める役割があるからだ、大地から流れてきたケガレの毒性をその強い塩気でもみ消し、寄せては引いてを繰り返しながらその厄を遠い遠いどこかに流し去るのだ、海と陸の比率は海70%で陸地30%、やっぱりそれくらい広くないとこの世の厄は消化できないのか、地球とは実に巨大な自浄装置なのだなあなどとぼんやり考えながら遊歩道に上がる。
人気のないベンチが等間隔で並んでいる。そこに大きな老猫がぽつんとうずくまっている。
一年間雨ざらししたような色つやのないボサボサのクリーム色の被毛の猫はこちらが接近してもびくとも動かず、ただ固く目を閉じて肌寒いベンチの上で置物のように丸まっている。
死んでいるのか、いや腹がスーハーしているので呼吸はしている、じゃ具合でも悪いのかとそっと猫の隣に座ると頭やら背中やらがところどころ傷ついてハゲている。
満身創痍だなお前、昔は蝶よ花よとモテたのに今はひとりぽっちの廃旅館かとつぶやきながら頭や肩にくっついたゴミやホコリをはらってやるとおもむろに立ち上がり、人の太ももの上にどかっと乗って大きな身体を小さく丸めて寝の体勢に入った。
妙に人懐こいな、しかもヘンに身体が温かいぞ 熱でもあるんじゃないのかと少し心配しながら膝上の猫を三十分ほどなで続け、猫が体勢を変えようと立ち上がった瞬間にじゃあねまたねこれから自分は風呂に入って夕飯を食べねばならないからねと後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った。
振り返ると猫はこちらに一瞥(べつ)もくれず大あくびをして、寒そうにぶるっと震えてからまたベンチの上で丸まった。
また会おうぜくらい言ってくれてもいいじゃんかさっぱりしたやつだなあと思うが相手は猫である。
温泉街に入ると古びた射的場があり、親子連れが静かに遊んでいる。反対側にはシャッターの降りた店舗、そこにライオンのようにふさふさたてがみの生えた茶色い猫がいる。たぶんペルシャと日本猫の雑種だ。
いい毛並みだねえとそばに寄っていくとタヌキほど太いしっぽをピンと立てて甘えてくる。かわいこちゃんだねよしよしよしよしと夢中でなでまくっていると建物の奥から今度はキジトラの日本猫が登場、小さいけれどぷっくり太っているのはもしや出産間近なのか。
かわいいねえと声をかけるとぬにゃぬにゃとヘンな声を出して積極的に甘えてくる、ちょっと前までとは打って変わって両手に花いや両手に猫のハーレム状態、まるで複数のキーボードを操るスティービーワンダー、気分は孤独な転校生からモテモテの転校生へと百八十度反転している。
このモテぶりはもしや、
スティービーワンダーの名曲「迷信(=Superstition)」のリズムで二匹の猫の尻をかわるがわるたたいているうちに気づいた。
あのベンチにいた老猫の所業ではないのか。
三次元の世界ではぼろぼろの老猫に見えるが実はあれは猫神、一般猫の頂点に立つ特殊な神通力を持った老猫神であり、「あのアタマ天パーの人間は猫好きみたいだからそばを通ったらかまってやれ皆の衆」と配下に指令を出したのではないか。
ふと見ると通りの向こう側でも黒猫の親子がじっとこちらの様子をうかがっている。うわあ猫集団の攻めの布陣が徐々に狭まっている、このままここにいると三百六十度を囲まれて脱出が困難になり「お夕食は七時というたじゃろうがお客さん」とかわいい仲居さんから冷たい目でたしなめられるに違いないと恐ろしくなり、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。射的場では相変わらず親子連れが静かに遊んでいる。
崖上まで延々と続く急な上り坂を見上げ、ため息をついてから意を決して踏み出す。振り向くと魔法のように猫が消えている。ひじから下は猫の毛だらけ、熱川温泉猫まつりに参加したあかしである。



