2009年もあとわずかなので、家中の古いお守りをかき集めて氏神へ納めに行く。
年の瀬は空気が澄んで、風がひゅうと骨にしみる。小柄な少女が向こうからパタパタと走ってきて、ヒョッと電信柱にしがみつく。目鼻立ちははっきりしているが、浮世離れした雰囲気でどこか普通ではない。よく見ると、ほおに黒い毛が生えている。
私がわきを通り過ぎると電信柱から離れ、来た道をパタパタと小走りに戻っていった。
誰もいない神社で参拝していると、真っ黒い髪を伸ばした黒いロングダウンコートの女がうしろで順番を待っている。ついさっきまではいなかった。
参拝を済ませ、せっかくだから街へ足を伸ばそうと駅へ向かうと、携帯電話を耳に当てている若い男が左隣にいる。目は右斜め上30度をぼんやり見つめ、横断歩道をふらふらと右斜めに横切る。
五分刈り、左右の眉はつながるほど濃く、まつげが異様に長い。何かに引っ張られるように、体を右側に傾けて歩いている。ぶつからないよう、そっとよけて歩道を渡る。
不思議なことに、なぜか毎年、年末年始になると人間のようで人間でないもの、つまり「妖怪」が街中にひんぱんに現れる。古い気と新しい気が大きく入れ替わるときのどさくさにまぎれ、ひょっこり遊びに来るのだろうか。
おしなべて妖怪はおぞましいようなでも憎めないようなアンバランスな雰囲気を漂わせており、かわいらしくそしてどこか哀しい。
駅前にはカートを引きずる人々の群れ。
ああそうか、妖怪たちも今、こちらに帰省中なのだなと気づく。
2009.12.29