カメ

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 葛西臨海公園へドライブ。
 日当たりのいいオープンカフェでのんびりコーヒーを飲んでから、東京湾に浮かぶガラスドームの水族館へ向かう。
 エスカレーターを深く下ると、薄暗い空間が広がっていた。通路のところどころに水槽が設けられ、天井にはライトが吊され、その下でさまざまな魚が泳いでいる。サメ、ウツボ、マグロ、キンメダイ・・・・・・。ここは海の中につくられた水族園なのだ。
 不思議な空間だなあと思いつつ、ぶらぶら見物。

 銀色のマグロの群れが泳ぐ大水槽の前で、しばし足を止める。
 マグロの体の向きはみな一緒、同じようなスピードで同じようにぐるぐる円を描いて泳いでいる。
 みるで人間みたいである。
 泳いでいる最中、強そうな魚が弱そうな魚をどついたり、たまにどつかれ返されたりしている。まんま、人間社会である。

 別の大水槽には、ブルーの体に黄色の背びれと尾びれが美しいウメイロモドキ(スズキ目タカサゴ科)の群れ。この中に、ぽつんとカメがいた。
 カメは、ウメイロモドキの描く軌道とはまったく無関係に泳ぐ。カメが行くところ、ブルーの魚の隊列がちりぢりに乱れる。カメはそんなのにかまわずいきなり急降下したかと思うと、今度は水面近くでふわあんと浮いている。

 好きだなあ、カメ。
 どの世界にも「群れ」と「流れ」はあるが、そんなもんに関係なく「個」として好き勝手に動き回るやつは見ていておもしろいし、かっこいい。
 がんばれカメ! 群れを蹴散らせ! 好きなように生きろ!
 ぶ厚いアクリルガラスに手を当て、私は夢中でエールを送る。もちろんカメはそんなの知ったこっちゃない、ただ自分の好きなように進んでいる。

2010.02.24