窮屈な記憶

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 私は過去の出来事をすぐ忘れてしまうたちなので、「去年の今ごろ、何をしていましたか」と人から聞かれてもすぐには思い出せなかったり、記憶そのものが消失していることが多い。しかし不思議なことに、生まれて間もないときのことは鮮明に覚えている。
 
 私は全身を何かでぐるぐる巻きにされて、とても窮屈だった。手足を自由に伸ばしたいのに、まったく動かせない。そして「ああ、またか」と絶望的な気分に襲われた。 

 全身に布をきつく巻き付けられたロシアの赤ん坊が何人もベッドに寝かされている映像を、以前見たことがある。

 不快な記憶がよみがえり、鳥肌が立った。 
 窮屈な衣服を身につけること、波長の合わない他人と一緒にいること、いやいや集団に属することは、「束縛される」という意味ですべて同じだ。自分の意思に反して束縛されるほどいやなことはない。

 ピュアな魂は、ただでさえ肉体に押し込められて窮屈な思いをしている。だから赤ん坊はよく泣くし、敏感な人間はしばしばゆううつになる。これは、何回生まれ変わってもたぶん変わらないだろう。

2009.04.29