寅卯天中殺のみなさんへ その3

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 さて、いよいよ卯年も残すところあとわずか1カ月となりました。
 耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んでいらした全国の寅卯天中殺のみなさん、お疲れさまでした。
「別にたいしたことなかったもん」と泣き顔で唇を噛みしめる人から「イヤイヤイヤーッ、もう二度と体験したくないぃーッ!」と絶叫してる人まで人生いろいろと思いますが、はい、この宇宙旅行ももうすぐ終わりますので、どなたさまもそろそろ帰還準備のほうお願いします。 

 ああ、思えば長い旅でした。2010年寅年では天中殺に入ったという実感がまったく湧かず、いつものペースでガンガン突き進もうとしたらのれんに腕押しで「あれ? なんか変」と違和感を感じ、それでも寅卯天中殺はもともとパワフルだから力ずくで何とかやってきた。「がんばれば何とかなる」「ゴリ押し上等」が共通の合い言葉だった。
 しかし2011年卯年に入るとそうは問屋が卸さない、格段に状況がシビアになって三十六計が通用しない四面楚歌となり、「あ、こりゃダメかも」と焦燥感にとらわれてネットをさまよい歩いた末、このブログを偶然見つけたという方も少なくなかったのではないでしょうか。
 天中殺期間は自分の一番弱いところをつつかれます、たとえば金銭の稼ぎ方や使い方がズレている人は経済の流れがパタッと途絶えたり、他人とのつきあい方を間違えてきた人は「ぼっち」を痛感したり、心に負担をかけてムリにがんばりすぎていた人は心や身体にトラブルが出たりする。思い当たりますか?
 それって「その生き方そろそろ変えたほうがいいかもよ、いつまでもそういうの続けてたらしんどいじゃん」という天の声なんですね。
 そこで気づいてしっかり反省した人はいいけれど、天のアドバイスを見ざる言わざる聞かざるしちゃった人は、天中殺抜けてもまた同じトラブルに遭遇する確率150%、しかも3倍増しにスケールアップしたやつが襲ってくるから要注意、天中殺期間内の今のうちに気持ちと行動を改めたほうがいいと思います。
 あのね、「自分が昔から貫いてきたこの信条は間違っていない」とかたくなに思い込んでいることこそが、実はわりと正しくなかったりするんです。あなたがずっと頼りにしてきた人、頑固に守り通してきたルール、必ず実行してきた「定番のやり方」は、本当にこれからもあなたを幸せにしてくれるでしょうか? もしかするともうきっぱりやめたほうがよろしいかもしれませんよ、あっよけいなお世話ですか。

 みなさんお楽しみ中の宇宙旅行も残すところあとわずか1カ月ですが、2月3日の節分までにぜひ各自で履修しておいていただきたいことがあります。自分と自分を取り巻く環境の見直しと清算です。
 具体的な清算項目は次の通りです。
◆自分で「これ、間違ってるかも」とうっすら感じつつ貫いてきた考え方や行動
◆身体によくない生活習慣(食事や運動、睡眠、クセ等に関すること)
◆一緒にいて楽しくない人間関係、自分のためにならない人間関係
◆住んでいて全然楽しくない家
◆客観的に見てぼっろぼろの残念な家具や寝具や商売道具
◆1年以上使ってない物、なんか好きになれない物、使いにくい物
 もし思い当たる項目があれば、やめるなり縁を切るなり引っ越すなり捨てるなりして身辺をスッキリさせましょう。2年間の無重力状態から地球に帰還したときって身体が重くてしばらく思うように動けません、でも身の回りが軽ければわりとスムーズに時差ぼけから回復できると思います。

 その他の履修科目として・・・・・・、はいそこぼんやりガム噛むの止める、・・・・・・ええと人にやさしくする。人にやさしくできるのは、孤独や不安や挫折感を自ら味わったことのある人だけです。
 この2年間に地獄の1丁目から88丁目まで巡り倒した寅卯天中殺のみなさんなら人の痛みがわかるはずですし、相手の話を静かに聞いてあげることもできるでしょう。
 今までブルドーザーみたいにライバルなぎ倒して人生突っ走ってきた人も、「勝たなきゃ生きてる意味がない」なんて豪語していた人も、天中殺明けには損得抜きで他人に寄り添うことができるようになるのですね。
 もともとダイナミックな思考とパワフルな実行力を備えた寅卯天中殺はトップを張る器をお持ちですが、そこにやさしさと思いやりが加われば最強の存在となりましょう。天中殺、経験してよかったですね。
 それから、何か新しい物をひとつ買っておく。あ、何でもいいんです。
 これから仕事でがんばりたい人は仕事道具、恋人つくるぞ! という人は自分を魅力的に見せる服や靴、結婚するぞ! という人は結婚予定があってもなくても結婚後に2人で使える食器やスリッパ、健康を取り戻すぞ! という人は明るい色のパジャマやシーツ。
 いずれにしてもこれからかなえたい夢をはっきりさせて、それにちなんだものを新調するといいでしょう。で、2月4日から使い始める。それらはすべて、あなたの強い味方になってくれましょう。
 そうそう、2月3日の節分には「福は内! 鬼は外!」のかけ声とともに豆をまきましょう。家をきれいに掃除してから、家の中心から見て鬼門(東北)のスペースから順に、時計回りにまいていきます。これ、最高の厄落としになります。

 これからの1カ月はやることがたくさんあって大変ですが、天中殺からスッキリ足を洗って気分よく新生活をスタートさせるためにも、きっちりやっておきましょう。
 娑婆に帰還されたのちはどうぞ本ブログ卒業生としての自覚と誇りを持ち、明るく元気に世のため人のため・・・・・・、あ、天から何かアナウンスのようなものが。ちょっと耳を澄ませてみましょうか。

 アテンションプリーズ。
 2年間にわたり広大な宇宙を旅してまいりました本宇宙船「寅卯号」は、まもなく舵を地球に向けて帰還態勢に入ります。地球到着予定は2012年2月4日卯の刻、予測される天候は雪のち晴れ、一面の白い雪に覆われたすがすがしい冬景色があなたをやさしく迎えてくれることでしょう。
 これから大気圏に近づくにつれ、突然船体が大きく揺れることがございます。船の運航に支障はありませんが、念のため、どなたさまも今のうちにしっかりシートベルトをお締めください。
 ご気分の悪くなられた方はお気軽にキャビンアテンダントまで、頭痛薬や吐き気止め、青竹踏み、フラフープ等のご用意がございます。
 それでは引き続き、着陸まであともう少し、快適な空の旅をお楽しみください。

 Wellcome to our Space Ship TORAU、and Enjoy Your 2012 Space Odyssey draw to the end. Thank you. 

 寅卯天中殺のみなさん、どうぞお元気で。また12年後にお会いしましょう。

2011.12.26

師走の銀座

 師走の日曜日に銀座を歩く。
 なんでこんなにたくさん人がいるの、あっちの道もこっちの道もぎゅうぎゅうじゃん、そうやっていちいち驚いていると空腹から胃がきりきり痛み出したので、あわてて目の前の喫茶店に飛び込んだ。軽く何か食べなくてはならない。
「いらっしゃいませ」
 満員だったがなんとか席が見つかる。
 やっぱり銀座の店はいいなあ、窓からのながめはきれいだしソファは革張りでふかふかだし店内もゴージャスで高級感たっぷりだ、しゃれた絵だって飾ってあるぜ。おっとお姉ちゃんありがとうクラッシュアイス入りのお冷やかい、しかし何だね店が高級だとメニュー表のしつらえも高級だね、革張りの重い表紙をどかんと開くとコーヒーとミニ茶菓であっ1500円、サンドイッチとかの軽食はうわっ単品で1500円から3000円、それにドリンクプラスすればがーんもはや最低でも2500円、下手すると4000円、これ何かの間違いですかと何度もページをめくり直すがもちろん値段が変わるわけもない。銀座一等地の喫茶店の価格設定は世界一といやが応でも認識する。
「お決まりでございますか?」
 イリュージョンで脱出する前に店員がやって来た。ふるえる人差し指でここここれください、このミニ茶菓ついてるやつと指さす。
「かしこまりました」
 ドキドキする心臓を無視してiphoneを取り出してフリックしたりタップしたりするがもしかすると銀座の3G(携帯電話回線)はパケ放題が通用せず特別価格なのではないかと阿呆な妄想をして恐ろしくなった。
「お待たせいたしました」
 オーダーしたものが運ばれてきた。ミニ茶菓はひとくちで胃袋の中、コーヒーは5分で飲み終わる。再び窓の外に目をやる。人がぞろぞろ歩いているだけなので5分で飽きる。
 このままがまんして座っていようか、いや時間がもったいない、まだ買い物が残っているからそうのんびりしてもいられないと思い伝票をつまんで席を立った。
 15分で1500円ということは1分の席料が100円かと無意味な計算をしてから、仕方ないこういう日もある、お前は銀座のど真ん中に流れる運気を15分間1500円で買ったのだと自分に言い聞かせて再び街に出る。

 薄暗くなり始めた銀座の街は徐々に人が減り始めて少し寂しい。縦横に整然と区画された街路には国内外の一流ブランドのビルが建ち並び、色とりどりのネオンを放って美しい。
 ここに流れる気は力強くて密度が濃く、キリッと筋が通ってすがすがしい、そして粋(いき)である。あまり不幸そうな人は歩いていない、若い夫婦も一人歩きの男も女も親子連れも老人もみなそれぞれの人生を楽しんでいるように見える。
 銀座という街はなぜここまで運が強いのか。
 皇居が近いからであろう。
 そこに龍が生息していなければ、江戸から現在に至る首都東京の、ひいては日本の繁栄はあり得なかったに違いない。
 400年前に家康が見つけて飼い慣らした龍は江戸城が皇居に変わっても生息し続け、鉄道や道路を通じてそのパワーを今もなお全国津々浦々へ流している。銀座は龍のお膝元、だから運が強いのだ。
 なぜ山手線は環状で、真ん中を通る中央線によって陰陽の形状を描くのか? 
 ・・・・・・龍を守るために違いない。
 龍はどうやってパワーアップするのか?
 ・・・・・・それは日本人の行動や心のあり方と深くシンクロするに違いない。
 龍の今のご機嫌は?
 ・・・・・・あまり芳しくないかもしれない、しかし龍は気分屋だから何かをきっかけにいずれ機嫌を直すだろう。
 そんなことを考えながら歩いていると、4丁目の交差点に出た。大通りに面した和光のディスプレイは白とゴールドで品よくダイナミックにまとめられている。「さすがだねえ」と感嘆したとたん「そうよ、だってあたし銀座のシンボルだもん」と言わんばかりにキーンコーン、カーンコーンと上から大きなチャイムが鳴り響いた。
 年の瀬に鐘が鳴るなり大時計
 龍も、かれこれ100年近くこのチャイムを聴いているに違いない。

2011.12.05