申酉天中殺のみなさんへ その2

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全国の申酉天中殺のみなさんこんにちは。
わたくし宇宙船申酉号のチーフCA、サルロット・トリックスター、略してサル・トリでございます。

宇宙船の乗り心地はいかがでしょう? ・・・多少揺れておりますが(ガクッ)飛行に影響が出るほどではありませんので(ガクガクガクッ)ご安心ください。(ドドドドドッ)
無限の大宇宙の旅を心ゆくまでご堪能いただいておりま・・・(拡声器を取り出す)、あのう二黒チーム、五黄チーム、八白チームのみなさん、屋内テラスで騎馬戦繰り広げるのはやめていただけますか他の方々のご迷惑になりますので。
え? なんだか無性にイライラする? うーん困りましたね、動いていないと不安に押しつぶされそうになる? うーんそうですか、早くここから出してくれ? そうですね、戻りたいですよね地球に、こんな何もない宇宙空間でぼんやり過ごすのはアクティブなみなさんの性に合いませんものね。
でももう少しがまん・・・あっ三碧チームと四緑チームがブラスバンド率いて威勢よく応援合戦始めちゃった、チアガールは九紫チーム、さすが九紫はダンスがキレッキレで見た目も華があるって東京六大学野球が開催される明治神宮野球場かここは。

六白チームはみなさん熱心にキーボードを叩いておられますね自分史でも書いておられるのでしょうか、さすが申酉の中で唯一「哲学的」と誉れの高い六白チームだけありますってなんや不動産転がしたときの粗利計算しとるんか、金儲けもほどほどにしなはれでございます。

床にぐったり倒れているのは七赤チームですか、え? 恋愛関係や人間関係、金銭関係がもつれにもつれて苦しい? うーんつらいかもしれませんがここはうみを出し切って銀河の彼方へ飛ばしちゃいましょう、中途半端に表面的な傷だけ治そうとするとあとでまたぶり返す元になりますからね。 

涼しい顔をしているのは一白チームですね、このチームは他チームにくらべるとややダメージが軽めかもしれません。「本人が気づいてないだけ」「基本的に脳天気」という説もありますがまあいいでしょう、本人が「つらい」と思えばつらくなり、「何ともない」と思えば何ともなくなるんですよね人生ってすべて気のせいです。

さ、みなさんようやくお席に着きました。
では、これから第2回船内ミーティングを始めます。

2016年立春から地球を離れ、みなさんにはこの宇宙船でお過ごしいただいておりますが、さてどんな一年でしたでしょうか?
「さんざんだった」「悪夢のよう」「呪われている気がする」「早く帰してくれ」「シシトウの塩焼きと砂肝とハイボールおかわり」。
はい、いろいろな声が上がりました。
しかし「ひどい目に遭った」ないし「今も遭っている」という方は幸いなのです、それは今までの行いの精算が無事にとり行われているということですから。「つらい」「苦しい」「もう無理!」は地球で生活しているときに付着した厄が浄化されているあかしと思ってください。
宇宙での開運の呪文は「逆境上等」「よろしく哀愁」「もう一度一から出なおします」。やりきれないときはこれらの言葉をそっと唱えてみてください。

こわいのは「今までとまったく変わらない」「地球を離れている気がしない」「むしろ元気」「このままずっと宇宙で暮らしたい」というケースです。
考えられる原因は2つ。
ひとつめは「浄化が進んでいない」、ふたつめは「変にツキが回っちゃった」。
前者は業が深い、つまりカルマを精算するのに時間がかかると解釈します。宇宙でうみを出し切らずにいつまでもため込んでいるとこうなることが多いです。
後者は逆転現象が起こったパターンです。
宇宙には重力がない、つまり歯止めになるものがありませんので、よくも悪くも運気が極端に転ぶ傾向があります。なので、それまで運気がよくなかった方が天中殺期間に入ったとたんグングン運気が上がるという現象が起こるわけですねいわゆる「バカづき」とか「運気バブル」とかいうやつです。
しかしこの場合、天中殺期間の終了と同時に伸びたゴム紐がバシュッと勢いよく縮んで自分に戻ってくるように運気が元に戻りやすく、けっこうな痛みも伴いますのでお気をつけください。

・・・はい、ここまでご理解いただけましたでしょうか。

窓の外をご覧ください、青い水の惑星が見えますね。あれが皆さんのふるさと・地球です。漆黒の闇の中で球体がパアッと明るく光り輝いておりますが、実はあの輝きはみなさんが放つ光の総体なのです。つまり私たちは一人ひとりが地球を輝かせる光というわけです。その光は一瞬消えても次の瞬間にはまた別の場所で点灯し、永遠に朽ちることがありません。

今すぐあそこに戻って続きをやりたい、オレがいないと会社が回らない、あたしが不在の間にパル香にシャコ吉取られちゃう、こんなところでぼんやりしてたら金儲けのチャンスを逃しちゃうなんてあせりやいらだちを感じておられる方はこの船内に少なくないでしょう、ですがもうしばらくご辛抱ください、みなさんの魂をきれいにクリーニングしてよりピュアに輝かせるためには、この大宇宙をもうしばらく旅する必要があるのです。
みそぎの旅は12年に一度の2年間、これは人類全員に平等に訪れますが、2016年の申年、2017年の酉年は申酉天中殺グループのみなさんの番なのです。

あ、ただ今船長からみなさんにメールでメッセージが届きました。さっそくご紹介いたしましょう。

一白水星の方、人に気を遣ったり同調するより先に、まずは自分を優先させてください。気の進まない二次会は笑顔でみんなの後をついていき、途中のY字路でそっと集団から離れて帰宅するといいでしょう。開運のコツは「よけいなことを考えない」「周囲に振り回されない」「自分の信じた道を行く」。
二黒土星の方、あなたはがんばり屋ですが、苦手なこと、不得手なことを無理にやる必要はありません。自分1人で何もかもやろうとせず、それが得意な人、その道の達人に任せて肩の荷を少し軽くしてください。
三碧木星の方、責任が重過ぎて腰痛や肩こりが悪化していませんか? サロンパスを貼る、ツボ押しグッズを使う、吉方位の温泉にのんびり浸かるなどして肩の力を抜き、もう少しリラックスしてください。
四緑木星の方、異性関係と金銭トラブルに注意しましょう。遠い昔から人間が身を持ち崩す2大要因は色と金、必死に追いかけると波乱が起きます。ここは涼しい顔でじっと我慢、子連れ狼の大五郎を見習いましょう。必死な顔つきの人から追いかけられたら脱兎のごとく逃げましょう。
五黄土星の方、流れに抵抗して疲れていませんか? ああもう好きにしてください勝手にやってちょうだいあたしゃまな板の鯉になりますから、あらチズ子さん上手にできたのね炊き合わせ、ううんとってもおいしい無味無臭でクセがないわあと。あまり自我や我欲を出さず相手に任せて好きにやらせとけ、そういう路線でいきましょう。
六白金星の方、スパッと大決断したくなりますが「自分の出す答えはたいていはずれる」、今の時期はそう思っていたほうがいいかもしれません。問題を解こうと頑張れば頑張るほど正解から離れていくでしょう。「しばらく様子見」が正解です。
七赤金星の方、一日のうち最も暗くて寒いのは夜明け前です。心細いでしょうが、あともう少し我慢すれば朝日が昇ります。だいじょうぶ、原始の時代から日が昇らなかったことはありません。大自然の力を信じてください。
八白土星の方、「頑張りが実らなかった」とがっかりする必要はありません、下手に実っていたら逆にそれがのちのち苦労の種になったかもしれません。それでよかったのです、終わったことはすべて忘れて手放してください。
九紫火星の方、気持ちはわかりますがあせりは禁物です。環境が整えばチャンスはまた何度でもやってきます。無理に自分から打って出るよりも、神さまがそっと背中を押してくれるまで待ちましょう。

・・・はい、お役に立ちましたでしょうか。ご参考になりましたら幸いです。
それではただ今からCAが各種お飲み物や軽食、スイーツなどを乗せたワゴンを押してみなさまのおそばにまいります。ご入り用の方はどうぞお気軽にお声をおかけくださいませ。宇宙限定モンキー柄・バード柄のおしゃれポーチ、各星宇宙人おすすめのクリスマスコフレ、写経・読経セット、六法全書などの販売も行っております。

早いものであちこちから年末の声が聞こえてまいりました、12月のイベントといたしまして冬至にはゆず湯、イブの夜はわたくしたちCAによるミュージカルショー「バーレスク」、大みそかは船内対抗紅白歌合戦、その後ご希望の方には小型宇宙船で宇宙に点在するパワスポ巡り初詣ツアーなども企画しておりますのでどうぞふるってご参加ください。

さあこうしている間にも時間は刻々と前に進みます、みなさんの悩みや苦しみも刻々と形を変えて喉元過ぎればおならになるだけ、どうぞこの貴重な宇宙旅行を無駄にすることなく、明るく元気に前向きにエンジョイされますように。

それでは引き続き、快適な空の旅をお楽しみください。次回ミーティングでまたお目にかかりましょう。
Good Luck、Thank You。

申酉天中殺のみなさんへ その1

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・・・ザワザワ・・・んこくの申酉天中殺のみなさんこんに・・・ガヤガヤ。
わたくし本宇宙船申酉号のチーフCA・・・ウッキーー!・・・でございます。
第1回目のミーティングが遅くなりましたことを・・・ガッシャーン!・・・詫び申し上げ・・・コーケコッコーー!!
ええいもういい加減大人しくしないと須弥山(しゅみせん)あたりにお住まいの三蔵法師さまにお願いして緊箍児(きんこじ=金の輪っか)をみなさんの頭にハメてお仕置きしていただきますよ!
 
しーん。

はい船内が水を打ったように静まりかえりました。
では気を取り直して最初から。
全国の申酉天中殺のみなさんこんにちは。
みなさんを捕獲もといご案内するのに通常の倍近くの時間がかかり、初回ミーティングが遅くなりましたことをお詫び申し上げます。

わたくしチーフCAのサルロット・トリックスター、略してサル・トリと申します。
後ろにずらりと整列しておりますのはCA界の猛者チーム、容姿端麗&頭脳明晰&腕力においても宇宙でトップクラスの強者ぞろいでございます。
(CA一同、一斉にボディビルの決めポーズ。)
「エネルギッシュな暴れん坊」「当たって砕けろの肉体派」「ふふふ営業は数字で結果出すのが仕事でしょう」の異名を取る申酉天中殺の方々をしっかりサポートするようにと選抜されましたわたくしたちが、これから2年間、みなさまのお相手を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします(CA一同礼)。

さて本船体は少々意匠を凝らした仕様となっております。こちらのロビーの天井に吊り下がっております幾多のミラーボールは夜時間になると妖しい光を放ちながら回り出します。備え付けのジュークボックスでお好きな音楽を流せば、寂しがり屋の申酉天中殺のみなさんのすてきな癒やしとなることでしょう。ジャズ、R&B、ロック、ラテン、エレクトロニカ、クラシック、民族音楽、社歌など各種取りそろえておりますのでどうぞご活用ください。
ロビー奥の舞台では月に1回、CA有志によりますゴスペルソングショー、ボディビル競技会、京劇「孫悟空」、中小企業診断士合格指導講座などバラエティ豊かな出し物を予定しておりますのでお楽しみに。

また、身体がナマるのがいや、じっとしているのが大の苦手、眠っているとき以外は何かしら動いていないと気が済まないというアクティブなみなさんのために、ターザンロープ、クリフハンガー、サーモンラダー、つかみどころのない超巨大のつるつる蟻地獄(いずれも落下したらブラックホール行き)などが随所に設けられたアスレチックスペースもございます。ご希望の方はどうぞご活用ください。

・・・ロビーのお席がちらほら空いておりますのは、今年から天中殺であることに気づかず未だ地球を彷徨っておられる方が少なくないためです。申酉天中殺の方は現実世界ひとすじに生きておられますので仕方ありません。
同じアクティブ派でも辰巳天中殺や寅卯天中殺でしたら経験を重ねるうち「あっもしかすると目に見えない世界も存在するのでは」とうすうす勘づく柔軟性をお持ちですが、みなさんの場合は「幽霊がホントにいるなら居住費とか住民税とか払わないとズルいじゃん」と現実に即した考え方をいたします。単細ぼもとい思考がシンプルなのですね。
・・・しかし残りの方もじきに本船に吸い上げられることになるでしょう。

ここにお集まりの方々はすでにお気づきでしょうが、みなさんは2016年2月4日から地球を離れ、本宇宙船でこの暗黒の大宇宙を旅しておられます。この旅は2018年節分まで続きます。
みなさんのお身体は地球上にホログラムのように投影されておりますが、実体つまり魂はここ無限の大宇宙にありますので、「頑張っても思い通りにならない」「人から誤解されたり、自分も勘違いが多くなる」「周囲から浮いたような気分がつきまとう」「マイペースをなかなか保てない」「何かと心細くなる」「ため息が多くなる」などの現象が起こりやすくなります。
また今まで限界を超えて頑張ってこられた方の場合、お身体にトラブルが出るケースもございます。それは「ここら辺でちょっと休んでみない?」という天のメッセージとお考えください。
特に申酉天中殺のみなさんの場合、体力の限界を顧みず「だいじょうぶ」「これくらいたいしたことない」「気力で乗り越えてやる」など、無理を押して仕事や家事に熱中しがちですのでお気をつけください。

健康はもちろん仕事でも恋愛でも人間関係でも無理は御法度、無理を通そうとするほどキツい反動が返ってくる可能性がございます。「天中殺期間は自然の流れに任せるのが一番」と生まれながらに体得している子丑天中殺や午未天中殺、天中殺期間であってもなくてもずっと宇宙世界で座禅を組みっぱなしの戌亥天中殺ならばそれほど大きなトラブルは起こりませんが、「人生とは現実との格闘技である」をモットーとする武闘派のみなさんの場合、少々リスクが高くなりがちですのでお気をつけください。

天中殺期間の災いを軽くする3大ルールをここで申し上げておきましょう。
ひとつ、利益を追い求めない。ふたつ、我欲を捨てる。みっつ、なりゆきに任せる。
・・・はいこの3つの言葉が大型スクリーンに投射されました、忘れっぽい方はメモをお取りください。
あ、窓ぎわの方から手が上がりましたはい何でしょう。え? 何が何でもロマ山課長のハートを射止めたい? そうですね、その「何が何でも」という姿勢をまずやめたほうがって言ってるそばからぴらぴらの勝負服着て船外に飛び出しちゃった仕方ないなあ。
はいそちらの方、会社興して巨万の富を稼ぎたい? うーんどうでしょう要は目的なんですよ目的、「人の役に立つため」ならいざしらず、「自分が儲けるため」ですと墓穴を掘る可能性がかなり高・・・って人の話聞く前にビジネスカバンつかんで行っちゃった、おーい張り切って地球に戻ってもじきにふんわりこちらに戻されますよーってまあいいか放っておきましょう。

みなさんエネルギッシュで何よりです、親分肌で情が深くて口八丁手八丁、楽しいことが大好きで細かいことにこだわらない申酉天中殺は天性の無法者もとい天性の愛されキャラ、どこか憎めないんですよねうらやましいです。

ご自分の置かれた状況に未だピンと来ない、何が何だかわからないままここにいる、ここにいると何かトクなことあるの? とキョロキョロしている方手を挙げて。
はいほぼ全員ですね、ええそれでよろしいのです、宇宙の旅はまだ始まったばかり、そのまま何事もないことをお祈り申し上げます。

はい、そろそろお時間です。今回はこの辺でミーティングを終わります。(CA一同礼。)
先ほど申し上げました3つのルールをどなたさまもしっかり胸に刻まれ、この宇宙旅行を明るく楽しく元気よく過ごされますように。そしてこの12年に一度の宇宙の旅が、みなさんにとって思い出深く有意義なものになりますように。

それでは、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。
次回ミーティングでまたお目に・・・みなさんアスレチックは順番を守って仲良くお願いしまーす、サル山さんバナナの皮は食べ散らかさないでゴミ箱にどうぞ、そちらのみなさんはギャレーの食べものに勝手に値札つけてネットで売らないでください宅配便はここまで取りに来られませんよ、トリ村さんは地球に携帯かけて不動産ころがしですかにぎやかだなあこの船、全員がもの思いにふけっていた午未号とは大違いです。

それでは次回ミーティングでまたお目にかかりましょう。
Good Luck、Thank You。

午未天中殺のみなさんへ その5

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全国の午未天中殺のみなさんこんにちは。
・・・もうすでにパッキングを終えられ、それぞれのお席にきちんとお座りいただいておりますね、さすが午未のみなさんは手際がよろしいです。

はい、わたくし本宇宙船午未号のチーフCA、午・未(うま・ひつじ)です。
2014年立春から始まりましたこの大宇宙の旅も、2016年の節分をもちましていよいよ終了となります。大変お疲れさまでございました。

いかがでしたか2年間に及ぶ大宇宙の旅は?
はいウマ谷さん「手強いトラブルに遭ったことで経験値が上がり、どんと来いな気分になりました」、ウマ十字さん「辛い別れがありましたがこれでよかったかもしれません、貯金できるようになりましたもの」、ヒツジヶ丘さん「耳の下が腫れておたふく風邪かと思ったらストレスから来る帯状疱疹でした。体調を崩してはじめて健康のありがたみがわかりますね」、メリーさん「いつもと変わりませんでした」。

はい、みなさんそれぞれ貴重なご体験をされたようですね。メリーさんのように「別に」「特に」「全然」と感じる方もいらっしゃいますのは、宇宙船午未号は大きな揺れが少ないからなのです。
寅卯号や辰巳号のようなジェットコースター級の急上昇&急下降&スクリュー回転もなく、ただひたすらおだやかに淡々と朴訥に飛行いたしますのが本船の大きな特徴と申せましょう。
運命学では「性格が運をつくる」と申します。「おだやか」「冷静」「動じない」などの気質を持つみなさんだからこそ、このような比較的起伏の少ない宇宙旅行となったのですね。

とはいえ、この宇宙空間とみなさんのふるさと・地球とでは環境が大きく異なりますので、ご自分でも気づかないうちに心と身体に大きなストレスがかかっていることと存じます。「全然だいじょうぶ」「たいしたことない」「あっけなくてつまんない」「なんならもう2、3周してやろうか」と思っても、ここはあまり無理をなさってはいけません。
地球の重力に慣れるまで最大約半年かかると想定して、帰還後はゆっくりじっくり心身をいたわりながらペースを取り戻されますように。無理やあせりは禁物です。

さて旅の記念といたしまして、これからCAがみなさんのお近くにワゴンを押してまいります。前のシートポケットにメニューパンフレットがございますので、よろしければご参照ください。
今月のおすすめは時間が後ろ向きに進んでまいりますジュエリーウォッチ「あの日に戻りたい」、有馬記念優勝馬の馬蹄をそのまま磨き上げたブレスレット「必勝」、羊毛フェルトの温もりがうれしいウォレット「紙食い虫」、「平常心」と筆書きされたネクタイちなみに「克己心」バージョンもございます、ウマとシカもといウマとヒツジのかわいいイラストがプリントされたTシャツ、「人徳・美意識・洞察力」の三つの単語が書かれた大判ショール、そして宇宙限定品の午未まんじゅう(こし、つぶ)など各種豊富に取りそろえてございます。
ご希望の方は遠慮なくCAにお声かけされ、空のショッピングをお楽しみくださいませ。

・・・さてみなさん、本船は地球帰還に向けて予定通り順調に運行しており、間もなく大気圏に突入いたします。シートベルトがきちんと装着されているかどうか、いま一度お確かめください。
またお手荷物などは前のお座席の下もしくは頭上の収納棚にお入れください。座席のリクライニングやフットレスト、前のテーブルは所定の位置にお戻しくださいますように。

窓の外をご覧ください、地球ではみなさんの帰還を祝福するかのようにライスシャワーが飛び交っておりますね、実はあれはライスではなく、節分の豆まきなのです。北東の鬼門方向から時計回りに「鬼は外、福は内」と叫びながら豆をまくことによって鬼が出て行く、つまり厄が祓われて清浄な空間となり、暦上で2月4日の立春から始まる新年をすがすがしく迎えようというわけです。

本日の気温は平年並かやや低め、全国的に厳しい寒さとなりそうです。・・・あ、ちらほら雪が舞っているところもありますね、地面が白一色に染まってとても美しいです。
花嫁が白無垢を着るように、白は原点の色であり、新しいスタートを切る色です。
これから地球で始まりますみなさんの新しい人生も、色で例えるなら白です。と申しましても単純な白ではなく、憂いを帯びたブルーやシルバーやグレーの上に塗り重ねられた白、重層的な深さと奥行きのある白、一筋縄ではいかない白、クールな気品が漂う凛々しい白です。

この2年間でみなさんとおつきあいさせていただくうち、みなさんの横顔や後ろ姿にある特別な「美しさ」が備わっていることにわたくしたちCAは気づきました。それは「孤独」に裏打ちされた美しさです。
「人間はひとりで生まれ、ひとりで死んでいく」という真実を生まれながらに悟っている強さ、賢さ、潔さをあなたがたはお持ちなのです。

午未のみなさんは、おのれの中に一本はがねの筋が通っています。ですから本当は繊細なのに、滅多に弱音を吐きません。苦しいときや悲しいときも安易に人を頼らず自分を律してバランスを保ち、やるべきことを淡々とやり遂げていく。困っている人が身近にいたら、自分のことをさておいて手を差し伸べる。責任ある仕事を任されたら、決して相手の信頼を裏切らない。
それが午未のみなさんの美学です。みなさんがいるからこそ、世の規律と品格と平和は保たれていると言っても過言ではないでしょう。

わたくしたちCA一同、みなさんとご一緒できましたことをうれしく光栄に思います。
どうぞ地球に帰還されてからも本船の卒業生であることを忘れず、自信と誇りと希望を持ち、光射す明るい道を背筋を伸ばして歩かれますように。

最後になりましたが、船長からメッセージがございます。ええとカードはどこでしたでしょう、ああありました。
「The Oscar goes to・・・ 」
このギャグ辰巳号でもやりましたね、アカデミー賞が近いものでつい。もとい。
「午未天中殺のみなさん、長い間お疲れさまでした。あなたが今まで我慢したこと、苦労したことは決して無駄になりません。それらは幸せという名の甘い果実に姿を変え、やがて天からたんと降り注ぐことになるでしょう。どうぞお楽しみに」

さて、ただ今をもちまして船内販売、船内オーディオサービス、映画上映サービス、軍艦ゲームのお相手を終了させていただきます。
これから船体が完全に停止しますまで、今しばらくお席に座ってお待ちください。シートベルト着用サインが消えましたら、どうぞゆっくり席をお立ちください。

午未天中殺のみなさんに幸いあれ。すてきな人生を。
それでは12年後にまたお会いしましょう。
Good Luck、Thank You。

午未天中殺のみなさんへ その4

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アテンションプリーズ、全国の午未天中殺のみなさんこんにちは。
宇宙船午未号にお乗りのみなさん大変長らくお待たせいたしました、これから第4回船内ミーティングを開催いたします。各自お手を休めてミーティングルームにお集まりください。

・・・みなさんスムーズにお集まりいただきありがとうございます。このあたりの大人な聞き分け、協調性、思慮分別において、午未のみなさんは他グループの追随を許しませんねさすがです。

はい、わたくしみなさまの旅のおともを務めておりますチーフCAの午・未(うま・ひつじ)と申します。どうぞよろしくお願いします。(背後にV字型にずらりと並んだCA一同、礼。)

2014年立春に本船にお乗りいただきましてからはや2年がたとうとしておりますが、12年に一度の大宇宙の旅、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

その前の2年間に搭乗された辰巳グループの方々におきましてはイヤだ信じられない一刻も早く地球に戻してほしいと泣き叫ぶ方、こんな暗黒の旅耐えられるわけないじゃんお前がかわりにやってみろと逆上なさる方、もういいです私ひとりで帰りますからと小型船に乗ったはいいけれど大気圏でバウンとはね返されて勢いよくUターンなさる方など日々アクシデントが続出し、それはそれはにぎやかで活気に満ちたアクティブなフライトとなりました。

しかし午未のみなさんにおかれましては実にクール、今このときにおいても泣き顔も怒り顔も逆上顔もなく、ただ愁いと哀しみを帯びた漆黒の目がぱっかんと大きく見開かれているだけ、その瞳の奥にはこの世の真実が鮮明に映し出されていることでございましょう。

午未のみなさんは「よけいなことは口にしない」「周囲に迎合せず孤高を好む」「ムダにあがくより流れに身を任せる」など悟りの美学をお持ちなので船内はいつも月曜日の博物館のようにしいんと静か、寅卯号のように勢い余って身体が壁にぶつかる音、辰巳号のようにそろばんをはじく音、申酉号のように麻雀牌をかき混ぜる音などどこからも聞こえてまいりません。

・・・相変わらずしいんとしておりますね、あのうみなさん起きてますでしょうか生きてますかあ、ああ一斉にこくんとうなずいた、安心いたしました。
はい、ではこれから九星別に点呼を取ってまいります。
呼ばれた方は挙手お願いします、気力体力が萎えて挙手がしんどい方はそのまま霧雨の牧場にたたずむ馬や羊のように放心していらしてけっこうです。

★午未の一白水星さん、はい。
2015年をひとことで言い表すと何でしたか? あっ一白の難波さん手が上がったはい「期待はずれ」、九条さん「不完全燃焼」、伝法さん「こっぱみじん」。
そうですねたしかに空回り感ひとり相撲感出る杭は打たれる感がありました、「あれ? こんなはずでは」、何回口にしたことでしょう。

せっかく地上に芽が出たのに遠慮なく踏みつけられちゃった感じ、茎が伸びたはいいけど大雪で埋もれちゃった感じ、それでも頑張ってどんどん伸びたけど結局ブルドーザーで整地されちゃった感じでしたね、お疲れさまでした。

しかしそれで人生が終わるわけではないのです。
2016年は周囲があなたの存在を認め、「あなた」という美しい花がきちんと咲くのに惜しみなく力を貸してくれるでしょう。

今ごろ地上では「あれ午一(うまいち)くんどこ行った、田端くんキミ知ってる?」「あっ日暮里課長、午一さん最近カゲ薄いんですよね実体のないホログラムみたい、呼びかけてもぼんやりしてるし、宇宙は寒いなんてたまに独りごと言ってるし、さっきは給湯室でゆらゆら揺れながらふきんをハイターにつけてました」「そういやもうすぐ午一くんの誕生日だったな、よし景気づけにサプライズパーティでもやるか、田端くん経費で生ケーキ注文しといて」「イチゴたっぷり盛った特大のやつですね承知しました!」みたいなやりとりがあちこちでかわされていることでしょう。

この宇宙船が地球に着陸してあなたが最初に目にするのは「ウェルカムバック トゥ ジ アース」のメッセージカードが乗ったケーキを持ってニコニコ出迎えてくれる同僚の田端さん、日暮里課長、その他同僚、友達、サークル仲間、家族、恋人の姿です。孤高で個人主義のあなたも「人間っていいなあ」と胸の底から温かいものがこみ上げてくることでしょう。
2016年は周囲の情や愛をひしひしと感じられるいい年になるでしょう、みんなあなたを応援してくれますよ。もう恐れることはありません、青空に向かってぐんぐん高く伸び、あなたならではの花を遠慮なく咲かせてください。

★午未の二黒土星さん、はい。
ああ人間関係辛かった、みなさんのお顔にはそう書いてあります。
この世で最も難しいのは人間関係です、だってみんなそれぞれ「生もの」ですもの。関わっちゃいけない人に関わった人、地雷を踏んだ人、最初は直径5センチくらいだった誤解の波紋が10キロくらいに広がった人、とうとう修復不能になっちゃった人、いろいろいらっしゃることでしょう。

宇宙旅行中にこじれてもつれてダマになる人間関係は無理にときほぐす必要はありません。苦労して努力して理解してもらおうと思っても徒労に終わるケースが多いからです。
たとえば未来の見えない恋愛、疑心暗鬼の友情、あなたを理解してくれない仲間、無理難題を押しつけてくる身内、愛より利害関係を優先する人たちとのおつきあいは、今のうちに銀河の彼方に廃棄しちゃっていいでしょう。
大丈夫、地球上には70億以上もの人がいます。つまらない知り合いと縁を切ったとしても、まだまだ数え切れないほどたくさんの人たちが存在します。宇宙人も加えれば出会いの数は無限大と言っていいでしょう。

人間関係を整理するうち、あなたの周囲を取り巻く垣根の風通しが良くなり、新しい人がわらわらとあなたのそばに寄ってくることでしょう。
「午二(うまに)さんはじめまして、あなたの腕を見込んでぜひお願いしたいことが」「午二さんですよね、よければお食事ご一緒しませんか」「五目うま煮に入ってるうずら卵はいつ食べますか」。

2016年のテーマは「去る者は負わず、来る者は拒まず」。よくも悪くもたくさんの人があなたに寄ってくる暗示です。ただし、相手がハンサムでも美人でも自己開示はあせらないこと。
たとえ垣根がスカスカで寂しくても、急いで親しくなろうとせず、ゆっくり時間をかけて相手との間合いを計りながら接してください。
人間関係の長続き度は、かけた時間に比例します。楽しく豊かな人間関係をコツコツ地道に築いてまいりましょう。

★午未の三碧木星さん、あっ周囲から圧力かけられてぺったんこになってる、のし餅みたい。
はい町田さん「自分は何も悪くないのに悪者にされてしまった」、登戸さん「出る杭のごとくたたかれた」、喜多見さん「周囲からハブられた」、下北沢さん「雪の朝の小田急線は着ぶくれラッシュでしんどいです」。

そうですかお辛かったですね、午未グループは基本的に我慢強いとされておりますが、三碧はストレス耐性がやや低めです。
「我慢するくらいなら逃げたほうがまし」と考えやすいタイプですが、この2年間は自分の四方をぶ厚い鉄の壁でバンバンバババンとふさがれ、逃げ場なしといった閉塞感を覚えていたのではないでしょうか。
でももうすぐそのついたてははずされますよ、急に視界が開けて一気に日当たりと風通しがよくなる感じ、洗濯物よく乾いて助かるわーな感じを満喫できるでしょう。

で、そのまましばらくじっとしていると広い砂漠の向こうからクリントイーストウッドとかショーンコネリーみたいな物わかりのよさそうなイケメンのおじ様がジープを運転してやって来るわけです。(注:あなたが男性の場合、シャーリーマクレーン、ジーナローランズなどいぶし銀のおば様に置き換えてご想像ください。)
「待った? ずっと見てたよ午三(うまみ)さん、よく頑張ってたね」
ニコッと笑うと目尻がシワだらけ、酸いも甘いも噛み分けた大人の素敵な年輪です。
助手席に座ってその人と一緒にドライブするうち、あなたのペタンコに押しつぶされた心と身体は元通りにふっくらふくらんでくるでしょう。

2016年の幸運の使者は「話のわかる目上」です。先輩、上司、ボス、年長者があなたをエスコートして、素敵な場所に連れて行ってくれることと思います。
目上に好かれるコツは「礼儀」「仁義」「忠義」「信義」「恩義」を忘れないこと。古くさかろうが時代遅れだろうがこの5つは世渡りの鉄板、どうぞ「義」の道をしっかり踏みしめ、ワンランク上の世界へ進んでください。

★午未の四緑木星さん、ああみなさん背中がまん丸です。
よほど責任が重かったのですね、頑張ったのに誰もきちんと評価してくれませんでしたと。後輩に仕事教えたけどやる気なくて全然ダメでした、むしろ煙たがられましたと。骨折り損のくたびれもうけでしたと。
肩の荷が重すぎたのでしょうか、うつぶせに倒れたままの方もいらっしゃいますね、えっ取り返しのつかないミスをしてもう立ち直れない? メンツ丸つぶれ?

よろしいじゃないですか一度や二度失敗したからって死ぬわけじゃあるまいし、失敗は成功の母、失敗がなければ成功もない、経験できるうちに何でも経験しておきましょうよ。
よろしいですかみなさん、宇宙旅行中に起きたミスやトラブル、ええーっ勘弁してくださいよ的な出来事はすべて「みそぎ」とお考えください。ええお清めための冷たい水浴びのようなもの、それを経験しなければみなさんの厄は落ちなかったのです。

なぜうまくいかなかったのか。何が原因だったのか。
毎回毎回同じこと繰り返してバカだなああたし。
そこを突き詰めていきますと、やがておのれのクセ、弱点、修正すべき箇所が見えてまいります。
そうしたら、あとは直していけばいいだけです。どうしても直らないなら「私はそういう人なのだ」と認めて受け入れればいいだけです。そうやって人はコツコツ大人になってまいります。

2016年は今までのストレスが癒やされて楽しい年になりますよ。神さまは試練ばかり与えません、みそぎ道場を卒業したあとはお楽しみの放課後タイムです。

ねえ午四(うまよ)、そんな一生懸命に仕事ばっかしてるとあっという間におばさんだよ花の命は短いよ、もっと人生を楽しみなよ、よかったらこのあと飲み会があるんだけど来ない? うん私のプライベートの友達グループだけどみんな気さくでいいやつばかりだよー。
たまにはいいかとついて行ったらその店おしゃれでカッコよくて料理もワインも最高でしたと。そしてグループの中に性格のいい男子がいましたと。顔もわりかし好みでしたと。メアド交換してなんかドキドキする人生が始まりましたと。
そんな感じの一年になるでしょう。乞うご期待。

★午未の五黄土星さん、ああ仏頂面で腕組みしたままフンッと鼻息でお返事されました。このグループはうれしいときも楽しいときも表情があまり変わりません。

2015年はどんな年でしたか? はい笹塚さんしぶしぶ口を開いた「失恋した」、仙川さん「貯金を使い果たした」、清滝さん「親兄弟ともめた」。

一般的に二黒、五黄、八白の「土性の星」は生存欲求、獲得欲求がひときわ強いパワフルな星、本能に素直で人間くさい星、経験則から真理を悟る積み重ねの星、午未ですからあからさまには出しませんが内面では「○○がほしい」「○○がしたい」「○○になりたい」などの欲望が鳴門海峡の渦潮のようにごうごうと渦巻く傾向があります。
2015年は期待に現実が追いつかずダメージが大きかったかもしれません、あせったばかりに「大事なものを失ってしまった」と心にぽっかり大きな穴が開いた人もいるでしょう。

しかし宇宙旅行中の「手放し」は、長い目で見ますと決して悲しむことではないのです。ご本人は喪失感で胸がいっぱいでしょうが、別の角度から見れば「手にしている必要がなくなったので離れていった」「存在理由がなくなったので消えていった」という自然現象であったかもしれません。
自然現象にしてはやや強制的でしたか、しかし「そうなるべきこと」が有無を言わさずストレートに起こるのがこの大宇宙、よけいな遠回りをせず起こるべきことはさっさと起こるのがこの大宇宙とお考えください。
ひとつ手放せば新しいものがその隙間にまた入ってまいります、それはもしかすると「もっといいもの」かもしれません、あまりお気落としのないように。

2016年は「変化」「刷新」「革新」の年になるでしょう。この宇宙旅行で古いものをそぎ落として身軽になられた方はフットワークよく動けますので革命は成功に向かい、未練がましく古いものにしがみついてる方は満足できない現状維持が続きます。
いずれにしても随所随所で「午五(うまご)くんこの期に及んでそのやり方をまだ続けるつもりかね」「過去の栄光にいつまでもしがみついていては進歩がありませんよ午五さん」などとたしなめられ、決断を迫られる場面がやってくるかと存じます。
「節目の年がやって来る」と覚悟のうえ、気を引き締めて臨まれますように。

・・・長くなりました、ではここでしばし休憩を挟みましょう。

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みなさまあちらをご覧ください、先ほど天体に大きな星が誕生いたしました。
管制塔からの連絡によりますとあの星の名はデヴィッドボウイ、またの名をジギースターダストと呼ぶのだそうです。
わたくしごとで恐縮ですが実は昔、地球におきましてあの方とふと目を合わせる瞬間があり、人種、性別、年齢、肩書きを超えてまっすぐこちらに向かうまなざしを受けたとき、「前衛的で型破りなスターであってもこの方はピュアでやさしく、人間としてものすごくまともな人である」と実感いたしました。
屈折する星くずの上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群れ。グラムの北辰(ほくしん)。グリッター菩薩。美しい巨星に合掌いたします。

・・・ではミーティングを再開します。各自お席にお戻りください。

★午未の六白金星さん、ああ刀折れ矢尽きていらっしゃいますね、みなさん落ち武者みたいなざんばら髪がちょっとセクシーでカッコいいです。各自あちこちに行き倒れて息も絶えだえでいらっしゃる。

では野戦病院状態の午六(うまろく)ブースからインタビューしてみましょう、春日さんいかがですか今のご気分は? 「致命的な判断ミスで何もかもパア、正直自分甘かったです」、白山さん「裏目裏目に出たので最終的にはもしかしたら表目になるかと思ったのですが結局裏目に出てしまいました」、巣鴨さん「最近肌がたるみ、シワも増えてファンデがよれるので悩んでいます。やはり天中殺はこわいですね」。うーん巣鴨さんの場合は天中殺というより加齢が原因かもしれません、日々のお手入れとマッサージが有効かと思います。

2015年は「判断ミス」「進展していた案件が凍結」「節目越え失敗」などの手痛いダメージを負った方も少なくなかったのではないでしょうか、「動かざること山のごとし」を痛感し、山間に沈むオレンジ色の夕陽をただぼんやり眺めるほかすべがなかった人もいらっしゃるでしょう。
しかし2016年、みなさんを取り巻く星の配置が変わります。どうなるか。ものごとがいきなり活発に動き始めるのですね。

「ふふふ午六(うまろく)さんあたし来ちゃった、ねえ重いからスーツケースひとつ持ってくれない、そうこれがあたしの家財道具すべて、これから面倒見てねよろしくぅ、あっネコもいるよほらこのリュックの中ううん1匹じゃなくて3匹」
いきなり来られてもとあせっても彼女は自分をすり抜けてスッと家に入ってくる、荷をほどいて勝手に洗面所に自分の歯ブラシとコップを置く、派手な色のドレスを次々にクローゼットのハンガーに掛ける、お気に入りの音楽を大音量で部屋に流す、ねえおなかすいちゃったあとあなたに微笑むのです。

ウェルカムだろうがノーサンキューだろうが「それ」は突発的にやってきます、なので今から心の準備をしておいてください。
「それ」って何かって? そうですね、「過去の妖精」とだけ申し上げておきましょう。いずれにしてもみなさんは地球に戻ってからその案件に面と向かうことになり、何らかの決意、決断、方向転換を余儀なくされることと存じます。
2016年は人生を変えるチェンジ&チャレンジの年、六白のみなさんにとって非常にやりがいのある面白い年になるでしょう。これから忙しくなりますよ、乞うご期待。

★午未の七赤金星さん、はい。ああ憂うつそうなお顔をされてますね、恋の悩み? 親友や同僚と仲違い? それとも家庭内不和でしょうか。信じていた人から嘘をつかれた、裏切られた方もいらっしゃいますね。

宇宙旅行中のもめごとはちゃんと燃える理由があって燃えているので燃えるがままに放っておくのが正解、下手に鎮火しようとすると不完全燃焼して燃えかすが残り、逆に厄介なことになります。
2015年に起きたトラブルはいわば過去の「お炊き上げ」ないし「どんど焼き」、肥大化した煩悩を焼き払うために必要不可欠なプロセスであったとお考えください。

火あたりして頭がボーッとなり、ご気分が悪くなった方はいらっしゃいませんか? そんな方のために本宇宙船の地下に冷水プールが設置されております、水がドドドと激しく流れ落ちる打たせの滝コーナーもございますので、荒行がお好みの方はそちらで水垢離もお楽しみください。

そうやって頭を冷やすうち、「頑張って無理にその関係にしがみつく必要はない」「離れていく者を追ってもまた同じことが起こる」「じたばたせず、とりあえずなりゆきに任せるのが正解」「隣近所とはお天気の話が無難」ということがわかってまいります。それを業界用語で「悟り」と申します。
宇宙船に乗って大宇宙を旅行するおかげで、乗客のみなさまには大いなる知恵がついてまいります。これはお金で買えない一生の宝ものになるでしょう、そう考えますと「天中殺」というのは実は神の慈悲であり恩寵なのではないか、そんな気がしてまいります。

2016年は火祭り後の副作用として脱力感、無気力感、寂寥感を覚えるかもしれませんが、半年もすれば自然に収まり、一件落着して静かな生活が戻ることでしょう。
「いろいろあったけどまあいいか」、そうご自分に言い聞かせながら本を読んだり映画を見たり、お昼休みにびっくりドンキーで15種類以上の野菜が摂れる「ドンキー畑」をいただきながら、心身のメンテナンスと幸せの模索にいそしんでいただきたいと存じます。

★午未の八白土星さん、あれお姿が見えませんねどこに行かれたのでしょう。ああっみなさん船外服を着て宇宙船の外を夢遊病者のように意味もなく徘徊していらっしゃる! よほどお辛いのですね、じっと座っていることもできないなんて。

こちらのグループの2015年を将棋に例えてみましょう。
先手八白で意気込んだものの序盤で魔がさし好き勝手なことをしてつまずき、ミスが挽回できないまま中盤へ突入、形勢不利で後手後手に回るうち歩兵が寝返り、あっけなく金銀飛車角をもぎ取られ、いざのとき用に取っておいた桂馬は奮闘の甲斐なく討ち死に、香車はバカのひとつ覚えで前へ前へ進むだけで役立たず、そのまま終盤で抵抗の余地なく「王手」の声がかかり、「待った」を要請するも情け容赦なく待ったなしではい詰みましたと。自分なりに頑張りましたがもうこれ以上打つ手ありませんと。
思わず将棋盤の上に泣き崩れ、力なく「知床岬」を口ずさんだ2015年でした。お疲れさまでした。

「無敵」「完全無欠」「一騎当千」の名を天下に轟かせる午未の八白さんだって負けることくらいありますよ、ええ人間ですもの、弘法も筆の誤り猿だって木から落ちるのです。

しかしそんなハードな宇宙の旅ももうすぐ終わります、地球に戻ったら過去2年間の布陣を振り返って反省し、巻き返しを図りましょう。ええこのまま終わるみなさんではありません、人生はまだまだ続く、本当に面白いのはこれからなのです。

みなさんの2016年のテーマは「一陽来復」。冬のあとには春が来る、陰が極まれば陽に転ず、地球が誕生してから一日たりとて明けない夜はありませんでした。
立春以降、背中に乗っていた巨大な漬け物石がクレーン車で取り除かれるような感覚、萎えた心と身体に筋肉が復活し全身にパワーがみなぎってくるような感覚、本命の午八(うまはち)くんにはフラれたけどもっとステキな馬八(うまや)くんからアプローチが来たぞみたいな感覚を覚えることと思います。
本調子が戻るには少し時間がかかるかと思いますが、地道に筋トレしながら戦略、戦術、戦法をじっくり練り、捲土重来(けんどちょうらい)にお備えください。

★午未の九紫火星さん、はい。こちらのグループは表情が少し明るいですね、もうすぐ地球に帰れますものね、直感的に心がはずんでいらっしゃるのでしょう。

みなさんのご心境は「芽を出したいのに地上に氷が張っていてなかなか芽が出ない、ああ早く氷が溶けないかなあ、そして温かい日ざしを全身に浴びたいなあ」ではないでしょうか。

こういうのを易で「水雷屯(すいらいちゅん)」と申します、これは四大難卦のひとつで「時いまだ至らず」という逆境の卦。何をしてものれんに腕押しの独り相撲、まるで透明な冷蔵庫に押し込められたような感覚を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしどんなに分厚く張った氷も春が来れば必ず溶けます、そのときまでじっと我慢するのだぞあせりは禁物、カップ麺だって時間を待たずにあせって食べるとおいしくないじゃんなのでございます。

日に日に天から射し込む光が強く明るくなっているのを感じていますか? そう、春の訪れはもうすぐそこ、今こうしている間もあなたの頭上に張り巡らされた氷はどんどん溶けているのです。

宇宙旅行中に得たことは何でしょう? はい木場さん「無重力の世界で走ってもちっとも前に進みませんでした、あせってもダメなもなぁダメとわかり忍耐力がつきました」、はい葛西さん「直感やひらめきも大事ですがそれを実現させるためには地道な努力が必要だと気づきました」、はい行徳さん「大宇宙は孤独ですが私はわりとナルシストなので別にこれでいいです」。
はいさまざまな意見が出ましたね、どれも正解です。ここで得た教訓を地球でも活かし、よりよい人生に役立てられますように。

2016年からは新しい人生サイクルが始まりますよ、ええあなたが20代であろうが50代であろうが年齢に関係なく、真っ白いキャンバスに好きな絵を描くことができます。

どんな絵を描きますか? 才能を活かしてたくさんの人から注目される絵、愛する人と一緒に幸せな家庭を築く絵、バリバリ仕事して世界を股にかけ活躍する絵、値札を見ずに「これ全部いただくわ」とカードを出す絵、牧場で馬や羊と仲良くひなたぼっこする夢。
今年描く絵が、あなたの未来をつくる青写真になります。「人生は自分のイメージに沿って展開する」という宇宙のルールをしっかり覚え、より幸せな人生を築かれますように。

・・・はい、長くなりましたがこんな感じです。
午未のみなさん、長旅お疲れさまでございます。あともう少しでこの大宇宙の旅も終わります。すべてのものごとには終わりがあり、やがて新しいものごとが始まります。

あ、窓の外に美しい花火のような大流星群が見えますね、まるでみなさんの前途を祝福しているかのようです。
・・・こうして無限の宇宙を眺めておりますと、何か大きな意思が働いていることを感じざるを得ません。なぜ宇宙はこんなにも美しいのでしょう? 
宇宙の意思、あるいは「創造主」と呼べる存在がもしいるとするならば、それは「あなた」に何を期待しているでしょうか?

さて、本船の地球帰還は2月3日を予定しております。余力のある方はそろそろパッキングを始め、余力のない方はそのまま脱力していてください。宇宙はすべてをおおらかに包み込み、いつもと変わらずその美しい営みを続けることでありましょう。

それでは残り少なくなりましたが、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。
午未天中殺のみなさんに幸あれ。
Good Luck、Thank You。

午未天中殺のみなさんへ その3

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 アテンションプリーズ、宇宙船午未号にご乗船のみなさん大変長らくお待たせいたしました。
 わたくし、みなさまの旅のおともを務めさせていただきますチーフCAの午・未(うま・ひつじ)でございます。
 これから第3回船内ミーティングを始めますので、各自お手を休めてロビーにお集まりください。

 ・・・・・・はい、みなさん着席されましたね。
(CA一同礼。壇上の午・未にスポットライトが当たる)
 お久しぶりです3分の2年ぶりですか、この暗黒の大宇宙を航行しておりますとついつい時間の感覚が失せてしまいますね。乗船したのがまるできのうのことのよう、時のたつのは本当に早いものです。

 それにしましてもみなさんきれいなお顔をしていらっしゃる。宇宙旅行も半ばを過ぎますと通常は「あがく」「悶える」「燃え尽きる」のどれかのパターンになるのですが、午未は一糸乱れず平常時のまま。おみごとです。さすが「孤高の人」「美意識の人」「悟りの人」と称されるだけのことはあります。

 しかし実のところ、6つの天中殺グループ(子丑、寅卯、辰巳、午未、申酉、戌亥)の中で最も繊細でナイーブとされるのがみなさん午未です。去年から今年にかけて腹立たしいことやイライラすること、もういい加減にしてくれないかな的なイベントが延々続き、ポーカーフェイスの裏で胃や腸がキリキリ痛んでいる方も少なくないのではないでしょうか。

 不平不満を滅多に口に出さないのは午未の美徳のひとつではありますが、そういうときは無理に悩みを1人で抱え込まず、信頼できる人に話を聞いてもらうのもひとつの方法かと思われます。たまっている胸の内を吐き出すだけでも気持ちが少しは軽くなりますので、ぜひお試しください。

 では、今回のミーティングでは午未と各天中殺グループの相性についてお話しいたしましょう。

★午未天中殺と子丑天中殺・・・細かいところまでよく気のつく子丑は、繊細な午未とよくウマが合います。彼らはあなたが抱えている問題の核心を一瞬にして見抜き、現実的なアドバイスを与えてくれるでしょう。苦労人の子丑は「知恵と知識の人」なのです。
 運命学では「子丑は午未の不運をスパッと止める相手」と考えます。困ったときは子丑に話を聞いてもらったりアドバイスをもらうと、なぜかスムーズに問題が解決することが多いのですね。1人ではダメなものが、子丑の力を借りるとうまくいく。
 しかし、子丑に寄りかかり過ぎてはいけません。やさしく面倒見が良さそうに見えても子丑は基本的に個人主義、自分のリズムを乱されるのをきらいます。
 もたれかかってグチばかりこぼしてると「重いッ!」とネズミのようにダッシュして逃げられる恐れがあります。
 子丑の思いやりに感謝しながら、適度な距離感を大切にするといいでしょう。

★午未天中殺と寅卯天中殺・・・「私、今とても困っているの。よかったら話を聞いてくれる?」
「あっ午未ちゃん久しぶり、うんうん聞く聞くもちろん聞く、どうしたの何があったの誰かにいじめられとるんか」
「いえそうじゃなくて・・・・・・」
「そうかお腹空いてるんかよしわかった焼き肉屋行こう、ロースにカルビにハラミにミノ、ミスジにサガリにホルモン全種、クッパビビンバつけ冷麺、仕上げはアイスと杏仁豆腐ッ!」
 あッとかえッとかとまどいながらも午未はそのまま寅卯のペースに乗せられることになりますが、寅卯の豪快な食べっぷりを見ているうちに「ま、いいか」と思えるようになり、何となく救われたような気分になるでしょう。
「親分肌の寅卯は午未の面倒を物心両面に渡りよく見てくれる」と運命学では申します、ただしその面倒の見方はわりとダイナミックなところがあるかもしれません。午未の細やかな心のひだを、大きな目の網でガバッとまるごと包み込んでくれるふところの深い相手です。

★午未天中殺と辰巳天中殺・・・午未が何を打ち明けても驚かず、冷静に問題を分析して最短距離の解決方法をアドバイスしてくれるのが辰巳です。「親知らずが痛み出して困ってるの」と相談したときに「大変ね、きのうは眠れなかったでしょう、鎮痛剤あるけど飲む?」と心配してくれるのが子丑なら、「ふうん」とつぶやいて先に立ってすたすた歩き始め、「はいここ私の叔父さんがやってる歯医者。腕は一流、予約しなくても今すぐ抜いてくれるって」と歯科医院のドアを開けてにっこり言い放ってくれるのが辰巳です。行動に無駄がありません。
 ナイーブな午未にとっては少し荒っぽく思えるかもしれませんけども辰巳は別に悪気でやっているわけではなく、問題解決への最短ルートを提示してくれているだけです。
 辰巳は「思ってもみない方法で午未を助けてくれる」「短時間でグイッと軌道修正してくれる」「午未の視野をカパッと広げてくれる」などと運命学では申します。
 彼らの雑草のようなしたたかさ、どのような環境に置かれても上へ上へ伸びていくたくましさ、ちょっとどきなさいよあんたと力強く生き抜いてくド根性は、見習うべき価値があるのではと存じます。

★午未天中殺と午未天中殺・・・似たもの同士、あうんの呼吸で意志が通じ合います。しかしこの2人が一緒にいるとどうしても現実社会のことより芸術や哲学や宇宙科学など高尚な学問のほうへと話題が流れてしまうきらいがあります。
「営業一課の午本(うまもと)くんこの出張経費精算書の合計金額18万9975円てなってるけど正しくは18万9867円じゃないのかな」「あっ経理の未野(ひつじの)さんどれどれうわっおっしゃる通り、108円多かったですねすみません」「108円・・・・・・つまり午本くんはこの経費精算におのれの煩悩を盛ったというわけね」「実は正五角形の内角も108度ってご存知ですか未野さん」「そういえばペンタゴンも警察のバッジも五角形だわ、平安時代の陰陽師・安倍晴明が魔除けの呪符として用いたのも五芒星。どうやら108には深い秘密がありそうね」。
 このように午未同士の会話には凡人がちょっと入り込めない深い味わい、幻想的な趣き、引田天功もびっくりの空中浮遊感があります。
「あんたたちさっきからずっとそういうことばかり話してるけどそれ具体的にこの職場において何のメリットがあるの」とリアリストの寅卯や辰巳や申酉からツッコミが入るかもしれませんけども、午未の思考は既存の型にはまるようなスケールの小さいものではありませんのであまり気にしなくてよろしいかと思います。

★午未天中殺と申酉天中殺・・・午未は「考える人」つまり行動より思索がまさり、申酉は「行動する人」つまり思索より行動がまさります。
 この2人が一緒になるとお互いにないものを補い合って大きな前進力が生まれます、そうですね具体的に申しますと操縦型戦闘ロボット・マジンガーZのようなものでしょうかええもちろん頭部の操縦席に乗り込んで操縦するのは午未、超合金ボディで馬鹿力もといスーパーパワーを発揮するのは申酉です。
「ストレスで食欲がないんだ」とロマンスグレーの午未課長がぼんやり夕陽を見ていると、「干し貝柱と鶏ガラでダシをとった中華がゆを給湯室でコトコト煮込み、食欲増進作用のあるパクチーを裏庭で摘んでたっぷりトッピングしてみました」といつの間にか背後でホカホカ湯気の立つお盆を持ってニコッと笑ってくれるのが申酉の部下です。
 午未の行動スキルが1とすると、申酉は15くらいの行動スキルを持っているのですね。フットワークがよくてパワフルで気のいい申酉を味方につけるととても心強いです。 
 ただし申酉の好意を「当たり前」と思ってしまうとすぐにそっぽを向かれてしまうので要注意。申酉と良好な関係を長続きさせるには言葉だけでは足りません、感謝の気持ちを「具体的な形」で表現するといいでしょう。

★午未天中殺と戌亥天中殺・・・昼休みに公園のベンチでハムきゅうサンドを食べながら「こないだ買った紫色のワンピにゴールドの取っ手のついたブルーのバッグを合わせたらきれいかなあ」とぼんやり考えるのが午未なら、「須弥山(しゅみせん)の頂上に住む帝釈天の望みは何だろう、やっぱり人間世界の平和かなあ」と想像しながらブランコに座って助六寿司を頬張るのが戌亥です。
 どちらの思考も現実世界から遠く離れておりますが、より距離があるのは戌亥のほうかもしれません。午未が「市井の悟り人」なら戌亥は「銀河系の悟り人」、「普通」からの逸脱ぶりにおいて戌亥にかなう者はいないでしょう。
 公明正大で正義感の強い戌亥は常に「人類の幸福と発展」について考えを巡らせていますから、いつでもどこでも親身に相談に乗ってくれます。
「戌亥係長、ボクお金がなくて家賃が払えなくて困ってるんです。少し貸していただけないでしょうか」
「大変ですね午未くん私もないので心配しなくていいですよ、よし、支払いを延期してくれるようこれから一緒に大家さんに頼みに行きましょう」
 そう言って静かに微笑んでくださる戌亥係長に、蚊取り線香の燃え口のようなほんのり明るい光を午未は感じることでありましょう。

 さあ、いかがでしたでしょうか。同じ人間といえど世の中には実にさまざまな方がいらっしゃることがご理解いただけましたでしょうか。
 今回はざっとお話ししましたけれども、6つの天中殺グループに9つの星を絡めたら6×9=54タイプ、それぞれに男性、女性がいるので54タイプ×2=全部で108のタイプが存在するというわけです。
 さあみなさんここでまた「108」という数字が出てきましたね、これ試験に出るかもしれませんので各自マーカー引いておいてください。

 ああもうこんな時間になってしまいました、みなさんそろそろお腹が空きませんか? あちらのダイニングルームでビュッフェの用意が調っております。
 みなさんは現世で辛い苦しいああもう勘弁してと砂を噛むような思いを日々味わっていらっしゃいますので、せめてここではおいしいものをたっぷり召し上がっていただこうとCA一同腕をふるい、真心込めてご用意いたしました。

 各種温製、各種冷製、鉄板焼き、天ぷら、窯焼きピッツァ、グラタン、パエリア、カレー、にぎり寿司、おそばにうどんにラーメンもございます。甘党の方には各種ミニケーキ、ジュレ、ソフトクリーム、あんみつ、ぜんざい、ところてん、お好きなフルーツやマシュマロを絡ませるチョコレートファウンテンもご用意いたしました。

 ・・・・・・ああみなさん黙々とおいしそうに召し上がっていらっしゃる、やはりローストビーフコーナーは長蛇の列ができますね。

 はるか遠くに青い地球が輝いております。みなさんの肉体はあちらに投影されておりますが本体はこの宇宙船の中にありますので、もどかしい、じれったい、いたたまれない思いをすることも少なくないでしょう。
 しかしそういう思いを味わうのは決して無駄なことではないのです。感情の幅と奥行きと高さが広がって他人の心情が細かく理解できるようになる、つまり人間としての経験値が上がってひとまわり大きく成長できますし、今は理解できなくても地球に帰ってからああそうだったのか、あれはあれでよかったのかもしれない、手放さなければ次に行けなかったのだなと合点がいくこともあるかもしれません。

 この宇宙旅行も残すところあと約7カ月になりました、たぶんあっという間に過ぎていくでしょう。どうぞこの貴重な機会を無駄にすることなく、心行くまで人生の旅を楽しまれますように。陰のあとには必ず陽が巡ってまいります、そのことをゆめお忘れなく。

 それでは引き続き快適な空の旅をお楽しみください。Good Luck、Thank You。
(CA一同礼)

午未天中殺のみなさんへ その2

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 大変長らくお待たせいたしました、これから第2回・宇宙船午未号内ミーティングを始めます。各自作業の手を休め、もしくはうたた寝から目を覚まし、しばらくこちらにご注目願います。
(ロビーのお立ち台に並んだキャビンアテンダント=以後CA、一同礼。)
 わたくし、チーフCAの午(うま)・未(ひつじ)でございます。
 ・・・・・・船内、シーンとしておりますね。お通夜みたいです。2012年、2013年に乗船された辰巳天中殺の方々とは大違い。「もうイヤぁーッ!」と泣き叫ぶ方も、勝手にハッチを開けて地球に帰ろうと宇宙に飛び出して回収される方もいらっしゃいません。

 乗船されてからみなさん魂が抜けたかのようにぼんやりもとい、もの静かに思索にふけっていらっしゃいますね。もしかするとご自分が天中殺に入ったことすら気づいてない方もいらっしゃるかもしれません、「あれ? ちょっと調子悪いけど気のせいかなあ」「何だか近頃やる気がないなあ」なんて(笑)。
 念のためここでもう一度ご説明申し上げておきますと、生まれ日が「午未天中殺」というグループに属するあなたがたは2014年2月4日よりこの船に乗船され、現在「天中殺」という大宇宙をゆっくり漂っておられます。地球帰還は2016年2月3日を予定しております。
 身体は地球上にあっても魂は地球からはるか遠くに離れたここにありますので、現実世界でやりたいことがやりたいようにできません。木に成った柿をおもちゃのマジックハンドでもぎとろうとするようなイライラ感、UFOキャッチャーで大きなぬいぐるみを取ろうとするときのああもうこれ全然無理じゃん的なもどかしさを感じていらっしゃるのではないでしょうか。
 無重力のこの大宇宙ではあらゆる努力が「のれんに腕押し」になりやすいのでお気をつけください、宇宙船内で読書をなさるなら「本気出せば努力は実る」系の自己啓発本より、「軽く悟ってみませんか」系の仏経本をおすすめいたします。

 ・・・・・・みなさん黙々と草を食む羊、あるいは風に吹かれて無心にたたずむ馬のようですね、聞いてるんだか聞いてないんだかさっぱりわかりません。
 子丑、寅卯、辰巳、午未、申酉、戌亥の全6グループの中で、午未さんが最も馬耳東風、馬の耳に念仏、いつどんなときもマイペースと申せましょう。聞いてるようで聞いてない、かと思えばたまにぼそっと核心を突いた鋭いことを言う。実に不思議な方々です。
 運命学では午未のことを「孤高の山から下界をながめる仙人」と申します。その大きく澄んだ瞳には、ありとあらゆるこの世の真実がくっきり映し出されていることでありましょう。ちなみに美男美女が多いのもこのグループの特徴です。ちょっとカゲがあって格好いいんですよね。

 では、九星別に点呼を取ってまいります。呼ばれた方は挙手お願いいたします。

★午未の一白水星さん、はい。
 午未グループの中でも「知恵者」と誉れ高いみなさんですが、さすがにここにきて少し疲れたお顔をなさってますね。
 2014年、みなさんは「何かと面倒な仕事を任される」というお題を与えられましたが、いかがでしたでしょうか、努力の甲斐はありましたでしょうか。
 はい神田さん、「頑張りがなかなか形にならなかった」。はい大森さん、「誰も努力を認めてくれない」。はい水道橋さん、「縁の下の力持ちを余儀なくされている」。
 そうですね、きっと多くの午未の一白がそう感じていらっしゃることと思います。お疲れさまです。
 ・・・・・・こんな歌がございます。
「これはこの世のことならず 死出(しで)の山路の裾野なる 賽の河原の物語」
 小さな子どもたちが朝から懸命に積んだ石の塔を、夜になると鬼が現れては無慈悲にこん棒でなぎ払ってしまうというせつない歌ですね。
「一重(いちじゅう)積んでは父のため 二重積んでは母のため 三十積んではふるさとの 兄弟わが身と回向(えこう)して」
 口ずさむたび、みなさんのお姿と重なってしまいます。
(2、3人のCA、そっと涙をぬぐう。)
 しかしご存じでしょうか、この歌の最後には哀れみ深いお地蔵さまがどこからともなく現れ、子どもたちを抱き上げて仏さまのもとへと連れて行ってくださるのです。
 2014年に苦労されたみなさんも、2015年には流れが少し変わってまいります。耳の穴から気力、体力をプシューッと吹き込まれ、しぼんだ身体がどんどんふくらんでくる感じってまるで自転車のタイヤみたい、ええそういう感じになると思います。
 無償の努力をこのまま編み伸ばしてろうそくの芯とし、天から降り注がれる大慈大悲のお救いを希望のともしびとしますれば、やがてあなたを中心とする半径1メートル内の世界はふわりと温かく光り輝くことでございましょう。

★午未の二黒土星さん、はい。
 午未の中でもひときわマイペースなのが二黒のみなさんです。午未と言えば「スタイリッシュ」「クール」「いぶし銀」と相場が決まっておりますが、みなさんの場合は見た目より実利、花より団子、きれいごとより実相を重んじるという特性があります。
 打たれ強く、転んでもただでは起きません。台風の日に崖から転がり落ちても「土砂降りの雨の中で」(by 和田アキ子)を歌いながら泥だらけでのっそり這い上がってくるタイプです。
 2014年は「自分をコントロールする」というお題を与えられましたが、いかがでしたでしょうか。
「ぜひ私にやらせてください自信があります、本多部長に恥はかかせません!」とタンカ切ってプレゼン行ったはいいけれど結果討ち死にだったり、「マザコンのあんたなんか大きらい!」といいとこの御曹司がせっかく玉の輿に乗せてやるちゅうとるのにあっさりふっちゃうとかですね、自分を自分で制御するのがなかなか難しかったのではないでしょうか。
 もうやめとけ、そこら辺で頭冷やしとれとみんなが言ってるのに「だいじょうぶ、まだまだやれますっ」と根拠のない自信と持ち前の負けん気がマイナスの相乗作用を引き起こして泥沼に足がはまり、どうしても抜け出せない。ちょうど今そのような感じではないかとご拝察いたします。お疲れさまです。
 2015年はぬかるみから脱け出せますよ、泥沼から水が引いて乾燥し、歩けるようになるでしょう。歩いた先でたくさんの人との出会いも用意されています。
 その出会いが吉と出るか凶と出るかはあなたしだい。「利用してやろう」とか「押しのけてやる」などと思うと再び泥沼にどぼんの刑が待っておりますので、ご注意ください。

★午未の三碧木星さん、あれ?
 お返事がありませんねあっロビーの片隅でどーんと落ち込んでいらっしゃる。
 みなさんの2014年のお題は「人間関係の荒波を乗り越える」でした。
 人という字はどう書くの、こうしてこうしてこう書くの、ね、人と人がちょうどいいバランスで寄り添って人なんです、人間関係は腹六分、仲がよくても腹七分と。
 それ以上深入りすると息が詰まってやりにくくなりますよ、後悔しても個人情報公開したあとはもう引っ込められません。
 人間関係は水もの、友達じゃ親友じゃと言うても川の流れが変化すれば自然に離れ、流れた先々でまた別の人と出会います。その繰り返しです。
 そう考えますとあんまん肉まんタワーマンにおけるママカーストや公園にたむろするボスママ四天王、何かにつけイヤミたらしい小石川係長などちっともこわくありません、川の流れが変わればその人達はフッと消えてなくなるのですから。
 ・・・・・・「人間はしょせん孤独な生きもの」と生まれながらに心得ていらっしゃる午未さんにそんなことを言っても釈迦に説法でしたでしょうか、失礼いたしました。
 あれっ三田さんどうしたのです目にいっぱい涙をためて。え? 信じていたカレに裏切られた? ああ、三角関係で負けてしまったのですね。
 くやしい、腹が立つ、絶対に許さないがうねうねうねと三つ編みになって怒髪天をついてものすごい迫力ですね三田さん、お疲れさまです。
 しかし「天中殺期間の別れは追うな」と運命学では申します。
 天中殺期間には隠れていた真実が露呈しやすくなります、相手が女つくって逃げたということは「それだけの男だった」「これ以上つきあう必要はない」「相手の女に熨斗つけてくれてやれ」ということであり、無理につきあってもまたどこかで同じことが起こります。
 ここは潔くあきらめて次のご縁を待ちましょう、でもあせりは禁物、元カレの影響が心身から脱けるにはある程度の時間がかかりますからね。それまでは自分磨きに専念して、天中殺が明けてからワンランク上の男をつかむことにいたしましょう。

★午未の四緑木星さん、あれれ。
 お姿が見えません。どこに隠れたのでしょうか・・・・・・、あっのしもちみたいにぺたんこになって椅子の下にはさまってる!
 どうしたんですだいじょうぶですか、えっ? 娑婆で押しくらまんじゅうされてペラペラになっちゃった? 
 うーん大変でしたね、しばらくそこのソファで横になっててください、ホメオスタシスが働いて時間がたてば元通りふくらんでくるでしょう。
 ええとみなさんの長所は「人の心が読めること」「繊細でナイーブなこと」「やさしくて思いやりがあること」ですが、残念ながら天中殺期間はそれが裏目に出がちです。エンパス体質※がマイナスに働き、他人のネガティブな感情がノーガードで体内に流入してしまうのです。 ※注:empathy=共感、感情移入。「エンパス体質」とは、望むと望まざるとに関わらず他人に共感、共鳴してしまう体質のこと。
 人混みに出ると疲れる人、はい手を挙げて。午未の四緑は全員挙手ですね、みなさん他人の念を受け取りやすい。他人と長時間一緒にいると肩が凝ったり頭が痛くなったり疲れたりしますでしょう。
 ね、ただでさえそうなのですから、感覚がより鋭敏になる天中殺期間真っ最中の今はどんだけきついか。世の中いい人だけとは限らない、腹黒い人、変わった人もいっぱいいます、そういうのに取り囲まれてぐいぐい邪気を押しつけられてりゃ、そりゃぺたんこにもなりますよ、お疲れさまです。
 2014年のお題は「自分をガードする術(すべ)を学ぶ」。
 お気の毒ですが私には関係ありません、ここから先は進入禁止ですよと。丹田からふわっと気を出して全身の体表外側15センチにバリヤー張りますよと。イヤな渡世だなあと。エコエコアザラクそしてザメラクと。
 ね、そうやって引き続き2015年もご自分を守る訓練に励んでまいりましょう。

★午未の五黄土星さん、はい。
「ブルージャスミン」という映画をご存じでしょうか?
 ウディ・アレンが脚本・監督を務め、ジャスミンを演じたケイト・ブランシェットがアカデミー主演女優賞を取った2013年度の作品です。セレブな女性が離婚を機に落ちぶれて、徐々に精神を病んでいく物語です。
 この映画はジャンル的に「コメディ」だそうですが、追い詰められ、現実と虚構の境界線が曖昧になっていく主演女優の姿には鬼気迫るものがあり、いっそ「ホラー」と言い換えてもいいように思えます。
「ブルー(憂うつ)なジャスミン」の最大の問題点は虚栄心と自尊心です。「セレブの座から転落した」という現実を素直に飲み込めず、無一文になってもファーストクラスに乗っちゃったりする。すでにアラフォーなのに「これから大学に通って何か勉強して手に職をつけるわ」と本気で思っちゃったりする。それが無理とわかると今度は金持ちの男と再婚するためにさまざまな嘘をつく。そうやってどんどん現実から乖離していくわけです。
 ジャスミンの気持ち何となくわかると思う方、手を挙げてください。はい午未の五黄グループはほぼ全員手が挙がりました。そう、みなさんの2014年のお題は「身の丈に合った生活をする」でしたね。
 実践できましたでしょうか? 変なプライドからいらぬ見栄を張ったり、嘘をついたり、わがままや自己顕示から「自分が、自分が」としゃしゃり出たり、心配してくれる身内を邪険に扱ったことはなかったでしょうか。
 その結果「長く伸びた鼻をへし折られる」「みんなからスルーされる」「まさかの大敗」「権力を失う」「しなくていいことをするはめになり、深く疲れる」などの報復に見舞われた方も少なくなかったのではと思います、お疲れさまでした。
 本来の星まわりならば2014年は自尊心やプライドがいいほうに作用してとんとん拍子に出世できたでしょうが、ここ宇宙ではそれらがみな逆作用を起こしてしまうのです。
 でもだいじょうぶ、2015年は心理的な緊張状態が少しゆるみ、現実を見つめるゆとりが生まれるでしょう。副交感神経が優位になれば、頭痛や肩こり、便秘なども改善されてくるかと思います。

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 はい、ここでしばらく休憩をはさみます。ご用のある方は今のうちにお済ませください。
 小腹の空いた方にはハムきゅうサンド、イカめし、干しいも、冷凍みかんなどのほか、各種温かいお飲み物もご用意がございます。ワゴンを押しておりますお近くのCAまでどうぞお気軽にお申し付けくださいませ。
 また船内は禁煙でございます、どうしても吸いたい方は船外でと申し上げたいところですが、ヘルメット内に煙が充満して大変危険ですのでおやめになったほうがよろしいかと思います。
 それにしましても、この宇宙船にお乗りいただいてから早や1年がたとうとしております。あっという間ですね。みなさん、乗り心地はいかがですか?
 はい一白の大門さん、もともと静かなのが性に合っているのでここはむしろ快適な環境、ですか。はい三碧の新馬場(しんばんば)さん、船外活動ユニット(EMU)を装着して宇宙空間を飛び回るのがスリリングで楽しい? よかったですね、でもたまに宇宙ゴミが高速で飛んできますのでご注意ください。
 宇宙ゴミが頭部や胴体を貫通してものすごいお姿になる方がまれにいらっしゃいます、時間がたてば自然に再生されますけども、お鏡を見たときにギョッとしますのでどうぞお気をつけくださいませね。
 あちらに地球が見えますね、明るく青く光り輝いております。もの言わぬ暗黒の大宇宙の片隅にあんな美しい星があるなんて、奇跡としか思えません。どうぞみなさん娑婆で身についた厄をこの大宇宙ですっきりふるい落とし、軽々とした心と身体になってふるさとへ戻られますように。
 ・・・・・・はい、お時間です。ミーティングを再開します。

★午未の六白金星さん、はい。
 ああ、情けない顔をしておられる。財布がすっからかんですね? はいその通りと。2014年、みなさんに与えられたお題は「お金の使い方を再学習する」でした。
 午未の六白は「大きく稼いで大きく使う」というダイナミックな金運をお持ちですが、天中殺期間に限っては「カンが狂う」「血迷う」「タイミングを間違える」などの凶作用により、損害を受けやすくなります。
 ギャンブルで財産を失った方、買い物依存症でカード破産しそうな方、金利のバカ高い借金で首の回らなくなった方もいらっしゃるかもしれません、お疲れさまでした。
 あのねギャンブルってそもそも儲からないようにできてるんです、儲かるのは胴元だけですよ。
 カード払いは財布から現金を出さないので喪失感が薄いですけど、えっこんなに、いったい何に使ったのオレとあとで明細見て愕然としますよ。
 借金はお金を買うこと、お金を買うための金利ってものすごく高いのご存じですか。
 じゃあどうすればいいのか。
 ①必要なぶんのお金は最初に袋に小分けして取っておき、残ったお金でやりくりする、②カードは持たず現金主義、③よけいなお金を持ち歩かない、④安易にローンを組まない、⑤住宅ローンはまめに繰り上げ返済する、⑥空腹時にスーパーへ行かない、⑦スーパーの安売りサイクルを知って底値買いをする、⑧遊びに行くとき、外食するときはクーポンを利用する、⑨ネットで安易にものを買わない、⑩流行りものの新製品に飛びつかない。
 古くさいと思われるかもしれませんが金銭感覚にアナログもデジタルもありません、以上の10ポイントをできるだけお守りくださいますように。
 人間の幸せは衣食住に支えられていますのであまり切り詰めるのもいかがなものかとは思いますが、「ちょっと待て 三日たったら買いに行け」「それ買って ホントにいいのか深呼吸」「買ったなら 返品不可です生ものは」などと心して、急降下している金運に歯止めをおかけください。
 2015年は、停滞していたものごとが動き出します。今までの不本意な状況が押し流され、新たな希望が生まれてくることでしょう。

★午未の七赤金星さん、げげっ。
 松葉杖に車いすに包帯ぐるぐる巻き、三角巾で腕吊ったりギプスをはめた首がグラグラしてる方もいらっしゃいますね、野戦病院かここは。
 はい、2014年のお題は「健康管理に気をつける」でした。
 リビングのソファでごろんと横になり、みかんでもむきながらのんびり連続ドラマを見るのが大好きな午未の七赤さんにとって、2014年は多忙をきわめるストレスフルな年でした。
 片付けねばならない仕事や家事、育児、介護などがどっと山のように押し寄せてきて、それはそれは大変だったのではと存じます。どうしてこんなことが一気に起こるの、想定外の出来事ばっかり、ああどうしてあたしだけこんな目に。
 気力体力があるうちはいいですけど、疲れが溜まってくると集中力がなくなるんですよね。仕事の企画書書いてるつもりがいつの間にかヘブライ語で悪魔召喚の呪文書いてたとか、せっせと幼稚園のスモック縫ってるつもりが出来上がってみたらポッケつきのカフェカーテンになってたとか、ときとして自分でもよく理解できない奇怪な現象に遭遇したのではないでしょうか。
 こわいのは疲れから事故を起こしちゃうことです。もうろうとして歩いてたら電柱にぶつかっちゃったとか、夢うつつで階段を駆け下りたら踏み外しちゃったとか、館林ICで降りようと思ってたのに気づいたら佐野SAで仕方ないからそこでラーメン食べちゃったとか、もう全然しゃれになりません。お疲れさまです。
 今年ケガや体調不良に見舞われた方は、まず身体を癒やすことに専念いたしましょう。健康診断をまだ受けていない方は医務室で申請してください、まだ間に合います。
 ストレスの多い環境でじっとガマンしてると免疫力が低下して病気に罹りやすくなることをご存じですか? 宇宙船の窓から地球をながめながら「自分はあそこの環境でこれからもずっと元気に生きていけるだろうか」と各自自分に問うてみてください。答えが「否」なら来年は環境を変えましょう。
 2015年は人生の模様替え大吉です。いろいろ改善策を練ってみてください。

 はい七赤の千駄木さん何でしょう、「でも天中殺期間は下手に動かないほうがいいんですよね?」。
 いいえ、そんなことは全然ありませんよご心配いりません。ご自分を守るための引っ越しや転職、離婚、通院、手術などにおいては何の差し障りもございません。
 出産も厄落としになります。ご自身の生死を賭して命を分け与えるのですから。未年生まれの赤ちゃんは気がやさしくて力持ち、親思いの孝行者。協調性があり、みんなからかわいがられるので将来はお金にも困りません。お父さんお母さん自慢の息子さんや娘さんになることでしょう。
 ただひとつ、天中殺期間に重大なイベントを決行いたしますと、平常時よりミスや手違いが多くなりがちです。慎重にことを進めるのはもちろん、ここ一番の大事な局面では、信頼できる第三者に同席してもらえば安心ですね。
 また天中殺期間に会社を辞めた場合、「再就職口が見つかりにくい」「すぐに再就職できたとしても同じトラブルが起こりやすい」と覚えておかれますように。転職、再就職はできれば天中殺明けにスタートされることをおすすめいたします。

★午未の八白土星さん、はい。
 さえない顔、不満そうな顔、不機嫌そうな顔が多ございますね。感情をめったに表に出さない午未の八白も、さすがに天中殺はこたえますか。
 みなさんの2014年のお題は「過去と折り合いをつける」でした。
 掘り起こしたくない過去、二度とお目にかかりたくない過去、できれば誰にも知られずに永久封印したい過去。ええもちろん誰でも保管してます、保管してますけど平常時は保管庫のドアにロックがかかってなかなか出てきません。
 しかし天中殺に入りますといとも簡単にロックがはずれ、最も忌み嫌う過去が時空を越えて「清算お願いします」とあなたのもとにやって来ます。
「あっ今日から中途入社の四ツ谷さん、四ツ谷さんですよねああやっぱり。私、昔おつきあいさせていただいてた下神明です覚えてますか? ふふふ鼻をちょっといじったからわからないかな。あの嵐の夜、一方的に罵詈雑言浴びせられてふられちゃったけどあれ別に私が悪かったわけじゃないですよね? ですよね。その後すぐ蒲田さんと結婚したって聞いてますけど今幸せですか? 幸せなんですねうふふふ。ええ、私ここの支店長。よろしくね」
「あっお帰り、遅かったね。うん、屋上から窓ガラス開けて侵入しちゃった。貢いで貢いで捨てられた田無です。ボク一文無しになってパパとママからさんざ叱られて勘当されちゃったの、キミのせいだよ。さっきからずうっと頭の中でヘドバとダビデの『ナオミの夢』が流れてるの、ねえ成瀬さんお金返してほしいんだけど総額1億5千万円。今さら無理? そうかあ、じゃあ今日からこのマンションに棲まわせてもらうよ、湾岸のタワマン最上階だから夜景がきれいで気分いいなあここ。 ね、おなか空いたから肉でも焼いてくれない? さっき冷蔵庫のぞいたらいいお肉入ってたよ」
 そのような感じで過去が追ってくる、ふり払ってもふり払ってもターミネーターのようにしつこく追いかけてくるわけです。お疲れさまです。
 こりゃ逃げてもダメだとそろそろお気づきの方もいらっしゃるかと思います、ね、自分でまいた種は自分で刈り取らなければいけません。午未の八白は「因果応報」という言葉を噛みしめながら、清く明るく誠実に過去の清算に励まれますように。
 2015年も引き続き眉間にシワ的な状態がしばらく続くかもしれませんが、だいじょうぶ、明けない夜はありません。相田みつを詩集「にんげんだもの」が本宇宙船の書庫にございます、ご一読されたい方はのちほどCAまでお申しつけくださいませ。

★午未の九紫火星さん、はい。
 見た目に何の変化もなくいつもと同じようにおすまししていらっしゃいますが、午未グループの中で最もダメージがきついのはもしかするとみなさんかもしれません。
 はい、みなさんに与えられた2014年のお題は「孤独とドライブ」でした。
 午未の九紫は本来一人でいるのがイヤじゃありませんし、むしろご自分独自のナイーブな世界に他人がずかずか入り込んでくるのをきらい、それがために人を退け、「人ぎらい」と称されることもあります。他の方々とは異なり、生きることにおいて独自のルールや美意識をお持ちなのです。 
 しかし一方で、とても寂しがり屋です。このグループは愛する人、大好きな人、信頼できる人がそばにいないとたちどころにしおれた花のようにぐんにゃりしてしまうという特性があります。
 人が寄ってくるとこれ以上近寄るなと邪険にするわりには甘えん坊で人懐こい面もある。いわゆる「猫みたい」とか「ツンデレ」(あるときはツンツンし、あるときはデレデレ甘えてくる。その差が極端に激しい人のこと)などというやつです。「その落差がたまらない」と萌え悶え憧れる方々が、ときにファンクラブとか崇敬会とか秘密結社などをつくるわけです。
 しかし天中殺期間に入りますと、地球上でのみなさんの存在感は非常に薄くなります。なにせ肉体は地球で魂はこの大宇宙にありますから、肉体になんとなく新鮮な生イカのような透明感が出てくるといえばわかりやすいでしょうか。
「二俣川さん、あれいないや。ご飯誘おうと思ったのに。じゃあ鴨井さん一緒に行こうよ、駅前においしそうなイタリアンできたんだ」
 二俣川さんは鶴ヶ峰くんの真後ろにいたのですが、影が薄いので気づかれなかったのですね。
 2014年、午未の九紫のみなさんは透明人間になってしまったかのような不安感、ハブられたのではないかという恐怖感、みんなが私をスルスルスルーするという絶望感に支配されていたのではないでしょうか。お疲れさまです。
 でも、その現象は一過性ですのでどうぞご安心くださいませね。  
 2015年は降り続けた雨も上がり、ところどころ晴れ間が見えて空が明るくなってくるでしょう。助手席に乗っていた「孤独」という魔物はいつしかいなくなり、かわりに「希望」という名の子猫ちゃんがちょこんと座っている、そんな感じになるかと思います。

 はい、以上でミーティングを終わります。予定時間よりだいぶ長引いてしまいました。
 何かご質問はありますか? しーん。・・・・・・みなさん相変わらずお静かですね、軽く寝息を立てている方もいらっしゃいます。

 船は順調に運航しておりますが、この先宇宙酔いなどでご気分が悪くなりましたり、不安や心配で胸がおしつぶされそうになりましたときは、どうぞご遠慮なくわたくしたちにご相談くださいませ。
 気を紛らわせるのに役立つリリアン編みのご指導、囲碁のお相手、そば打ち教室、写経会、聖書の読み聞かせなど、楽しいリラクゼーションプログラムを各種ご用意させていただいております。

 あっ申し忘れておりました、最後になりましたが船長からみなさんへ大切なメッセージを預かっております。ええと、これだ。読み上げます。
「午未のみなさん、天中殺期間だからと下を向かず、あきらめず、投げやりにならず、いつも通りあなたらしい人生を楽しんでください。そしていついかなるときも、あなたの奥にある知恵と底力を信じてください」
 とのことです。

 それではみなさん、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。またお目にかかりましょう。
 Good Luck、Thank you。
(CA一同、礼)

午未天中殺のみなさんへ その1

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 全国の午未(うまひつじ)天中殺のみなさんこんにちは。
 
 ああさすが午未天中殺の方々は乗船がお早い。みなさんおだやかなお顔をされてすでにミーティングルームに着席されていらっしゃいますね。「6つの天中殺グループの中で潔さナンバーワン」「理性の人」「市井(しせい)の悟り人(びと)」と称されるだけのことはあります。
 最後までいやだ帰るとだだをこねる辰巳天中殺、勝手にパラシュートをつけて飛び降りようとする申酉天中殺のみなさんとは違います。

 はい、ようこそ宇宙船午未号へ。
 これから2年間、みなさんにはこの船で「天中殺」という名の大宇宙の旅をお楽しみいただくことになっております。わたくしの後ろにずらりと並んでおりますのはみなさまの旅のおともを務めさせていただきますキャビンアテンダント、そしてわたくしがチーフキャビンアテンダントの午(うま)・未(ひつじ)です。どうぞよろしくお願いいたします(一同礼)。
 旅の途中でご要望やご不明点などありましたら、どうぞご遠慮なくわたくしたちにお声をおかけください。

 さて、宇宙を旅している最中はいつもと同じようにお過ごしいただいてかまいませんが、少しだけ注意事項がございます。
 ご存じのように宇宙は無重力の世界ですので、身体の自由がききません。あちらに行きたいと思ってもなかなか思い通りに進めませんし、逆に止まりたい、休みたいと思ってもいったん加速がつくとブレーキが効きません。
 また、ここは根性を出して踏ん張りたい! と強く望まれても宇宙空間には地面がないので足腰に力が入りませんし、押して押して押しまくれば道が開けるはずだ! と頑張ってものれんに腕押しとなり、深い無力感を覚えることになります。
 重力のある地球では簡単にできたこと、少し無理をすれば可能になったことが、宇宙では難しくなるということをあらかじめご了承くださいませ。
 
 みなさんのお姿は今までとまったく変わらず地球上に投影されますが、実体はこの船の中にあります。ですので家族や恋人やお仲間と一緒にいても、まるでエア牢獄に閉じ込められているかのような孤立感、あるいは世界の真ん中で不安を叫びたくなるような孤独感を覚えることがときにあるかと存じます。
 そのようなときはむりにご自分の存在感をアピールしようともがくより、ただ静かに受け身の姿勢で「なるようになるさ」とシャンソンもしくはR&Bのリズムに身をゆだね、成り行きに任せることをお勧めいたします。
 
 航行中、ときにビジネスがうまくいかなくなったり、対人面や恋愛面でストレスを感じたり、人によっては体調が不安定になってどん詰まり感を覚えることもございますが、「今までの生き方を見つめ直すいい機会」「軌道修正のチャンス」「神さまがくれた人生の作戦タイム」と割り切られ、いたずらに嘆いたり悲嘆に暮れたりなさらないようお願いいたします。
 試練が大きければ大きいほど「どこまで自分を鍛えられるか、神さまから期待されている」とお考えになってください。
 ちなみに運命学では、「12年に一度、2年間の天中殺が巡ってくるのは神さまの愛」と申します。星飛雄馬も強力なバネ製の養成ギプスをつけて天下の魔球・大リーグボールを編み出しました。

 はい、挙手されたのは午未・六白金星の山田さんですね何でしょう。
 していいことといけないことをざっと教えてください、ですね。
 的を射たいい質問ですね、さすが思慮深い午未天中殺です。
 していいことは「人にやさしく親切にする」「学んで知識や技術を身につける」「いらないものを処分する」などです。
 やらないほうがいいことは「欲や利益を優先させる」「人を押しのける」「結婚や家の新築など大きなイベントをゴリ押しする」などです。無理にイベントを決行しますと契約時にミスしたり、小さなミスが大ごとに発展したり、優子ってこんな性格だったのかと頭を抱えるなど、何かと裏目に出やすくなります。
 基本的な判断基準として「手放す」は吉、「かき込む」が凶。それをするときの目的が「自分さえよければ」の欲得でなければOKです。

 はい、ではそちらの窓ぎわの方。午未・九紫火星の藤岡さんですね。
 いつ地球に帰れますか、ですか。これもいい質問です。
 地球帰還は2016年2月3日を予定しております。ちなみに翌4日の立春から、申酉天中殺の方々がみなさんに代わってご乗船されます。

 あとは・・・・・・ありませんね。
 このようにむだなくさくさくミーティングが進行できますのは、みなさんが賢くて物わかりのいい午未天中殺だからです。いついかなるときも状況を鋭く観察され、安易に他人を頼らず、あせらず静かに流れに身を任せていらっしゃる。
 誰ですか、「その落ち着きぶり、動じなさぶりは鈍牛(どんぎゅう)ならぬ鈍馬(どんば)ですね」なんてひどいことを言うのは!
 あっ辰巳天中殺の小池さんじゃないですか!
 いけませんよ、あなたは2014年2月3日の節分で宇宙旅行が終わったんですから。早くお降りください、えっ居心地がいいからまだもうちょっと乗っていたい? ここはここで楽ちんなんだもん? ダメですよ何言ってるんですか、あなたは娑婆でやることがあるでしょう。(無理やりハッチから押し出す。)

 ふう・・・・・・。失礼いたしました、たまにこういうことがございます。
 それではみなさん、本船は間もなく離陸いたします。シートベルトを・・・・・・そうだ、大事なことをひとつ申し忘れておりました。
「午未天中殺に限り、天中殺時の災いはそれほど過酷なものにはならない」という運命学のルールがございます。
 みなさんは一家や一族や所属するグループのまとめ役として、最後まで走り抜かねばならないお役目があるからです。「午未は長い道のりを淡々と冷静に完走せねばならない責任を担っているから、天中殺期間もなるべく道を平坦にしてやろう」という天の配慮と申せましょう。大宇宙は実に奥が深いです。

 ・・・・・・窓の外ではしんしんと雪が降り積もってまいりました。旅立ちの日にふさわしい、凛とした美しい眺めです。 
 それではどなたさまもシートベルトを今一度確認され、肩の力を抜いてお気を楽になさいますように。そして、これから始まります快適な空の旅をお楽しみください。Good Luck、Thank You。

辰巳天中殺のみなさんへ その6

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 全国の辰巳天中殺のみなさんこんにちは。

 本宇宙船辰巳号も、いよいよあともう少しで地球に帰還する運びとなりました。
 みなさんには2012年2月4日からご乗船いただいておりますので、かれこれもう2年間お乗りいただいたことになります。
 時のたつのは早いもの、本当にあっという間でした。

 宇宙旅行の旅はいかがでしたでしょう、お気に召しましたでしょうか。何が起こるかわからない、まるで真っ暗闇の世界でマラソンしてるようなハラハラ・ドキドキ体験がお楽しみいただけたのでは・・・・・・、はいそちらの方、九紫火星の吉永さんですね何でしょう。
 え? 能書きはいいから一刻も早く地球に返してくれ? 1分1秒でも早く娑婆(しゃば)に戻りたい?
 うーんどうでしょう、前回ご乗船された寅卯天中殺の方たちも耐えがたきを耐え忍びがたきを忍びながら2月3日まできっちり頑張られたのですから、辰巳天中殺の方だけ特別というわけには。
 性別・人種・国籍・年齢・家柄・肩書き・逆上がりができるか否かを問わず恐ろしいまでに平等、それがこの「天中殺」という名の大宇宙の法則なのですね。
 いずれにしてもあともう少しですから、最後のひとふんばりお願いします。
 
 さあそれでは九星別に点呼を取りましょう。今回が最後のミーティングになりますので、気合いを入れていきましょう。
 ・・・・・・農民一揆の後みたいに船内のあちこちに人が倒れていますけども、意識のある方はお名前呼ばれましたら挙手お願いします。
 手を挙げる元気のない方はそのまま脱力して途方に暮れながら、もしくは誰かの名を呼び続けながら通路(みち)に倒れていてくださってかまいません。

 一白水星の方、はい。
 背中に矢が数本突き刺さってますね、今まで矢面に立たされて大変でした。自分のせいじゃないのに責任取らさたり、頼りになるはずの人がそっぽ向いちゃったり、あげくの果ては「お前が悪い」とみんなから責められたりと、孤立無援のなかでようがんばった傷は浅いぞしっかりしろ。
 天中殺明けの2月4日から少しずつ流れが変わります、今まで冷たかった人たちがいきなりこっちを振り向いて「あっ白石さん、ずいぶん長期間に渡り存在感を消していらっしゃいましたね。そういえばもうすぐお誕生日でしょう、バースデーパーティは帝国ホテルのインペリアルラウンジで行う予定ですがそちらでよろしかったでしょうか?」と笑顔で話しかけてくるかもしれません。
 ああっわりと人生悪くないじゃん、そういえば日照時間も日一日と伸びてぽかぽか温かくなってきたし、もう少しすれば桜が咲くよなあ、なんかじわじわ希望が出てきたぞみたいな気分に浸れるかと思います、山奥の温泉にのんびり浸ってサルに背中を流してもらうのもよろしいかもしれません。
 船長からメッセージを預かっております、ええとなになに、「the Oscar goes to・・・」いやこれ違った、そっちのカードだ。
「今まで先延ばしにしていた人生のお楽しみイベントが、これから束になってあなたのもとに訪れるでしょう」だそうです。どうぞお楽しみに。

 二黒土星の方、はい。
 砂糖壺から手が抜けたんですね、ずっと力入れてたんでちょっと腱鞘炎になってますけども、手が自由になってよかったじゃないですか。
 この2年間、辰巳の二黒は「執着心」という名の砂糖と戦い続けました。自分で「あきらめが悪いな」とわかってはいても、壺の中で握った砂糖をなかなか手放すことができなかった。
 しかし、手を開いてよく見てみてください、砂糖なんか一粒もついてないし、手がべたついてもいませんでしょう? はいもともと何もなかったんです、その砂糖には実体がなかった。
「そうか、自分は実体のない空気を一生懸命につかんでいたのだな」とわかっただけでも、この2年間は非常に貴重な2年間だったのではないかと思います。ちょっと難しいでしょうか。
 ええと人間の二大本能であり二大煩悩でありますところの色と金は実体がない、つまりただの「気のせい」でありますので、執着しても仕方ないちゅうことです。なめたときは甘いけれども、時間がたてば何も残りません。忘れてしまえそんなもん。
 さて、地球に帰還後の流れといたしまして、あなたの身の回りにあるものが四捨五入され、必要なものだけが手元に残るという段取りになっております。
 船長からのメッセージは「去る者は追わず、裸一貫でフレッシュな再出発をどうぞ」です。
 地球には重力がありますけれども、むしろ宇宙旅行をしていたころより身は軽く、心も晴れ晴れと、これから新しい人生がスタートするのではと思います。

 三碧木星の方、 あれいらっしゃいませんね。
 ・・・・・・あっ窓の外をクルクル回りながらものすごい勢いで飛んでいる! あのうどこへ行くんですかって聞こえるわけありませんね。仕方ないなあ、連れ戻しても連れ戻してもすぐ外に飛び出して何らかのトラブルに巻き込まれちゃうんだから。
 三碧さんって本当にじっとしてるのが苦手なんですね、でも無重力の世界に飛び出しても何もできないってこと、そろそろわかっていただけないかなあ。
 ええと2013年はやる気が空回りして気力・体力を消耗してしまった1年でした。ご本人は一生懸命頑張ってるつもりでも、第三者からは「暴風雨の中、向かい風に逆らってぬかるみの中を全力疾走してはる」「やめとき言うたんやけど聞かへんねん」とハラハラされていたことでしょう、お疲れさまでした。
 暗黒の大宇宙では判断力が麻痺しますので、できないことでも「できる!」って確信しちゃうんですよね。
 天中殺明け以降は徐々に正常な判断力と直感が戻ってくるはずです、周囲の意見やアドバイスを取り入れる心のゆとりも出てくるでしょう。
 船長からのメッセージは、と。「春以降、希望大陸への地図が手に入ります。早めに気力・体力を回復させて、壮大な冒険の旅に備えてください」とのことですって窓の外だから聞こえないか。しかたないなあ、あとでマジックハンドで回収しに行きましょう。

 四緑木星の方、はい。
 恋人から距離置かれたり配偶者からイライラさせられたり子どもが言うこと聞かなかったりママ友から罠にはめられたり舅姑が戦争仕掛けてきたり上司が行く手を邪魔したり同僚や部下がヘマこきやがるなどなかなかストレスフルな日々でした、と。顔で笑って心で泣いて、星空見上げて胸で十字を切りました、と。お疲れさまでした。
 辰巳の四緑はポーカーフェイスですから顔には出しません、出しませんけれどもハートはずたずた、ちょっとばかり傷が残るかもしれませんがそのうち治りますよ。
 え? トラウマになっちゃった? トラウマをお持ちの方はトラウマのない方より心の階層がぐっと奥深く複雑になります、つまり内的宇宙が広がります。広い宇宙と狭い宇宙、たった一度の人生でどちらがより味わい深いかと申しましたら前者です。
 そうですね、地球に着陸後はしばらく何もしたくないかもしれません、ええよろしいかと思いますそれで。重力に身体が慣れるまで無人島でのんびりジグソーパズルやプラモ製作やレース編みやビリーズブートキャンプに入隊するなど、好きなことをしてお過ごしください。
 船長からのメッセージは、と。あった、これだ。「あなたが今まで苦労したぶん、それを上回る報酬がこれから返ってきます。数値化すると概算で苦労の直径²×3.14です」ってそれ円の面積じゃないですか。
 まあいいでしょう、桜の咲くころには傷も癒え、新しい希望と目標が生まれることと思います。先は長いぞこれからだ、あせらずマイペースでいきましょう。

 五黄土星の方、はいお疲れさまでした。
 今回の宇宙旅行はものすごくきつかったのではないでしょうか。ピープル・チョイス(視聴者による選考)やコンテスタンツ・チョイス(出場者同士の選考)をもししたならば、「キング(クイーン)オブ辰巳天中殺」の栄光に輝くのはまさにあなたがたではないかと思います。
 特に昨年末から今現在にかけての修羅場ぶりはすごかったですね、普通に歩いてたらマンホールの穴に落っこちて下水管の中を猛烈な勢いで押し流され、大口開けたジョーズやワニに通せんぼされて命からがら這い上がったところがゾンビ村。ゾンビの姉ちゃん兄ちゃんに猛烈アタックされて隠れ込んだのが大竹しのぶがニコッと笑う黒い家という多彩なラインナップでした。
 しかしホラーな展開もそろそろ終わり間近です、辰巳の五黄はここで息絶えるようなやわなキャラじゃありません、全身ボロボロで真っ黒になりながらもゆっくり開いたその瞳は力強く澄んでいるというホープフルなラストシーンになるかと思います。
 エンドロールにかかる音楽はローリングストーンズの「イッツオンリーロックンロール」、もしくは小林旭の「もう一度一から出直します」になるでしょう、負けるな五黄、もうじき朝日が昇るぞ。
 船長からのメッセージは・・・・・・「新年明けましておめで」いやこれ違う、しかし最近のお年玉年賀ハガキってちっとも当たりませんね昔はそれなりに当たったのに、ええと「この2年間にあなたが体験した出来事に無駄なことは何ひとつありません、実に貴重な体験でした、どうぞ自信を持ってこれからの人生を五黄らしく傍若無人もとい力強く生きていってください」とのことです。
 地球に帰還後はへとへとにくたびれ果てていらっしゃるかと思いますが、いつまでも下向いてちゃだめですよ、カラ元気でもいいですからお天道さまに顔を向けて暮らしましょう。そのうち、細ーい蜘蛛の糸が上からするする伸びてくるはずです。

 はい、ここで少し休憩しましょうか。みなさんかなりお疲れのご様子ですからね。
 ご希望の方は視聴覚教室で「ゼロ・グラビティ」をご覧ください。これは辰巳天中殺の現在の姿をまんま描写した秀逸なドキュメンタリーフィルムです。
 たった1人で暗黒の宇宙空間を彷徨うサンドラ・ブロックをご自分の姿と重ね合わせて、彼女からサバイバル精神を学ばれるとよろしいかと思います。
 その他の方はそろそろ荷物のパッキングとお部屋のお掃除をお願いします、次に乗船が控えております午未(うまひつじ)天中殺の方々に気持ちよく過ごしていただくためにも、「立つ鳥跡を濁さず」でいきましょう。
 ・・・・・・はい、それではミーティングを再開します。船酔いのひどい方には梅茶、ショウガ湯、仁丹などをご用意しておりますので、お近くのキャビンアテンダントまでお申し付けください。

 あれ? むこうからミイラか即神仏みたいなのがぞろぞろ歩いてくる。あ、六白金星の方々ですね。たしか大宇宙に散在する八十八カ所のお遍路巡りの旅に出ていたのでした。
 ああ、みなさんだいぶアクの抜けたお顔をしていらっしゃる。よけいなものがそぎ落とされて、カツオ節にも似たすっきりした表情をなさっています。
 孤立無援のなか、きびしい長旅をよう頑張ってこられました、おーい誰かたらいにお湯汲んできて。ささ、わらじを脱いで足をこのお湯にお浸しなさいまし、じんわり温まって皮膚感覚が戻ってまいりますようわぁっ冷たい氷のよう。ああ土踏まずがガチガチで血豆がいっぱい、さぞやお辛かったことでしょうなあ(足を洗いながらもらい泣き)。
 もうすぐ故郷に帰れますよ、故郷の春はさぞや美しいのでしょうね、小鳥がさえずりつぼみが開き、お花の甘い香りがあたり一面に漂って。ああ地球っていいですね。
 仮眠ポッドでふるさとの夢を見て目覚めたら、地球に着いていますからね。あなたはやるべきことはやりました、つとめは果たしました、もうこれ以上悪くなりようがないのでどうぞご安心くださいませね。
 船長からメッセージを預かっております。「地球に戻ったらしばらく放心してください、つまり心をブラブラさせて凝りをほぐしてください。そのあと、あなたが最もやりたかったことをゆっくり始めてください。2014年はあなたを取り巻くすべての環境が、あなたの味方についてくれるでしょう」とのことです。

 七赤金星の方、はい。
 みなさんの今後のテーマは「腐れ縁を切る」です。もうすでに切れかかっている方もいらっしゃるかもしれません。
 この2年間ですったもんだした友情、恋愛、ビジネスのご縁は残念ながら頑張ってつなぎ止めてもやがて消滅する可能性が高いです、たぶん地球に戻ってしばらくすればハッと我に返ってそのことが理解できるかと思います。
 特に「考えてみれば連絡するのはいつもこっち」「2人でいるところを見られるのをいやがる」「会計はいつもこちらが支払う」「平気で嘘をつく」「たいていいつも時間に遅れる」「機嫌を損ねるとこわい」という相手の場合、無理してつきあってもこの先が思いやられますので、今のうちにすっぱりご清算なさることをおすすめします。
「ひとつ手放すと新しいものがひとつ手に入る」という法則をご存じでしょうか。物でも人間関係でも同じです、試しにクローゼットで眠っている洋服を1枚処分してみてください、じきにもっとステキな服が見つかると思います。
「ストレスフルな人間関係を背負ってよろよろ歩くくらいなら、1人のほうが身軽で気楽でいいですよ。自分らしい道を選んで歩けば、たぶんもう少し先で、もっとステキなパートナーが登場するでしょう」。船長からのメッセージです。
 春以降、いろいろな別れと出会いがやってくると思いますが、すべて自然現象です。自然の流れに逆らわず、ご自分にとって無理のない道、よりウキウキする道をご選択されますように。

 八白土星の方、はい。
 あっみなさん手とか足とか包帯ぐるぐる巻きですねどうしたんですか、はい山崎さんはカーテンはずしてるときに脚立から落っこちて足首折った、うん高橋さんはママチャリに体当たりされて尻餅ついて腰ひねった、ええ森さんはバレーの練習で突き指しちゃった、うわあ姉小路さんは大口開けて特大ハンバーガー食べてたらあごはずれちゃったんですか。痛そうだなあ早く治るといいですねお大事に。
 八白の方は心の傷というよりむしろアクシデントで身体のほうにダメージ出ちゃった方が多いかもしれませんね。
「ケガは注意を促すサイン」と運命学では申します。足首折ったのは「腰を落ち着けてよく考えましょう」というサイン、腰ひねったのは「腰を低くして謙譲の美徳を養いましょう」というサイン、突き指は「ものごとの取り組み方を変えてみましょう」というサイン、あごはずしたのは「自分の言うことに責任を持ちましょう」というサインかもしれません。サインを無視して同じことを繰り返してるとまた同じ目に遭うことがありますので、各自ご注意ください。
 船長からのメッセージは、と。これだ。「悩んだときは今までのやり方を見直して、新しい方針を採用してみてください。今までとは違うやり方、違う切り口、違う考え方で望めば、きっとうまくいくはずです」とのことです。
 2014年はどうやら脱皮の年になりそうですね。辰巳の八白は宇宙の旅を経てさらにひとまわり大きく成長できる予感がします、私たちも期待しております。八白の前途に乾杯! 

 九紫火星の方、ああっ手にあごを乗っけて視線を落として意気消沈してる。ロダンの考える人みたいで何だかカッコいいです。
 はい九紫の井野瀬さん何でしょう、えっ封印した過去にボコボコにされちゃった? ダメージがひどすぎて人生終わったも同然?
 だからあれほど忠告しましたのに、辰巳の九紫は本当に唯我独尊&直情径行なんですから。でも済んでしまったことは仕方ありません、誰だって叩けばホコリが舞いますよ、間違いのない人生なんてどこにもないです。
 大事なのは失敗を悔やむことより、これからどうするかを考えることです。だって時間は前へ前へと進んでいくんですから。「覆水盆に返らず」「後悔先に立たず」「逃した魚は大きい」などと古来申します、さあいつまでも過去を反芻しない、牛じゃないんですから。
 そうですね、地球に戻ってからもしばらくは静かな思索の時間が与えられるかと思います、ちょっぴり不安や孤独を感じることもあるかもしれませんが、この宇宙空間にいるよりはだいぶマシでしょう。
 手負いのクマいや手負いの九紫は内面世界を深く探求することによって人間性の幅が三つ折りヒダ×9個、高さが窓枠下より15センチプラスされてかなり魅力的になりますってカーテンか。
 船長からのメッセージは、・・・・・・ありません。いやそんなはずは。あった。ああよかった。「この1年は人間形成の年です。たくさん本を読み、たくさん人の話を聞き、そして自分の心を何らかの形で表現してください。きっと素晴らしい作品ができ上がります。そしてそれはあなたの生涯の大切な宝ものになるでしょう」。
 生みの苦しみが伴う重要な1年になりそうですね、でもあなたならきっとだいじょうぶです。

 以上でミーティングを終わります。
 辰巳天中殺のみなさん、お疲れさまでした。この2年間の宇宙の旅は、私たちキャビンアテンダントにとっても、非常に有意義で思い出深い旅でした。
 どんなときも笑顔を忘れない、知恵と勇気と根性のあるみなさんとご一緒できましたことを、私たちは心から光栄に思います。
 地球に帰還されましても、どうぞ本船の卒業生であることに自信と誇りを持ち、人にやさしく親切に、そしてご自分の気持ちに忠実に、力強く人生を歩んでいってください。
 重力に慣れるまでしばらくは浮遊感や不安定感を感じるかもしれませんが、長くても半年以内には治まりますので心配ありません。
 
 それでは、本船は間もなく大気圏突入の段階に入ります。多少の揺れや室温上昇を感じるかもしれませんが、すべて想定内の現象ですのでご安心ください。
 地球到着は2月3日です。どこからか豆が飛んできて宇宙船の窓にぱらぱら当たるかもしれませんが、節分の豆ですので気になさらないように。

 それではどなたさまも肩の力を抜いて気を楽になさり、あともう少しだけ、快適な空の旅をお楽しみください。そして12年後、またお会いしましょう。Thank You。 

 

辰巳天中殺のみなさんへ その5   

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 全国の辰巳天中殺のみなさんこんにちは。
 本宇宙船・辰巳号はここ1年ほど電波の届かないブラックホールを遊泳してまいりましたが、ここでようやく地球帰還の軌道上に入りましたため、記事をアップできる運びとなりました。
 2013年宇宙の旅も残すところあと3カ月(天中殺は2014年2月3日まで)、月日のたつのは本当に早いものです。
 アク出し、ウミ出し、厄落としはみなさん順調に進行されてますでしょうか。次に挙げるチェックリストで、各自確認してみてください。

◎人間関係や恋愛でもめている、もしくは関係が崩壊しつつある
◎「この広い世界に自分はたったひとりぼっち」と痛感せざるを得ない
◎仕事で致命的なミスを冒して前途が見えない
◎お金がないというのに出費が止まらない
◎憂うつと倦怠感が交互に肩にのしかかってもう何もしたくない
◎やることなすこと空回り、むしろ墓穴を掘っている
◎夕暮れの帰宅途中、理由もなく涙がこぼれ落ちる
◎不安と心配が襲ってきてぜんぜん眠れない
◎愛用していた茶碗や電化製品、アクセサリーなどが次々に壊れていく
◎いっそ死んでしまいたいと思う

 以上の項目のうちひとつでも当てはまる方は「天中殺を正しく過ごしている」、逆にひとつも当てはまらない方は「天中殺を生半可に過ごしている」と判断してよろしいかと思います。天中殺期間中はつらくてなんぼ、つらければつらいほど「浄化が進んでいる」「スキルを鍛えられている」ととらえていいでしょう。
「夜明けはきっとやってくる」「心頭滅却すれば火もまた涼し」「だけど涙が出ちゃう、だって女の子なんだもん」などとつぶやきながら、一日一日を堪え忍んでいただきたいと思います。

 では、九星別に点呼をとりましょう。船内ロビーにお集まりいただいたみなさんのお姿、まるでゾンビか貞子か落ち武者のようですねおばけ屋敷かここは。
 いえ仕方ありません、辰巳天中殺のみなさんは誰よりも生存本能が強いがゆえに、逆境を押しのけようとするパワーも人一倍強く、作用反作用が派手に出がちなのです。このあたり、静かに堪え忍びながら傷を最小限に抑える子丑天中殺とは大きく違うところです。
 では、呼ばれた方は挙手お願いします。
 
 一白水星の辰巳天中殺さーん、はーい。
「孤独絶賛体験中」と顔に書いてありますね、いいんですよそれで、人間はそもそもひとりで生まれてひとりで死んでいく、大切なのは孤独という名の冷たく澄んだ宇宙世界でどれだけ自分らしい花を開かせるかです。前後左右には誰もいなくても、斜め上360度の天空世界ではたくさんの魂があなたのことを見守っています、「がんばれ一白の辰巳!」「そのままでOKだ一白の辰巳!」とね。
 年末は人間関係に少し気を配るといいかと思います、エレベーターでベム・ベラ・ベロの3人組が「開」のボタン押してあなたが降りるのをじっと待っててくれたら「ありがとう」と言ってみる、赤ん坊少女タマミちゃんがあなたの顔をじっと見つめていたらニコッと微笑んでみる、自分が座ってる目の前に婆さんや爺さんやあずき洗いが立ったらさりげなく席を譲ってみる。するとその瞬間からあなたを取り囲む氷の檻が静かに溶け始めます。生きてる世界はたしかに孤独でも、そういったことをきっかけに冷たい孤独から温かい孤独へ移行できるのではないかと思います。

 二黒土星の辰巳天中殺さん、はい。
 そうやって壺の中で砂糖をギュッと握りしめているといつまでたっても手が抜けませんよ、不便じゃないですか? 両手が壺だと。
 ・・・・・・えっ? 手がグーのまましびれて硬直して抜けなくなっちゃった? 仕方ないなあ、じゃあ壺を割るしかないですね。え、もったいない? うーん困りましたね、砂糖はこぼれちゃうけど壺を割って手を自由にするか、手は不自由だけどそのまま砂糖を握りしめたままでいるか。どっちがベターかちょっと考えればすぐわかることなんですけど、なーんかその壺と砂糖に執着しちゃってるんだよなあ。
 天中殺期間中ににっちもさっちもいかなくなっちゃったときの身の処し方として、「とりあえず手放す」というのがあります。「大事」と思ってるものを、いったん手放してみる。恋人しかり、親友しかり、長年の宝物しかり、金銭しかり。自分にとって本当に必要なものならまた手元に戻ってきますが、そうでないならそのまま離れていきます。いいじゃないですか、身軽なほうがラクですよ。
 でも、一度手に入れたものを手放すのってなかなか勇気がいるんですよね。これができるかできないか、二黒の辰巳さんは今、天から試されているのではないかと思います。

 三碧木星の辰巳天中殺さん、あれ? いらっしゃいませんね。
 あっあそこの氷の惑星に遠征して探検してるんですか、船内の生活に退屈したんでしょうね。では望遠鏡で見てみましょう。・・・・・・ああっ三碧のみなさんったらツルツルすべる氷の上で薄っぺらい革底の靴履いて一生懸命走ろうとしていらっしゃる。いったい何がしたいんでしょうよくわかりません、こういうのを「空回り」といいます。
 何かしたい、じっとしているのはいやだという気持ちはわかります、わかりますけれどもいたずらに行動しても意味がない。尻餅ついてお尻が痛くなるだけです。
 あのう、そろそろこちらに戻って温かいおこたでみかんでもむいたらいかがでしょう、あとたった3カ月の辛抱なんですから。
 ・・・・・・船外メガホン通してるから聞こえてるはずなのにガン無視ですか、え? わが人生行動あるのみ、ですか。何となく聞こえました。そうやってマイペースを押し通す一途さ、天衣無縫さが三碧の辰巳さんの長所ですけども、天中殺のときくらいは静かにおのれの心と対話して・・・・・・あああ勢いよくすべってころんでバウンドして高速でクルクル回りながら無重力の宇宙空間に飛び出していっちゃった。マジックハンドで回収するの大変なんですよね、仕方ないなあ。

 四緑木星の辰巳天中殺さん、はい。
 全員おそろいですね。この期(ご)に及んでおだやかないいお顔をしていらっしゃるのは「協調性」「理性」「冷静」といった特性を天から与えられているからでしょうか、 「運の神さまが味方についていない天中殺期間はじたばたしてもしょうがない」といさぎよく割り切る賢さが、四緑の辰巳さんには生まれながらに備わっていらっしゃる。まさに悟りの人、荒野の賢人です。
 とはいえ四緑だって人の子だ、やっぱりこの1年はつらかった。頼りにしていた人が助けてくれない、友人と仲違いする、たちのよくない人と縁ができてしまう、ふだんなら起こりえないようなミスが発生する、まとまるはずの話がちっともまとまらない、商売がうまくいかないなど、頭を抱えることも少なくなかったのではないでしょうか。
 それって「あなたの生き方が今のままでいいかどうか、基本に立ち返ってもう一度考えてみてはどうでしょう」という天の問いかけなんですね、別に「運が悪いから」起こったわけじゃありません。
「はっ! 自分、勘違いしてたかも」「ちょっとブレてたかも」「周囲のことが見えなくなってたかも」と気づいた四緑はこの先スムーズに天中殺を抜け、明るく楽しい2014年を迎えられることと思います。たぶんだいじょうぶでしょう。

 五黄土星の辰巳天中殺さん、あれ? 姿が見えません。
 そうか、体温下げて冬眠カプセルに入っちゃったんですね。・・・・・・この1年間つらかったもんなあ、生きてるのがイヤになるくらいしんどかったんでしょうきっと。あっ眠りながらはかなげに微笑んでるいったいどんな夢を見ているんでしょうか、いいですいいですそのままそっとしておきましょう、どうせほっといても年末には目覚ましシステムが作動します、そろそろ帰還準備をしなければいけませんからね。
 年末から来年初頭にかけて五黄の辰巳さんは人生の過渡期に突入する、つまり自分を取り巻く環境に大きな変化が起こる可能性があります。もしかすると自分の能力の限界を越えた山登りに挑戦しなければならなくなるかもしれませんが、「人生に必要なプロセス」ととらえておおらかに受け止め、努力してみてください。頂上には素晴らしい桃源郷が広がっているはずですから。
「身に降りかかることはすべて必然、この世にムダなことは何ひとつない、そうなることになっている、これでいいのだ」を口ぐせにすると、少しはラクに登れるのではないかと思います。いや逃げるな、目の前に山があったら素直に登らなくちゃだめだ、五黄の名がすたる。

 ここらへんでちょっと休憩しましょうか。お近くのキャビンアテンダントにお好きな飲み物をご注文ください。干し芋、焼き芋、ふかし芋などの茶菓もご用意がございます。
 窓の外、はるか彼方に地球が青く光り輝いているのが見えますか? いったい誰が創造したのかわかりませんが、この美しい球体は何か強い意思を持ってダイナミックに活動しているように思えます。
 そのパワーの源泉は、国境を越えてあなた方全員がご存じの言葉、日本語ならひらがな2文字、漢字にすると1文字、英語ならアルファベット4文字で言い表されます。「それ」がある限り何があっても地球は回る、強く静かに回り続けるのです。「それ」の答えは・・・・・・おっと、お時間です。ミーティングを再開します。

 六白金星の辰巳天中殺さん、うーんちょっと疲れたお顔をしていらっしゃる。
 仕方ありませんね、この1年間は「がんばってもがんばってもわが暮らし楽にならざり じっと手を見る」だったのですから。正直に言いますと「労多くして実り少なし」な年でしたが、その苦労、決して無駄にはなりませんよ。なぜなら「自分のしたことは超光速で地球を1周して再び自分に戻ってくるだって地球は丸いんだもん」という絶対的な法則があるからです。
 いいことも悪いこともすべて自分に返ってきます、いいことは2、3倍くらいにふくらんでのんびり返ってきますが悪いことは10〜15倍くらいに増幅してすばやく返ってくるというところもしっかり赤マーカー引いて覚えておきましょう、これ過去5年間、超難関のトップ校で必ず出題されてる問題です。
 ですからね、あきらめない、くさらない、さじを投げない。最後まであきらめちゃダメなんです。フーテンの寅が忘れたころにある日ひょっこり「とらや」に帰ってくるように、「頑張りの果実」は特別な宅配便で必ずあなたのもとに運ばれてくる、果報は寝て待て、待てば海路の日和ありだ。
 2014年天中殺明けから少しずつ楽になりますよ、たわわに実った甘い果実は今、誰かの手でていねいに梱包されているところです。配送先はもちろんあなたの住所です。

 七赤金星の辰巳天中殺さーん、あっ! 貧乏神がぺったり背中に貼り憑いてますよ。宇宙にも貧乏神っているんですね、とりあえず祈祷して船外に出てってもらいましょう。
 ええと天中殺時に起こりがちな現象として「なくてはならないものがなくなってしまう」が筆頭に挙げられます。衣食住にこだわる七赤の辰巳さんになくてはならないものといったら、はい、お金です。
 この2年間で衝動買いや浪費癖に拍車がかかってる人、貯金が目減りしちゃってる人、財布が空になっちゃった人、少なくないと思います。しかし、そろそろここで歯止めをかけましょう。今の世の中、お金がないとつらいですよ。ここで、お金が集まってくる秘訣をいくつかご紹介しますので参考になさってみてください。
 まず、「お金は汚いもの」と思わないことです。頭と身体を使ってがんばって働けば、報酬がもらえるのは当たり前のことです。その仕事が少しでも世のため、人のために役立つのなら、きちんと報酬を得ていいのです。誰にも遠慮はいりません、どんどん稼いでください。そしてそのお金をどう使えば自分やまわりがもっと幸せになれるのか、具体的に考えてみましょう。
 次に、お金に敬意をはらうことです。お金を支払うときに「役に立ってくれてありがとう、いい旅を。次はもっとたくさんの仲間を連れてきてね」の意味を込め、「ありがとう」とひとこと口に出しましょう。店員さんも「どういたしまして」とにっこり微笑んでくれますし、一石二鳥です。
 そして、お金が入ってきたらいい財布に入れ、ていねいに扱います。いい財布はいいにおいがします。たまに嗅いでみてヘンなにおいがするようなら買い換えどきです。使わないお金は信用できる金融機関に預け入れ、そっと眠らせておきましょう。
「お金の機嫌を損ねないよう大事に扱う」「お金の気持ちを考えてお金に好かれるよう心がける」、たぶんそこら辺がキモかと思います。このくだり、天中殺じゃない人も知っといて損はないと思います。

 八白土星の辰巳天中殺さーん、うわぁっ。
 何ですか白装束にそのハチマキ、「厭離穢土(おんりえど) 欣求浄土(ごんぐじょうど)」って書いてありますね。それ徳川家康の旗印じゃないですか、あっ家康もたしか八白土星でしたね。「この世は欲得の争いで汚れてる、だから平和で清らかな極楽をめざすのだ」という意味ですか、ああみなさんよっぽどこの世の中がイヤになっちゃったんですね天中殺って恐ろしい。 
 しかし浄土っていったいどこにあるのでしょう、オーストラリアのエアーズロックでしょうかペルーのマチュピチュでしょうかハワイのラニカイビーチでしょうかスイスのユングフラウでしょうかそれとも日本の高尾山でしょうか。
 浄土を求めて三千里歩き回っても答えはなかなか見つからないと思います、だって浄土は想像の世界、つまりあなたの心の中にしかないんですから。
 え? 心の中は真っ暗闇で浄土のじょの字もない? そうですか。ではちょっと目を細めてみてください、その真っ暗闇の洞穴の奥深くのずーっと向こう、いえそっちじゃなくてもっと奥の奥、そのあたりにアルコールランプくらいのかすかな光がぼんやり見えませんか?
 あなたの浄土はたぶんその光の中にあると思います。よく見えないのはピントが合ってないからです。残り3カ月の宇宙旅行を心安らかに過ごしたいなら、その光にピントを合わせてみてください。

 九星火星の辰巳天中殺さん、ああっ懸命にシャドウボクシングしていらっしゃる。
 いったい誰と闘っていらっしゃるんでしょう、ああ過去ですか。2013年、九紫の辰巳の方々には「封印した過去が姿を現す」というプログラムがご用意されておりました。大変でしたね、自分の一番の敵は自分ですものね。
「ポルターガイスト」というホラー映画のクライマックスで、家の敷地の下から勢いよくボコボコ棺桶が飛び出してくるシーンがありました。そこはインディアンの墓地をつぶして作られた住宅街だったのですね。ちょうどああいう感じで、九紫の辰巳さんの目の前には誰にも知られたくない過去のミスや秘密がボコボコ飛び出してきたのではないでしょうか。そのたびにキャーッとかウギャーッとか叫んだり深夜の町をダッシュしたりして、まるでホラー映画の主人公になったかのような気分を味わえたのではと思います。
 助かるコツはですね、2つあります。最後まで逃げ切るつまりしらを切り通す、もしくは闘うつまり「はいその通りですが何か?」と認めて居直ることです。迎合したり中途半端な言い逃れをするのが一番よくありません。
 結論を伸ばし伸ばしにしてきたこと、どっちつかずでもめていることがあるなら、ここら辺で一気に片付けてしまってはどうでしょう、面倒ですが今のうちにケリをつけてしまえば、3カ月後に地球に戻ったときラクですよ。

 はい、以上でミーティングを終わります。
 残り3カ月気を引き締めて、この宇宙旅行を楽しく有意義に過ごしてまいりましょう。2014年2月から乗船されるのは・・・・・・・ああ午未(うまひつじ)天中殺さんですね。この方たちの通称は「市井(しせい)の悟り人(さとりびと)」「クールな必殺仕事人」、たぶんあまり手がかからないでしょう。私たちキャビンアテンダントも少し気が楽です。
 それではどなたさまも肩の力を抜いて気を楽になさり、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。すてきな旅の思い出を胸に刻まれますように。Thank You。

辰巳天中殺のみなさんへ その4

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 全国の辰巳天中殺のみなさんこんにちは。
 おげん・・・・・・あっ何ですかこの雰囲気、どよんとダーティーで邪悪な感じ、はい窓ぎわの方ちょっと窓開けてくださーい。おっといま宇宙空間を遊泳中なので窓開けられませんでしたね、失礼しました。空気清浄機の目盛りを「強」にしておきましょう。

 みなさんが天中殺に突入されてからはや10カ月近くたちましたが、いかがお過ごしでしょうか。
 耳なし芳一の琵琶の弾き語りに涙するざんばら髪の落ち武者状態の方、地べたを這い回っていらっしゃる貞子状態の方、誰も助けに来ない冬の山荘で狂った夫に追い回されるウェンディ状態の方、こわくてこわくて寝るに寝られないパラノーマル・アクティビティ状態の方、ああもう本当にいろいろいらっしゃいますねご愁傷さまです。もうそろそろ天中殺期間の折り返し地点に到達しますから、気を取り直してまいりましょうか。
 では、九星別に点呼を取りますね。

 一白水星の辰巳天中殺の方、はーい。ああかなりふらついておられますね、最終回のあしたのジョーみたい。
「うそぉ、こんなの冗談でしょう!?」とか「聞いてねーよ!」と叫んでダッシュしたくなる2012年だったと思いますが、11月はひときわお辛い1カ月ではなかったかと思います、どんなに困ってもだあれも助けてくれないんですもの。
 一白の辰巳はもともと打たれ強いです、他人なんかあてにしません、弱そうに見えて実は誰より強いしなやかな精神力の持ち主だ。でもね、2012年は辛かった。敵の謀略にはまっちゃった人、リストラで一文無しになりそうな人、あるいは干されてぼっちを堪え忍んでる人、みなさん孤立無援の台風のなかでようがんばっとる。
 なぜ耐えられるかというと、一白は「柳腰」だからです。強風にあおられると固い樹木は簡単にポキンと折れますが、しなやかな柳は折れません。
 その辺の強みを意識して活かせば、けっこうシビアな2012年末から2013年にかけても楽勝で乗り越えられるかなと思います。
 あ、旅のしおりを一白の辰巳さんたちに特別配布しておきますね。これは一白の辰巳さんだけです、ええこのグループの方たちは今後わりとシビアな試練を受けるのではないかと予想されるからです予想が外れるといいですね。
 ええとしおりの935ページにも書いてありますが、この年末の注意事項として、①心身ともに無理をしない、②腹六分〜七分でよしとする、②無駄遣いをしない、を心がけてください。それと人から100もらったら、40〜50くらいお裾分けすると厄落としになりますよ。

 二黒土星の辰巳天中殺の方、・・・・・・お返事がありません、と。いいですよ無理にお返事なさらなくても。はいわかってます、声も出せないほどお辛い状況なのでしょうたぶん。
 あなたが歩いていらっしゃるそのトンネル、真っ暗闇でまだまだ先は長いです、おそろしい妖怪もたくさん出没します。でもここだけの話、実はもうヤマ場を越えてます。あ、何となく気持ちがラクになりましたか?
 はい何度でも言いましょう。
 ようやく先が見えてきました、試練はいつか終わるもの。あともうひとふんばりですから、肩の力を抜いていきましょう。
 2013年は持ち前の「おまんごときに負けてくたばるわしじゃなか精神」を発揮して、残りの1年間を強くしたたかにそして有意義にお過ごしください。
 捨てるものがあるなら今のうちに潔く処分する、んなものにしがみついてるから苦しいんだわ。あ、粗大ゴミは宇宙空間に勝手に放り投げないでください、ご希望の方は私たちキャビンアテンダントまでお申し付けくだされば、ブラックホール行きの運搬船をご用意いたします。

 三碧木星の辰巳天中殺の方、あ、わりとお元気ですね。あなた方はもともと頭のフットワークがいい、つまりものごとに対して柔軟性があるので、あまり手がかからず助かります最初はギャアギャアわめいて少しうるさかったですけども。
 2012年末はわりと楽しく過ごせると思います、いつもの7割くらいにパワーを抑えとけばの話ですが。注意したいのは仕事と人間関係、うっかり口すべらせて秘密事項バラしたり人の悪口言ったりすると200%以上の反動に一撃必殺されますのでご注意ください。
 忘年会は「一次会まで」を強く推奨、二次会に行くとたぶんロクなことがない、ずるずるつきあってると「お金足りないからここは払っといて、いいじゃんいつもおごってるんだから」なんて言われちゃったり、好きでもない子に「今夜泊まっていいでしょ?」と迫られたりするおそれがあります。さっさと帰って心静かに年賀状でも書くっ。
 そうやっておとなしめに過ごしておけば、2013年はまずまずいいスタートが切れると思います。

 四緑木星の辰巳天中殺の方、はーい。わりとおだやかな面持ちの方ばかりですね。もともと四緑はポーカーフェイスで何があってもあまり顔に出しません、そのぶん一人になるとさめざめ泣いちゃったりするわけですけども。
 この宇宙船にさえ乗っていなければ、みなさんの2012年末はとても楽しいものになっていたと思います。未婚の人には恋愛や結婚のチャンスが訪れ、仕事をしている方は新しいご縁が広がって活躍のチャンスが増えたことでしょう。
 しかしそれらは地上にいてこそかなう夢であり、地球を遠く離れたここ暗黒の宇宙空間ではなかなか実現が難しいのです。万が一それらの夢がかなったとしても、天中殺開けには水の泡に帰す可能性が高いです。だって今あなたたち、悪夢をいや夢を見ている最中なんですもん。
 ですからここしばらくは無理に勝負したり、夢を叶えようとがんばったりしないほうが身のためですし、疲れません。結婚、転職、不動産購入、独立開業などはあせらないほうがベターです。
 2012年末はいろいろな人があなたのそばを通り過ぎていきますが、ニコッと笑ってくれる人ばかりとは限りません、世の中には何の理由もなくいきなりにらみつけてくる人もいたりします、ムッとしますし腹も立ちましょうが試練です。
 ドイツの哲学者・ニーチェはいいことを言いました、「愛せない場合はスルーせよ」。人間関係は「微笑み返し」もしくは「微笑みスルー」が基本です。宮さまのように品のある美しいスマイルを身につければ、天中殺期間中の防御力はかなりアップすると思います。

 五黄土星の辰巳天中殺の方、あっ机の下にもぐって泣いてる。うーんやっぱりきつかったか。
 はいここでみなさん黒板に注もーく。三碧は私語を慎む、八白は早弁禁止、九紫は勝手にポエム朗読しない。
 ええと天中殺時においては、「もともとのパワーのある人ほど痛い目に遭う」「天中殺前に勢いがよかった人ほど落ち込みが激しい」という絶対法則があります。ここ出るので赤かピンクのマーカー引いておく。
 五黄は「帝王」と呼ばれる星で、生まれつき人一倍大きなパワーを持っています。つまりパワフルなんですね。ものすごく大きな斧(おの)をブンブン振り回しながらジャングルを闊歩するタイプですが、ついうっかり斧がそそり立つ大岩に当たってしまったらどうなるか。身体がショックを受けてジンジンしびれ、斧は自身の重量で刃が折れてしまいますね。小さな斧ならうっかり壁に当たってもたいしたことないんですけども。
 それと同じことが、今、起こってると思ってください。五黄の辰巳はもともとフルパワーで行動しないと気が済まないタイプですし、天中殺期間に入ってからは「なーんか手応えないんだよなー」と不完全燃焼気味のあまり、さらに斧を勢いよくブン回しちゃってると思います。
 あのね、2012年末から2013年にかけては無理にがんばらないほうがいいですよ、そこに座って窓から広い宇宙を眺めたり、本を読んだり、じっくりご自分の内面を見つめられてはどうでしょう。えっ? はんかくさい? あーあ机の下から這い出て刃のこぼれた斧振り回しながら宇宙船の外に飛び出しちゃったよ仕方ないなあ。

 はい、ここで昼食をはさみましょう。各自フードコートでお好きなものをお召し上がりください。疲れた方はちょっと休憩して、一服してからまたここに戻ってきてください。・・・・・・余談ですが「江頭2:50は日本のイギー・ポップである」と思うのは私だけでしょうか。
 ・・・・・・はい、お時間です。再開します。

 六白金星の辰巳天中殺の方、はーい。さすが六白、達観したいいお顔をされていますね。このグループの方たちは深い精神性を備えているため、苦しいときほどツヤとテリが出ていい感じに熟してきます。柿か。
 そういう方たちですから、天中殺に入ってもジタバタあがきません。逆に「ふうん、これが天中殺か。なるほど、自分のこれまでの生き方を問われる期間なのだな」と悟り、どっしりかまえて反省&軌道修正にパワーを費やします。これ、まったく正しい天中殺時のパワーの使い方です。
 勝手に悩んで勝手に落ち込んで勝手に這い上がってくれますから、私も助かります。今後とも、よろしくお願いします。
 2012年末は天中殺期間といえどもそれなりに楽しい時間が持てるでしょう、ただし「人間関係はつかず離れず」「難しい恋愛には深入りしない」「金銭の貸し借りは御法度」の3つの黄金法則を守ってください。
 不倫や三角関係は自分から縁を切った者勝ち、クセのある男は最後までそのクセ治らない、のっけにもつれる恋は疲れるだけ、バカップルにつける薬なし、明るく楽しい恋は2014年節分開けまでドキドキしながら待て次号。

 七赤金星の辰巳天中殺の方、はーい。「したたかな現実主義者」といわれる辰巳天中殺の中でも、とりわけ「世渡り上手」と称されるのがあなた方です。人を見る目、相手の感情を察する頭の良さ、周囲の空気を瞬時に読み取る能力をお持ちですし、おまけに話し上手&聞き上手ときていますから、多くの人から好かれます。またパッと人目を引く華やかさもお持ちなので、異性にもよくモテます。七赤の辰巳って「殺伐とした荒野に潤いと彩りを与える美しい花」なのね。
 通常でしたら、2012年末は上から引き立てられて「えっホントに私でいいの? 夢みたい!」とほおをつねりまくる時期になったことでしょう。2013年はその流れで公私ともに喜びいっぱいのステキな年になったと思います。
 だがしかし今は孤立無援の大宇宙をふわふわ航海中の身、誰かが引き立ててくれそうで引き立ててくれません、がんばって努力しても「よくやった!」とほめてくれる人もおりません。空回り、ぬか喜び、独り相撲のブルースを孤独に歌うことになるかもしれませんが、それでも地球は回っているからだいじょうぶです。夜が明けたら朝が来る。
 あまり気落ちせんと自分を信じてひたすら宇宙旅行のおつとめを果たすしかありません、あっのちほど七赤の辰巳さんには標語入りステッカーをお配りしますので各自取りに来てください、「おひとりさま上等」「果報は寝て待て」「浪花節だよ人生は」の3つからお好きなものをお選びくださいね。

 八白土星の辰巳天中殺の方、あれ? 何でこんなに少ないんですか。えっみんな酉の市に出かけてる? あーあ地上で富かき集めてきてもここでは無用の長物なんですけどね。
 あっ帰ってきた、ほらみるみるうちにお札の粒子がバラバラ分解して空中に溶けてゆく、はい札束が消えました。ね、おわかりでしょう? ここじゃそういうのいっさい役に立たないんですよ。
 お金が欲しい、ステキな恋人が欲しい、広い家に住みたい、有名になりたい、偉くなりたい。そういった願望を抱いて人はがんばります、それはそれでもちろんいいのですが、大事なのはその夢がかなったあと何をするかです。
 ご自分の損得ばかり考えて行動しますと、先ほど目にしたように、手に入れたものがすべて空中に消えてしまいます。しかし周囲の人たちの幸せを考えて行動すれば、ああら不思議あなたの手元にはもっともっとたくさんのものが集まってくるでしょう。この宇宙法則を、この船に乗っている間にどうぞ体得していただきたいと思います。
 2012年末は・・・・・・あっ性懲りもなくまた宇宙服着て出て行こうとしてる! えっ今度は二の酉? あのうお願いですからあまり大きな熊手買ってこないでくださいね、宇宙船に熊手ってインテリアとしてどうかなと思います。

 では最後に九紫火星の辰巳天中殺の方、はーい。あなた方にはこれから船外研修を受けていただきます。いえ難しいことは何もありません、宇宙空間に設けられた大規模ジェットコースターにしばらくの間乗っていただくだけです。
「えっまた乗るの?」って、今まで乗ってたのは初心者クラス、これから乗るのは上級者クラスですから。これクリアしますと、角質除去クリームプリティをひじひざかかとに塗ったときのように、身についた人生の垢がボロボロはがれ落ちてスッキリするはずです。
 オープニングは約45度でゆっくり上昇、頂点で必要以上にためたのち奈落の底に真っ逆さま、宇宙は無限ですからどこまで落ちるのかよくわからないままじっくり急降下を楽しまれたあと、いきなり垂直急上昇してくるくるコルクスクリュー旋回したのち水平ループ&垂直ループ、そしてブラックホールに軽く突入という多彩なプログラムをご用意させていただきました。今までにない超ハイスペックな絶叫マシーンですので、どなたさまにもご満足いただけ・・・・・・ドン引きしてますか。ちょっとリラックスしましょうか、はい深呼吸。もう一回深呼吸。
 では九紫のみなさん、船外活動用スーツを身につけてこちらのコースター乗り場にお集まりください。はいさすが九紫の方たちは思い切りがよくてフットワークが軽いですね、支度が早いっ。ではこれから出発しますので、各自ヘルメットを閉じる。エアーはちゃんと出てますね。
 えっ、いつ本船に戻れるかって? ・・・・・・そうですね、たぶん2013年頭くらいでしょうか。それでは恐怖にいえ爽快感に満ちた大宇宙のアトラクションツアーに、お気をつけて行ってらっしゃい!

 では、これでミーティングを終わります。今回はちょっと長引きましたがだいじょうぶでしたか?
 どなたさまも肩の力を抜いて気を楽になさり、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。Thank You。

2012.11.11